14.




駅について、坂城くんと別れた。



「坂城くんか…」



本当に優しいしかっこいいし、私のこと思ってくれてるし。



なのに、なんでいつも柊が私の頭の中を占領してるんだろう。





「坂城がどうしたって?」



急に後ろから声が聞こえて、振り返ると柊が立っていた。






「何でもないよ」



「ふーん」



それから柊も私も、言葉を交わすことはなくて。



電車がきたからそのまま車両に乗った。



柊は黙って私の横に座ったから、少し驚いた。



いつもだったら、くだらない話で盛り上がるのに、今日はずっと沈黙が続く。



すごく気まずい…。



きっと柊は、坂城くんとしゃべるなって言ったのに、私があえてそう見せたから、きっとすこぶる機嫌が悪いよね。



何やってんだろう私。



こんな事しても何の意味もないのにな。







駅について電車を降りても無言のまま、私の少し前を柊が歩いている。



私の家の前で柊は足を止めて振り返った。



「あのさ」



「…何?」



今日はもう柊と喋ることはないと思っていたから、少し身構える。





「どう言うつもりなの?」



「どう言うつもりって…」



「坂城だよ、何で坂城なんだよ…」





柊が何を言いたいのかよく分からない。



ただ、私が坂城くんと帰るって言ったことを怒ってるんだと思った。







「柊が私に意地悪してくるからだよ」



「なんだよそれ」



柊はそう言って私に一歩ずつ近づいてくる。



私は思わず後ずさりした。





「ムカつく」



っ…。



「ムカつくって何…?

私が坂城くんと帰ったから?

ねー、なんでそんなに坂城くんに突っかかるの?」



「あー、坂城坂城うるさいんだよ。ちょっと黙って」



「話を振ったのは柊でしょ?

坂城くんさ、本当に優しんだよ。

今日も一緒に帰る時さ…「ねー、黙って」



柊の声が私の声を遮ったかと思うと、一気に距離を詰められ、超至近距離に柊の顔。



だけど私も喋る口を止められない。



「坂城くん、超優しいし、イケメンだし?

私、坂城くんと付き…「だから黙れよ」





柊がそう言ったかと思うと、私の喋る口を柊の唇が塞いだ。





…。



え?



なにこれ。



ええええ!?!?



ちょっと待って?!



一瞬の出来事に頭がついていかない。






どう考えても今の状況がのみ込めなくて、柊の腕をギュッと掴むとゆっくりと私から離れた。



「黙らない海莉が悪い」





柊はすごく苦しそうな顔をしていた。



なんで…?





「だからってキスする、普通?!」



「あーもー、うっせーなー」



うるさい?



何なの?



マジであり得ない。



私がいつもどんな気持ちで、どれだけ柊のこと考えてると思ってんの。






「柊はキスぐらい何でもないのかもしれないけど。

私にとってはすごくすごく大事なこで…」



「は?」





一瞬、驚いた顔を見せた柊。



そんな柊に近づいて、今度は私から触れるだけのキスをした。





「柊のバカ」



私は自分のやってしまった行動に気が付いて、柊から逃げるようにして自分の家に入った。





…やっちゃった。



最悪だ。





家の中はシーンと静まり返っている。



今日はお母さん夜勤だった。



誰もいないと気づくと急に力が抜けて、家の玄関にしゃがみ込む。





自分からキスしちゃうとか本当にありえないよね!?



もう好きって言っちゃってるみたいなもんだよね?!



うわ…。



柊に見せる顔がない…。






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