第5話 草薙の剣、名前の由来
ミヤズ姫様と夫婦になる(合体する)約束だけをして、ヤマトタケル様は東に進んでいきました。
勿論、ここは邪神が蔓延るエリアです。そんな危険地帯に足を踏み入れたヤマトタケル様ですが大丈夫でしょうか?
『邪神A、邪神B、邪神Cが現れた! 邪神Aは毒の息を吐いた! しかし、天叢雲剣に加護により効果がなかった』
『ヤマトタケルの攻撃! 敵全体に9999999のダメージ! 敵は跡形もなく消え去った!』
流石、天叢雲剣を装備したヤマトタケル様です。元々、俺TUEEEE系の主人公なのに、そこへ日本神話最強の剣が加わったので、向かうところ敵無しです。
こうして、大和朝廷に従わない邪神や部族を次々と倒していったヤマトタケル様の東国遠征は、順調に進んでいきました。
更に東へ進軍していったヤマトタケル様は、
「この先にある沼地に、怪物が出ます。それを退治してください」
おや、ヤマトタケル様はクエストを持ちかけられましたようですね。
「よしわかった。退治してやろう」
ヤマトタケル様はクエストを了承し、沼地にむかっていきました。
もしかして沼地に現れる怪物の正体というのは、ゲリョスかもしれませんね。
怪物退治に乗り出したヤマトタケル様でした。目的地の沼地に向かって草原を進んでいます。
ずいぶん進みましたが、なかなか沼地が出てきませんね。
「あれはなんだ!?」
ヤマトタケル様が何か見つけたようです。おや、向こうの方で煙が上がっていますね。
何か燃えているのでしょうか? もしかしたら、沼地にいる怪物というのはゲリョスじゃなくて、テオテスカトルかもしれませんね。
おや、前方じゃなくて後ろからも、焦げ臭いにおいが漂ってきました……なにが起きているのでしょうか?
「まさか!」
ヤマトタケル様が来た道を振り返ると、後方からも煙が上がっています。なんと、ヤマトタケル様は野焼きに囲まれてしまったようです!
どうやら沼地に現れる怪物というのは嘘で、ヤマトタケル様を陥れる罠だったようです。
「しまった!」
歴戦の勇者、ヤマトタケル様も今回ばかりは焦りを隠せません。
逃げ場はなく、右往左往している内に火の手が迫ってきました。この窮地、どうやって脱出するのでしょうか。
『ヤマトタケル。死なないで!』
おや、どこからともなく女性の声が聞こえてきました。ヤマト姫様やミヤズ姫様のものとは違う声です。
「そうだ! あの巾着を開けてみよう!」
ヤマトタケル様の名前を呼ぶ声の導きのおかげか、“困った事があったら開けてみなさい。きっと貴方の役に立つはずだから”という、ヤマト姫様の言葉を、思い出しました。
急いで巾着を開けます。一体、何が入っているのでしょうか?
おや、火打ち石のようですね。燃え盛る炎に囲まれているのに、どうすればいいのでしょうか!?
火属性に火属性を当てても、効果はイマイチなだけです。
万事休す! もうお手上げです。
「そうか、わかったぞ!」
ヤマトタケル様は閃きました。流石、歴戦の勇者。こんな追い詰められた状況下からでも、活路を見出すのですね。
天叢雲剣を抜くと、周囲にあった草を薙ぎ払い、自分の周りから燃える草をなくしました。
これでヤマトタケル様が炎に焼かれる事はありませんが、更に火打ち石で草に火を着けたのです。
すると、向かってくる火と、こちらが着けた火が、互いに相殺しています。
みるみる内に、炎の勢いは弱まっていきました。
火打ち石から活路を見出すなんて、流石ヤマトタケル様です! 私達に凡人には到底思いつかないですね。
こうしてヤマトタケル様は草原を脱出しました。
この時、ヤマトタケル様が草を薙ぎ払った事から、天叢雲剣は草薙の剣と呼ばれるようになったのです。
罠にはめられたヤマトタケル様は激おこです。
怒りが頂点に達したヤマトタケル様は、相模の国造の所へ向かいます。
さて、ヤマトタケル様の怒りを買った相模の国造ですが、この後、彼の姿を見た者がいないのは、言うまでもありませんね。
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