すぐそこにある財政破綻問題
西暦2020年、オリンピック景気で国民がお祭り騒ぎをしている陰で日本政府の借金は1,100兆円を突破した。地方財政の赤字を含めると国民一人当たり一千万円以上の借金を背負わされていた。民間企業であればとっくに倒産している金額だった。
西暦2021年、オリンピックを終えて景気は急速に失速した。経済成長率は大きくマイナスに転じ、海外メディアは日本政府の破綻予測を連日報道した。責任を取る形で衆議院は解散し、即座に選挙が実施された。
無名の存在とも言えたAI党なるものが突如して現れ、主婦や学生にタブレットを配布して立候補者に仕立て上げた。立候補者たちは駅前に立ちAIが打ち出した政策を演説して回った。
『我々、AI党は東欧の小国エストニアに習い、政府が管理する電子決済システムを導入することで現金を廃止します。即時決済による消費税の直接徴収をおこないます。企業会計の不正を正し、法人税や所得税など全ての税金を直接徴収できるのです』
「おいおい、そんなことしたら国税庁も税務署も、税理士事務所も公認会計士事務所も不要になるだろ!いったいどれくらいの失業者がうまれることか」
『いい質問です。我々の調査では国税庁で約6万人。全国の税務署に至っては、な、なんとデータがございません。政府は税金を集めるためにいったい、どれくらいの税金を使っているのでしようか。税理士は約8万人、公認会計士は1万人強。これだけの優秀な人材が新たな仕事につき、日本経済を復興させる起爆剤となるのです』
「いいぞ!いいぞ!あんな生意気な人種、全員首だ!」
『ここに一つのデータがあります。JW東日本は自動改札導入前、キセルにより年間、なんと約300億円もの損失を負っていたのです。現在、摘発された日本の脱税総額はたったの約170億円となっておりますが、本当にこんなに少ないのでしょうか。そんなはずがありません』
「そうだ!そうだ!うまい汁をすっている金持ちから税金をふんだくれ」
古い政策しか唱えられない政府与党は大幅に議席を失い、AI党は大躍進。議席の七割を獲得するに至った。
その頃、赤坂の料亭に旧政府与党の幹部たちが集っていた。
「まったくもってうまくいったものだ。これで海外メディアも黙るだろう」
「生意気な役人どもに一泡吹かせてやったわ」
「ところでAI党の党首。あれは本当にだいじょうぶなのか?」
「もちろんですとも。整形手術をした元首相ですから」
「おお、そうだった。うまい具合に化けたものだ。組閣前に我々も化けんといかんな」
おしまい。
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