10.




部屋に入ると柊は私のベットの上で、寝そべりながら漫画を読んでいた。



仮にも女子高生の部屋に勝手に入って、ベッドでくつろいでるのってどうなの?





「ねー、私の部屋で勝手に何してんの?」



「帰ってくんの、おせーよ」





私の言葉なんて聞く耳ないみたいな柊の言葉に、やっぱり少しイライラする。





「委員会だったんだから仕方ないでしょ?」



私は少しムッとしながらカバンを机に置いた。



「委員会ねー」



柊はそう言いながら読んでいる漫画を閉じた。





あれ、さっきまで私たちケンカしてたよね?



なんか普通に会話できちゃってる。





「それより何でここにいるわけ?」



柊がさっきの私の質問に答えてくれないから、もう一度聞いてみる。



「彼氏が彼女の家に来て何か問題でも?」





ほら、またそんなこと言う。



「それはだって、違うじゃん…」





少しは私の気持ちも考えてほしい。



なんて、柊には無理か。





気まずい沈黙が続く中で、


「海莉が心配だったから」



柊は唐突もなくそう言って。





「心配?」



何に心配したのか全然分からない。



いつも言葉が足りないよ。





柊はベッドから立ち上がると、私に近づいてきて。



無言でつめ寄ってくる感じに圧迫される。



私が1歩後ずさりをしそうになった時、柊は私の肩に頭を置いた。





え、なになに?





近い…。



柊のシャンプーのいい香りが鼻をかすめたかと思うと、



「さっきはごめん。

あんなこと言うつもりなかったんだ」



素直にごめんと言う柊にちょっとだけ戸惑う。



柊から謝ってくれたのは初めてで。





また。



調子が狂う。





「うんん、いいよ。

私も言い過ぎた。ごめんね」



私がそう言うと、柊はそっと顔を上げた。



そんな柊と目が合って。



近すぎるその距離にドキドキする。



また、「だよな、お前のせいだよ」とか言って開き直るのかなって思ってたのに。







「あんまり坂城と喋んないで」





思っても見ない言葉が飛び込んできた。





坂城くん?



「何で?」



「何ででもいいだろ」



「いや、なんで坂城くんが出てくるの?」



突然の坂城くん登場に疑問が膨らむばかり。





「…ムカつくんだよ」



「は?え?なんで坂城くんと喋ると柊はムカつくの?」



それじゃ、まるで…。





「や、ヤキモチ妬いてる…?」



恐る恐る思っていることを口にして、


「は?俺がお前なんかに妬くはずないだろ」



すぐに後悔した。



そうだった。



柊は私のこと何とも思っていない。



ヤキモチなんて妬くはずないじゃんか…。







「じゃあ何で、坂城くんと喋っちゃいけないの?」



ヤキモチじゃないなら、

私にも分かるようにちゃんと説明してほしい。





「あーもー!うっせーな」



柊はそう言ったかと思うと、身体がふわっと浮き上がって、気づけばベッドの上。



柊が私の上に馬乗りする形になった。





「ちょっと何?!」



急な展開に思考が全然ついて行けない。





「黙らないと襲うよ?」





はあ?!



「冗談やめてよ」



私が一生懸命抵抗しても、両腕をギュッと握られてて身動きが取れない。





「冗談じゃねーけど」





柊はそう言いながらどんどん私に近づいてくる。





もうキスできちゃうんじゃないかって距離で、自分の心臓の音がうるさい。



この心臓の音が柊に伝わってほしくなくて。



柊は、なんで何とも思っていない私にこんな事してるんだろうって。



もう訳がわからなくて、私は目をギュッと閉じた。




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