第39話 因果応報と失ったもの
『新島は不倫してるんだよ。それをオレが見てたけど黙っている代わりに協力してもらっていたんだよ。』
『それで一体何をさせていたんだ?』
『気に入った女子の住所や周りの状況を教えてもらったり、あとは噂を流すのも協力させたよ。』
『聞いた情報を使って女の子を手篭めにしていたと。』
『そうだよ。と言っても基本は噂を流したりイジメを扇動して弱ったところにってやつ。嫌がるやつもいたからそいつらはレイプしたよ。それを材料にまた他のやつを脅すのに使うんだ。』
確かに効率的かもしれないな。弱った所に優しい人間が来てイジメをやめさせる。そうすると弱っていた側はこの歳ならば依存もしやすいだろう。1種の洗脳だ。
『ろくな人間じゃないな。聞いた限りでもお前は少年院行きだよ。それと脅された人達には慰謝料請求をするようにも伝えておこう。』
『いいぜ、別に。その前にオレを捕まえられればな。オレの親は警察にも顔が...』
『安心しろ。この調書と音声で家宅捜索できるからどうにもできやしない。それにお前の親も黒い噂があるから丁度いい。』
どうやら奴の親もなかなか悪どいことをしているらしい。まさか自分の子のせいで失脚するとは思わないだろうよ。
それから角田さんと一緒に別室で取り調べを受けた...と言っても被害者側なので特になんにもなかったが。
「それで新島はどうなるんですか?」
取り調べもあらかた終わり気になることを聞く。新島もやっていたことは別として不倫を使って脅されていたから被害者と言えば被害者だろう。
「情状酌量の余地はあると言っても身から出た錆だしな。さすがに裁かないといけんよ。」
「いえ、むしろ裁かないならこちらで処理しようと思ったので。」
「お前とお前の母親を敵に回したら怖くて眠れなくなるよ。」
「言い過ぎですよ。」
そう言うと角田さんに呆れたような顔をされたが俺は悪くないだろう。
「それとお前はまだ治っていないのか?」
「治ってないですね。ただマシにはなったと思いますよ。新島って名前を覚えてますし。」
「関わった奴は覚えれるようになったってことか?」
「そこまでは。ただ危害を加える人間は忘れませんよ。」
「ならこの前のストーキング事件の関係者は?」
誰だっただろうか。確か校長と女生徒だったはずだが名前は...
「後天性記憶障害。厄介だな。」
「まだ1ヶ月も経ってないんですがね。」
中学時代の事件以降失ったものがある。関わりが深い人間や敵対する人間は忘れないのだが、興味がなかったり関わりが切れると忘れてしまったりする。
医者からは精神的苦痛によるストレスで脳の機能がおかしくなっているらしく、どうも条件によるが人の名前と顔を忘れやすくなっているらしい。実際中学時代の友達だった奴や他の生徒、教師など覚えていない。
厄介なのは顔や名前を忘れているということで起きた事は覚えているからモヤモヤするということだろう。
失ったものは大きかった。
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