12.ちょっと黙れよ。
次の日、いつもより早い時間に家を出た。
早い時間だから柊は私の家に来ているはずがないのに、いないことを確認すると自然とため息が出る。
学校につくと坂城くんはもう来ていて、ゴミ袋をもって一緒に学校の周りを歩く。
意外とごみってたくさん落ちてるんだなーなんて思いながら、ごみを拾っていると坂城くんが口を開いた。
「ねー、黒川の何がいいの?」
また柊の話か…。
付き合ってないんだけどな。
罪悪感、感じるな…。
本当のこと言ってしまいたい。
「えっと、答えなきゃいけないかな?」
「イヤならいいよ。でもなんで黒川なんだろうって」
確かに、なんでこんなにも柊が好きなんだろう。
気づいた時にはもう好きになっていて。
ただ一緒にいるとドキドキして。
いつも柊のこと考えてしまうんだ。
「僕だったら海莉ちゃんを泣かせたりしないのになって、昨日ずっと考えた」
坂城くんの一言にドキッとした。
もしかして、昨日泣いてたの見られてた…?
廊下に出た時にぶつかったのって、坂城くんだったのかな。
だとしたら恥ずかしすぎる。
「あんな奴やめて僕にしなよ」
そう言う坂城くんは、すごく真剣な目をしていて。
この人だったら私も幸せになれるのかな、なんて少し思った。
「坂城くんありがとう。
そう言ってもらえて、すごく嬉しい」
私がそう言うと坂城くんは目を丸くして、
「え、あ、うん…」
と何故か動揺しているように見えた。
「どうしたの?」って聞くと、
「海莉ちゃん、今可愛かった」
と腕で顔を隠しながら言った。
え、なにその反応…。
照れちゃうじゃん…。
*
お昼休みになって私と美結は屋上でご飯を食べていた。
「私、坂城くんと付き合おうかな」
「ぶー!え!?どうした、いきなり」
美結にとってはすごく急な話だったみたいで飲んでいたジュースをこぼしそうになっていた。
「だって、坂城くん優しいし、私のこと気になってくれてるみたいだし」
「え?!何それ!初耳なんだけど!」
「私だって昨日初めて知ったよ」
「何がどうなってんの!?詳しく話して」
美結は前のめりになって私に耳を傾けた。
そんな美結に昨日と今日の出来事を話すと、
「坂城くん、やるね」
と美結は珍しく男子を褒めた。
「いいじゃん?坂城くん!柊なんかよりよっぽどいいよ」
私もそう思う。
「でも海莉はそれでいいの?」
…。
「ねー、どうなんだろう」
「他人事みたいに言わないでよ」
「もう自分の気持ちが分からない」
柊のこと今でもずっと、好きな気持ちは変わらない。
でも最近辛いんだ。
ずっとこのままの関係でいることが辛い…。
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