第12話 幼馴染みとの再開

17時30分、俺はとある公園にいた。ここに来るのは1年振りなのだが体感としては5年くらい経っているように感じてしまう。

幼稚園、小学校の時はよくと遊んでいたのだが中学校にあがってからは遊ばなくなってしまった。

そして中学の時には完全に袂を別れてしまったがそれでも俺は彼女の悲しむ顔は見たくなかった。


18時になる前に彼女は来てくれた。


「久しぶりだな、紗倉。」

「そうだね、夕くん。」


当時、隣に住み一緒に育ちそして中学に別れてしまった幼馴染み。


「どうだ高校は。」

「楽しい...とは言えないかな。」


そう言う彼女の顔は寂しげだった。それは自惚れでなければ別れた時に言われた言葉から伝わる気持ちだ。


「囲まれてるもんな。言わないのか?また。」

「今回は言ったよ、前みたいになりたくないからね。それでもまだ囲まれてるから諦めたよ。」


彼女の困ったような笑顔から本当だと分かる。伊達に14年間一緒にいなかったから彼女が誤魔化しているかどうか表情から分かる。


「そうか。そういえば放課後はどうだ?そんなに囲まれてるなら誰かと遊びに行ったりしてないか?」

「放課後?それならいつも1人で帰っているよ。誘われても親からはなるべく早く帰ってくるように言われているからね。」


あのクズ親なら友達なんか切り捨てろとか言うからな。もともと俺に対しても小学校にあがってからはかなりキツイ態度だったしな。それなのに俺の親に対しては色目を使っていたし正直クズ野郎としか思えなかった。


「まぁあの親父さんなら言いそうだな。」

「ううん、お母さんだよ。お父さんとは去年の冬には離婚したの。」

「は?」


ちょっと待ってくれ。離婚しただって?あんなに仲がよかった夫婦が?


「お母さんが中学の事件のことを聞いてね話したらお父さんと言い合いになったの。それからかな?もともと夕君にもキツイ態度なのもあんまりよく思ってなかったし何より夕君に対して「緋奈と仲良くしてたんだ。虐められても文句は言えないだろう。それに率先して態度を矯正させる教師の方が素晴らしい。」ってね。その言葉からお母さんはお父さんと別れる準備をしていたみたい。いない所では「あんなクズと結婚したのが間違いだった。」ってね。」


それを聞いて俺はなんにも言えなかった。俺は自分だけが悲しい思いをしたと思い彼女と離れたのに彼女もそんなことになっていたなんて。


新聞部のストーキングの件を聞くだけだったのにまさか緋奈の親が離婚していたという事実を知り俺は胸に痛みを感じて顔を顰めた。

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