閑話:異世界の諸事情・植物編①

・リュート麦

主にリュート地方で生産されている麦。地球と同じ夏の終り頃に種を撒き翌年の夏に収穫される。この世界では魔術による栽培法を用いており、土壌よりも魔術師の力量で麦の質が左右されると言われている。そのため地方の魔術師の待遇や所属数により質の差が激しく8階級もの等級付けが行われている。平民が食料として用いるのは5~6等級のものでそれ以下は飼料やエールの原料として使用されるが、貧しい村ではこの最下級で状態の悪い麦でも食料とすることもある。主に麦粥として食べることが多いが、たいてい芋や豆でかさ増しされている。実はパンを平時から食べることのできるジークの村はこの世界基準ではかなり裕福な村だと言える。



・ペパの実

森に自生する香辛料。木の実はオレンジがかった赤い色で水気が多くパンパンに膨れており、獣が不用意に噛み付くと破裂して汁を撒き散らす。この汁を浴びた動物は炎症などを起こしてしまい、目に入れば最悪失明することもある。そのため目や鼻等の粘膜に入った場合はすぐに洗い流す必要がある。収穫する際は枝ごと切り取ってよく乾燥させた後、実をすりつぶして粉末状にして使用する。家族用の鍋にひとつまみだけ入れると程よい刺激と香りがする。色が赤に近いほど熟しており辛味も強い。種の部分は非常に小さいが実以上に香り高く拳程度の大きさの袋が金貨1枚と交換されるほどに需要がある。



・アルオの木

一株で弓矢を全て作れることから弓矢の木とも呼ばれている低木。幹はしなやかで頑丈、弓の本体に使われる。枝はまっすぐに伸びるため矢柄に、葉は固く、乾燥させると矢羽として使える。皮はほぐして繊維にして撚れば弦にもなるし、そのまま袋状にして矢筒にもできる。鏃はさすがに石や金属を用いたほうが十分な威力を発揮できるが、先端を削って火で炙り炭化させればラビット程度は仕留めることができる。獲物が取れるようになるにつれて弦が動物の毛を使ったものに置き換わったり腱を使った複合弓になったりするが、弓の素材として長く愛されている。ちなみに皮肉なことにアルオの木の実はラビットの好物である。

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