12.ちょっと黙れよ。




次の日、いつもより早い時間に家を出た。



早い時間だから柊は私の家に来ているはずがないのに、いないことを確認すると自然とため息が出る。



学校につくと坂城くんはもう来ていて、ゴミ袋をもって一緒に学校の周りを歩く。



意外とごみってたくさん落ちてるんだなーなんて思いながら、ごみを拾っていると坂城くんが口を開いた。





「ねー、黒川の何がいいの?」



また柊の話か…。



付き合ってないんだけどな。



罪悪感、感じるな…。



本当のこと言ってしまいたい。



「えっと、答えなきゃいけないかな?」



「イヤならいいよ。でもなんで黒川なんだろうって」





確かに、なんでこんなにも柊が好きなんだろう。



気づいた時にはもう好きになっていて。



ただ一緒にいるとドキドキして。



いつも柊のこと考えてしまうんだ。






「僕だったら海莉ちゃんを泣かせたりしないのになって、昨日ずっと考えた」




坂城くんの一言にドキッとした。



もしかして、昨日泣いてたの見られてた…?



廊下に出た時にぶつかったのって、坂城くんだったのかな。



だとしたら恥ずかしすぎる。





「あんな奴やめて僕にしなよ」



そう言う坂城くんは、すごく真剣な目をしていて。



この人だったら私も幸せになれるのかな、なんて少し思った。





「坂城くんありがとう。

そう言ってもらえて、すごく嬉しい」



私がそう言うと坂城くんは目を丸くして、



「え、あ、うん…」



と何故か動揺しているように見えた。



「どうしたの?」って聞くと、



「海莉ちゃん、今可愛かった」


と腕で顔を隠しながら言った。



え、なにその反応…。



照れちゃうじゃん…。







お昼休みになって私と美結は屋上でご飯を食べていた。



「私、坂城くんと付き合おうかな」



「ぶー!え!?どうした、いきなり」



美結にとってはすごく急な話だったみたいで飲んでいたジュースをこぼしそうになっていた。



「だって、坂城くん優しいし、私のこと気になってくれてるみたいだし」



「え?!何それ!初耳なんだけど!」



「私だって昨日初めて知ったよ」



「何がどうなってんの!?詳しく話して」



美結は前のめりになって私に耳を傾けた。





そんな美結に昨日と今日の出来事を話すと、


「坂城くん、やるね」


と美結は珍しく男子を褒めた。



「いいじゃん?坂城くん!柊なんかよりよっぽどいいよ」



私もそう思う。



「でも海莉はそれでいいの?」



…。



「ねー、どうなんだろう」



「他人事みたいに言わないでよ」



「もう自分の気持ちが分からない」



柊のこと今でもずっと、好きな気持ちは変わらない。



でも最近辛いんだ。



ずっとこのままの関係でいることが辛い…。





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