第16話 過去④

「失礼します、田上たのうえ校長先生。」

「これはこれは、お久しぶりです折崎さん。」

「お久しぶりです。今日はお忙しい中時間を作っていただきありがとうございます。」

「いえいえ。それで用件とは?」

「なんでもうちの息子が学校でイジメられてるとの人から聞いたので確認と。」

「あぁその事でしたか。」

「何かご存知で?」

「私も詳しくは聞いてないのですがねなんでも折崎さんの息子さんが紗倉さんの娘さんに嫌がらせをしたとか。」

「そうなんですか?」

「自分はそう聞いてますね。」

「そうでしたか...そのイジメをやめてもらうことは難しいですか?」

「イジメをやめてもらうですか?」

「はい、息子が可哀想でお願いしたいのですが...」

「それなら夜に付き合って貰えませんか?」

「は?」

「ですから止めさせるなら夜に食事に付き合ってもらいたいんですよ。それならイジメを止めさせますよ。」

「それは脅迫ですか?」

「いえいえ脅迫ではなくお願いですよ?聞いてくれればイジメを止めさせるどころか推薦でもなんでもしますよ。」

「最低ですね...」

「まぁ付き合えないなら止められませんね。イジメられてる証拠がないんですから。」

「そうですか、なら用は終わったので失礼しますね。」


そうして音声は切れた。

聞いていた俺たちはここまでこの学校は腐敗しているのかと思った。まさかイジメを止めさせる代わりに母と関係を持てと迫ったのだから。


「まさか本当にこんなこと言われるとは思わなかったわ。」

「さすがにこれは...」

「それから強気になったのか家にこんなの送ってくるし。」


そう言って母はまたもや懐から数枚の手紙を出す。そこにはイジメを本当に止めたいなら従えという事が書かれていた。


「しかもこれ1枚は緋奈ちゃんの父親ってんだから彼女も可哀想よね。」

「お母さん大丈夫なの?」

「大丈夫よ。わたしはそんなに弱くないわ。」


心配する伽奈を撫で回すあたり母は特に気にしてないのだろう。俺としてはまさか緋奈の父親がここまでクズ野郎だったのかと幻滅したが。


「まぁそうゆうことで廃校になるレベルで追い込むわ。」


そこからはこれまで集めた証拠を編集して学園祭に向けて準備をした。

見るのも痛ましい物もあった為これが広まれば彼らの将来は終わったも同然だろう。

まさか友達だと思っていた彼らが率先してイジメに加担していたなんて思わなかったし、学校もここまでクズが集まっているとは思わなかった。


ただそれでも因果応報だろうとは思う。結局は自分達がした事が知られるだけなのだから。


そして緋奈の父親の証拠は編集しなかった。あのクズでも一応は父親だと思いそして家族のように思った時期もあった緋奈の為に父親の証拠は用意しなかった。

緋奈の父親以外の証拠を編集したものは完成して文化祭当日を迎えた。

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