11.
だけどその間は何も起こらなくて、疑問に思って少しずつ目を開けると、
「なーんちゃって。本気にした?」
柊はそう言って、私を開放してベッドから降りた。
ねえ。
今のなんだったの!?
「大丈夫だよ、海莉なんか襲ったりしない」
…そんなこと、
「言われなくても、分かってるよ」
私は女として見れらていなこと、ちゃんと分かってる。
ドキドキした自分がホントばかみたい…。
*
あれは中学の時だった。
柊が他の男子生徒を話しているのをうっかり聞いてしまった。
***
「柊って海莉ちゃんと仲いいよな?」
「仲いいって言うか腐れ縁?
ただの幼なじみだよ」
「えー!そんな風に見えないけど?
本当は好きなんじゃないの~?」
ある日の放課後、忘れ物を取りに戻る途中で、柊と柊の友達の声が教室から聞こえてきた。
聞いちゃいけないと思ったけど、私はその答えが気になって、教室に入らずそのまま聞き耳を立てた。
「は?あんな奴、女だなんて思ったことねーよ」
なんだ。
そっか。
そうだよね。
「女じゃないから普通に喋れるっつーか。
俺にとっては男友達みたいなもんだよ」
「うわーひっでー!
それ聞いたら海莉ちゃん泣くぞ?」
「ばーか。海莉だって俺のこと何とも思ってないよ」
***
その時はそれ以上聞くのが怖くて、忘れ物なんてそっちのけで、その場を立ち去った。
あの時私は、柊の言葉がショックで。
何度も諦めようって思ったのに。
それができなかった。
柊への想いは、ずっと消えずに胸の中に残ってる。
*
「もう帰って」
柊の顔なんて見たくもない。
「はいはい、悪かったって、そんな怒んなよ?」
そんな私の気持ちとは裏腹に、柊はまた私に近づいてくる。
「怒ってないから」
もうそれ以上近づかないで。
「じゃあ何?本当に襲ってほしかった?」
その言葉に耳を疑った。
「ふざけないで」
私は精一杯柊を睨みつけているのに。
柊はびくともしない感じで。
「明日の朝も、迎えに来るから」
って、柊は本当に何考えてんの?
「明日は一緒に行けない」
私がそう返事をすると、
「なんで?」
柊が一気に不機嫌になったのが分かった。
柊は自分の誘いを断られるのが単純に嫌なだけなんだ。
「委員会で早く行かなきゃ行けないから」
一応ちゃんとした理由を言うと、
「それって坂城も一緒?」
ってまた坂城くんが出てきた。
「そうだけど」
「はぁ、オレが何のために…」
「何のために?」
言葉の続きを聞きたかったのに、柊は続きを教えてくれなくて。
「なんでもねーよ、じゃあな」
結局最後の最後まで素っ気ない柊。
そんな柊が部屋から出ていく姿を、ぼんやりと眺めることしかできない私。
ねえ、なんで坂城くんと喋っちゃいけないの?
なんでそんな悲しそうな顔してたの?
どうしたら私を女として見てくれるの?
ねえ柊。
柊が何考えてるか、私には全然分かんないよ。
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