第5話 取り巻き

翌朝、朝食を作り登校準備をする。親が家にいても家事ができない為に我が家は基本的に俺か伽奈が家事をすることになっている。


「おはよーお兄ちゃん。」

「おはよう。」


伽奈が起きてきたので一緒に朝食をとる。

伽奈は朝が弱いので一緒に食べることはまちまちな上に遅刻も時々している。それでも何も言わないのは兄としてダメなのだろうがに行かなくてもいいと思うので何も言わない。


「お兄ちゃん本当に大丈夫?」

「今度は上手くやるさ。」


伽奈は紗倉さんのことを言いたいのだろう。中学の時は伽奈も同じ学校だったから事の顛末も知っている。



そしてその過程と結末も。



そうして朝食を食べ終わり高校に向かう。玄関口に向い上履きをはいて教室に向かうところで1-Aに人だかりができていた。


(また紗倉さん目当てなんだろうなぁ...)


中学時代も他学年問わず彼女を取り巻いており何度も見た光景だ。そして取り巻いている彼らは近くにいる男子に対して悪意を持つ。


なのでそのまま教室から離れて化学準備室に向かう。鍵ももらっているのでそのまま開けて入る。時間ギリギリまで入ればあの取り巻きも消えるだろうからそれまでここにいるのが無難だ。


「朝から紗倉も大変だな。」

「おはようございます、早見先生。取り巻きはどうでした?」

「あいつらもまだいるよ。あと10分もないのにご苦労なことだ。」


透華さんの表情が如何にもめんどくさいという顔をしている。

まぁ取り巻く彼らは人の話をあんまり聞かないというのはどこでも同じなのだろう。


そのままSHRの5分前くらいになり教室に向かう。この時間になれば何かあっても透華さんがギリギリ間に合う時間だ。

自意識過剰とも思えるが実際にあったのでここまでしないと更に面倒になる。

教室に入り取り巻きを避けて自分の席に座る。正直邪魔ではあるが何も言わないのがコツだ。


「おい。」

「なんだ?」


席に座るといきなり取り巻きに声をかけられた。ここの受け答えを間違えると中学時代の二の舞だ。


「お前紗倉さんの隣の席のやつか?」

「見りゃわかるだろ。」

「そうか、変なことするなよ。紗倉さんが泣くようなことがあれば殺すぞ。」

「なんもしねぇよ。頭悪いから休み時間は勉強しないといけないからなんもしないから。」

「ならいい。」


脳筋みたいな大柄な取り巻きはフンッと鼻をならし取り巻きに戻った。


こうして諍いもなく高校生活が始まるというのはなく午後の部活動紹介で危惧していたことが起きた。


それは刹那的快楽主義者とでも言える好奇心旺盛な生徒たちの集まりが騒ぎ始めまたしても平穏な生活はぶち壊されたのだった。

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