第19話 服の裾が伸びるから

緋奈が泣き止むまで頭を撫で続けて10分程経ち、ようやく緋奈は泣き止んだ。


「もう大丈夫か?」

「うん...」


そう言ってもまだ緋奈は離れようとしないのはどうしてなのか。

そんなことを思いながら視線を上に向けていると緋奈がポツポツと話だした。


「本当は怖かったの。いつも後ろに人がいる気配がして。」

「いつからだ?」

「2週間前から。透華さんにもストーキングされてるかもって伝えたの。そしたら透華さんもストーキングされてるってもしかしたら私のせいかなって...」


緋奈と透華さんがストーキングされ始めたのはほぼ同時期だとするとやはり犯人は新聞部の関係者だろう。そしてをある程度把握もしている可能性がある。透華さんにも関わっているから野田先生が気づいたのか。


「緋奈のせいじゃないぞ。それに透華さんがストーキングされてるのは俺も聞いている。」

「そうなんだ...」

「それにストーキングされ始めた時期は一緒みたいだから緋奈のせいじゃないよ。それに悪いのはする側だしな。」


そう言って緋奈を離そうとするが離れない。どこにそんな力があるのだろうか。さすがに服が伸びるから離してもらいたい。


「もしかして透華さんに会ってた生徒って。」

「俺だよ。挨拶に行ったら騒がれてな。それからストーキングされるようになったから調べてたんだよ。」

「そっか。」

「それにもう少し待ってもらえれば終わらせるから我慢してくれ。」


緋奈の瞳を見つめて紳士に頼む。恥ずかしいがもう少し追い詰める材料が欲しいため緋奈にも手伝って貰う為に真剣に伝える。


そうして1時間にも思えるほど時間が経った(実際には1分ほど)と思えるほどの間があり緋奈はこくりと頷いてくれた。


「まぁ学校では話せないがまたこうやって話せるようにするからさ、もうそろそろ離してくれないか?」

「やっぱり学校じゃダメかな?」

「取り巻きができてるうちは難しいだろ。」

「そうだよね...」


そう言って緋奈は名残惜しみながら手を離してくれた。

まぁ学校でも話せるようになるだろう。

だがまずはこの不愉快な新聞部の件を片付けなければいけない。


そうしてお互いの近況を話して緋奈を家まで送った。緋奈の家は俺の家から10分程のところで近かった為驚いた。

本当なら緋奈の母親である紗倉さくら 日和ひよりさんに挨拶をしたかったが仕事のため諦めて家に帰ったのだった。


それから家に帰ってソファでぐったりしていると伽奈にどうしたのか聞かれたので、緋奈と和解したということを伝えるとかなり不機嫌になったがいつかまた3人で食事でもできればいいなと伽奈を宥めながら思ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る