第13話 形勢大逆転
「駅についたね。あのまま、お友達とワイワイするのかなって思ったけど。違ったね。健太(けんた)と二人。うふっ。健太が手を引いて走ってくれた!」
月野姫(つきの ひめ)の額に、前髪が汗で貼り付いている。かわいい。小さな肩を上下させながら呼吸をする姿。ハートを奪われそうだ。信じられない。ちょっと首を傾げて、ほほ笑む超絶美少女。どんなアイドルだってかすんでしまうぞー。
右手に彼女の小さくて温かい手の感覚が残っている。俺、今日は絶対に手ー洗わんから。アイドルの握手会なんかで満足しているやつ。羨ましいだろ!へっへっへ。
「俺はやるときゃやる男だ」
本当はやればやれるのを、今、知った。俺の心は強く成長したのだ。
「健太!」
「んっ。なに」
「カッコイイよ!」
うっほー。聞いたかみんな。って聞かせてたまるか!俺、カッコイイって。初めて聞いた。もっと言ってー。
「やっと追いついた。姫ちゃんって足が速いんだね!驚いたよ」
おい。山下陽(やました よう)!俺のこともほめろ。きやすく「姫ちゃん」なんて呼ぶんじゃねえ。殺すぞ。月野様と呼びなさい。
「ごめんなさい。あんまり楽しかったからつい。三美さんは?」
石田三美(いしだ みつみ)が顔を真っ赤にして走ってくる。
「ぼけ健太。よくも置いてけぼりにしたな!健太のくせに生意気よ」
「良かった。間に合ったか。じゃあ行こうか。あっこれ。自衛隊から預かった『クレジットカード付スイカ』渡しとくよ」
山下陽!さすが女ったらし。細かいところに気が回る。俺は山下陽の手からカードを奪い取ると、ハンカチで拭いてから月野姫に差し出した。これは彼氏である俺の役目だ。
「どうぞ。姫」
「ありがとう。健太に、えっと、山下君」
ぎゃははははー。「えっと、山下君」だってよ。覚えてないってよー。イケメンが台無しだなー。へへ。
「姫のためにありがとうございます。えっと、陽君」
ふん。人の恋路を邪魔したバツだ。
「・・・。どういたしまして」
どうした山下陽!声にいつものはりがないぞ。ショックだよな。ひひ。
「それでは行きましょうか。君たち」
四人は改札を抜けて駅のホームへと向かった。先頭は俺と姫、後ろが陽と三美。形勢大逆転だっつうの!
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