第9話 理由①

ストーキングされるようになってから1週間、ほぼ毎日化学準備室に新聞部は張り込みをしているようだった。あれから透華さんにはストーキングの件を話してどうしてストーキングをしてまで調べるのかを探ってみた。


まず選択学科棟は貴重なものも多く至る所に監視カメラがついている。それを透華さんには確認してもらったところここ1週間程、透華さんに生徒が物陰に隠れて化学準備室を見張っていることと張り込んだ後は必ず新聞部の部室にいくということが分かった。


「これって新聞部は完全にアウトですよね。」

「さすがにストーキングはしないと思ったけどまさかしていたとは...」


日曜日、我が家の居間で透華さんにストーキングされた時の動画を確認してもらっていた。

予想通りストーキングしていた生徒は新聞部の連中らしくこれには透華さんも庇いきれないといった所だろう。


「ただそれにしてもあまりにも執着しすぎてませんか?」

「確かにこれだと完全にストーカーと変わらないからな。」


新聞部がここまでする理由が分からない。たとえ透華さんが美人だとしてもここまでする理由がないはずだ。

あったとしてもそれは透華さんを好きであり執着しているストーカーならまだしも、このような事態になったのは今年度になってからだという。


告白なんぞなかったんだがなぁ...」


そう言って透華さんは顰めっ面をしながら考え込む。この問題は早めに処理しないとまずいのかもしれない。


「生徒からということは教師からはあったんですか?」

「あぁ、2人程な。1人は他の学校に転勤になったがな。」

「転勤理由って聞いても大丈夫ですか?」

「大丈夫だぞ。名前は夏屋なつや しげる確か転勤先の生徒が夏屋を気に入ったらしく、その生徒が転勤先の学園長の孫らしくて引っこ抜かれたんだよ。」

「めちゃくちゃ面白い理由ですね。」

「聞いた時には腹抱えたよ。今では教師じゃなく事務をやりつつその生徒と仲良くしているらしい。この前紹介もされたよ。」

「そりゃめでたいですね。それでもう1人は?」


そう言うと透華さんは1度ため息をつくとゆっくりとその名前をつげた。


野田のだ まこと。3-Bの担任で新聞部の顧問だ。」

「明らかに怪しくないですか、それ。」

「そうは言ってもあいつほとんど職員室にいるからなぁ。」

「そうなんですか?」

「基本的にずっと職員室にいて作業している。新聞部の生徒が全員帰ったら本人もそのあとに帰るくらいだよ。」


ということは新聞部とは関係ないのだろうか。

まずは新聞部が部室に集まって何をしているのか調べた方がいいのかもしれないと思い、月曜日の放課後新聞部の部室に向かうことにした。

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