第38話 取り調べ

角田 和郎は俺が中学時代世話になった刑事だ。本人曰く頭脳派とのことだが俺からしたら完全な武闘派にしか見えない。

男子生徒と会話をしていたのは角田さんが着くまでの時間稼ぎで、あわよくば正当防衛といいながらぶん殴るつもりだった。


「それにしてもお前ら家族はトラブルに巻き込まれる体質なのか?」

「まぁ親の遺伝子がいいからな。」

「確かにな。とりあえずこいつを連れていくぞ?暴行未遂、ストーカー疑惑とさすがに注意で済ませないし話だと教師も関わっているなら刑事事件にもなるしな。」

「大方予想もつくがとりあえず連れて行ってくれ。俺も伽奈に連絡したら行くから。」

「あぁ、先に向かってるぞ。」


そう言って連行していく角田さんを後目に家に入る。


「ただいま伽奈。」

「あ、お兄ちゃん無事だった?」


家に入ると伽奈が駆け寄ってきた。手元が震えているのは怖かったからだろう。


「あぁ、角田さん呼んでたから無事だよ。ただこの後警察署に行かないと行けないから1人にするけどいいか?」

「大丈夫だよ、私だって料理できるし。お兄ちゃんは怪我なく帰ってきてね。」

「気を付けるよ。」


そうして母にも連絡を入れて警察署に向かう。

東湊ひがしみなと警察署は大きな警察署でなかなか有名だ。その中でも警察特集の番組では角田さんはだいたい出ていたりする。

ちなみにここ2年間は中学時代のせいでかなり通ったりしてる。


「すみません。」

「はい、どうしましたか?」

「先程暴行の現場に居合わせて角田さんに助けてもらい事情聴取を受けに来たのですが。」

「あぁ、それなら話を伺っていますよ。こちらです。」


中に入って受付の人に話すとすんなりと案内された。案内されたのは今、男子生徒を角田さんが取り調べをしている部屋の隣だ。


『それで何の為にあの家に行ったんだ?』

『伽奈の転校をやめさせるために...』

『なるほどな。じゃあ男の人を殴ろうとしたのは?』

『転校をする原因なのはあいつだから...』

『殴ってどうしようと?まさか脅すとか言わないよな。もしそうなら脅迫未遂も追加だぞ。』

『...』


呆れたような角田さんの口調だが気持ちは分かる。完全に身勝手な理由で押しかけた挙句、人を脅迫しようとしていたなんて。

そうなると暴行未遂、ストーカー行為に脅迫未遂とさすが中学生頭が緩いとしか言えないぞ。いつの時代も変わらないんだな。


『それじゃあ次だ、家の住所は誰から聞いた?あの家族は教師以外は知らないと言っているが。』

『新島って教師に聞いた。あいつには貸しがあるから聞いたら答えてくれたよ。』

『貸しだと?それはなんだ?』


角田さんの顔が険しくなる。それもそうだろう、まさか教師が生徒の情報を渡すなんて行為をしているなら。

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