第37話 軽くていいな

緋奈と別れて自宅に戻ろうとしていると自宅の方から叩くような音が聞こえてきた。


「開けてくれ!転校ってどういうことなんだ!?」


自宅の玄関を叩いているのは昨日も来たあの男子生徒だった。

男子生徒は玄関を強く叩いており周りの迷惑もドアが壊れるということも考えてないようだ。

とりあえず伽奈がどうしているか気になり伽奈に連絡すると数コールで繋がった。


「伽奈大丈夫か?」

『お兄ちゃん?私は大丈夫だけど玄関すごくうるさいけど大丈夫そう?』

「大丈夫だとは思う。」


伽奈は自室にいるようで何ともなかった。そうして伽奈との通話を切り今度は知り合いに連絡をして来てもらうようにする。これで何があっても大丈夫なので玄関に向かった。


「玄関のドアが壊れるからやめてくれないか?」

「あ゛?」


声をかけると機嫌悪そうにこちらを振り向く男子生徒。


「とりあえず家に入りたいからどいてくれると助かるんだが。」

「ならオレも入れろ!」

「なんでだ。うちに用事があるのか?」

「伽奈に転校の話を聞きに来たんだよ。」

「転校?そんな話はないが?」


またこいつはあの2人しか知らないことを知っているがなんなんだ?そう思いながらわざと嘘をつく。別にまともに教える気はさらさらない。


「嘘だ!今日家族の方が来て言ったって言われたんだぞ!」

「はぁ?誰だそんな嘘をつく人は?」

ってやつだよ。そいつから伽奈が転校するって聞いたんだ。あんたは家族なのに知らないんだな。」


そう言って嘲りを含んだ笑いをする男子生徒。だがそんなことよりも俺は腸が煮えくり返りそうな思いになっていた。


「なぁもしかして家も教えたのは新島か?」

「あぁ、そうだよ。あいつには貸しがあるからな。」


そうかそうか、中学生は口が軽くて楽だな。


「ありがとう、これで伽奈の転校を進められる。」

「はぁ?」

「伽奈の転校の話は本当だし、その話をしたのは俺だよ。」


そう言うと男子生徒は顔を赤くして俺に殴りかかってきたが、後ろから伸びてきた手によってその腕は止まった。


「誰だ!?」


そう叫んで後ろを向いて固まる男子生徒。

そりゃそうだ、いきなり気配もなく後ろに190cmほどのガタイのいいコートを来た男がいるのだから。


「済まない、遅くなったな夕。」

「本当ですよ。」

「連絡を貰ってどうしたかと思ったがまだいたのか?」

「これは伽奈の方ですよ。」

「なるほどな。とりあえず署まで来てもらおうか。」


掴んでる右手とは反対の左手から警察手帳をだす。


角田かくた 和郎かずろう。刑事をやっているものだ。」


男子生徒は顔を青白く今にも倒れそうになっていた。

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