15.
「あーーーー」
声にならない声を出しながら、両手で顔を覆っていると、鍵を閉め忘れていたドアが開く音がして。
まずい、と思ったけど遅くて。
開いたドアの向こうを見上げると、柊が立っていた。
「さっきの何?」
「あ、さっきのは忘れて。ごめん…」
そう言って立ち上がり、ドアを閉めようとしたけど柊に止められる。
「そんなのムリなんだけど」
「だからアレだよ、不可抗力って言うかさ…」
どう言い訳しようか考えても上手く言葉が出てこない。
いっそ、告白して潔くフラれてしまおうか…。
「海莉ってさ、好きでもない奴にキスするの?」
柊のその一言に耳を疑った。
「は?そんなことするはずないでしょ!?
柊だからだよ!
柊以外にこんなことしないよ!」
そこまで言って、しまったと思った。
柊はキョトンとした顔をしたかと思うと、次第に不敵な笑みに変わった。
「へー、海莉って俺にしかキスしないんだ、へー」
柊はそう言いながら玄関に入ってきて、ガチャンと扉が閉まる音がした。
くそぅ…。
完全に楽しんでいる。
「俺のことどう思ってんの?」
「どどど、どうも思ってないよ!?」
「どうも思ってないのにキスするの?」
「それは…」
「それは?」
どうしよう、逃げられない。
「柊のことが…」
「俺のことが?」
「好き…だからです…」
ついに言ってしまった。
体中の血液が一気に顔に集中するのが分かる。
「ふーん?」
柊は、私の一世一代の告白に満面の笑みを浮かべながら、何とも気の抜けた返事をした。
柊にとっては私の気持ちなんてどうでもいいこと、だよね…。
もうそれ以上ショックを受けたくなくって、私の自己防衛反応が働く。
「あ、でも知ってるから!
柊は私のこと何とも思ってない事!」
「え?」
「だからいいの、もう諦めるから。だからホント気にしないで!?」
必死にそう誤魔化して煙に巻こうとしたけど、
「は?もうムリだよ」
柊はそう言ってふわっと近づいてきたかと思うと、私を両手でギュッと抱きしめた。
…抱きしめた!?
「え?!何!?」
柊の甘い香りが私の身体を包み込む。
え!?は?ええええ!?
「ちょっ、おとなしくして」
どどどどどうしたの?!
「あの…柊さん、どうしたのかな…?」
さっきから柊の行動に動揺してばかりだ。
「諦めなくていいよ」
「え?なに?」
気が動転していて、柊の言葉が上手く聞き取れない。
「俺のこと、そのままずっと好きでいろよ」
"好きでいろよ"って
え?
…好きでいていいの?
なんで?
分かんない、分かんない。
何この状況。
「好きでいろって、どういう意味?」
そう聞くと柊はスッと私から離れて、眉間にしわを寄せた。
「お前さ、ここまで言ったら分かんだろ、普通」
「わ、分かんないよ!
ちゃんと言ってくれなきゃ分かんない!」
「海莉の脳みそどうなってんの?」
「脳みそ関係ある!?」
「大ありだよ。
そのスッカスカの頭でよーく考えろよな」
柊はじゃあな、と私の髪の毛をクシャっとして私の家から出て行ってしまった。
「なにそれ…」
柊のこと好きでいていいの?
柊は私のこと好きでもなんでもないのに?
全然意味分かんないよー!!
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