第4話 寿司

「ただいまー。」


そう言いながら靴を脱ぎ居間に入ると妹がソファに寝転んでいた。


「おかえり、お兄ちゃん。」

「ただいま。今日朝からいなかったけどどうしたんだ?」

「入学式の手伝いで内申点もらいに。」

「なるほどな、お疲れ様。」


折崎おりさき 伽奈かな14歳、中学3年生。セミロングの薄い茶髪に母親譲りの整った顔立ちにグラビアモデルのようなスタイル。さぞおモテになるのだが俺の中学時代のせいで家族と透華さん家族以外には興味も持たず関わらないようになってしまった可愛い妹。


「夜に透華さん来て寿司ご馳走してくれるってよ。」

「本当に!?やったー!」


両腕を上げて喜ぶ姿を見ると少しは嬉しくなる。


「とりあえず俺は部屋で勉強してるから透華さん来たら伝えといて。」

「分かったー。」


またテレビを見始めた妹を見て自分の部屋に向かう。

部屋に入り手元を照らすスタンドライトをつけて鞄テーブルに置いてベッドに横になる。


(まさか紗倉さんがいるとは...)


中学生の時のクラスメイトであり学校を巻き込んだ事件の原因となった生徒。



そして中学時代、告白してきた女の子。



(また彼女は人を狂わせるのだろうか。)


彼女のせいとは言わないがそれでも彼女が周りを気にすればこんな事にはならなかっただろう。


いや、俺がちゃんと彼女を拒絶すれば良かったのだろう。人に優しくしようなど思わず。



「お兄ちゃーん、透華ちゃんきたよー。」

「分かったー。今行く。」



居間に向かうと透華さんと伽奈がテーブルで寿司を食べていた。


「なぁ、待つってことはできなかったのか?」

「大トロすごく美味しいよ!」

「だろうな。」


俺も席に座り寿司を食べ始める。


「お兄ちゃん高校どうだった?」

「あぁ、いつも通り詰まらなかった。」

「おい、担任いるのにそれはないだろ。」

「へぇー、透華ちゃん担任なんだ。」

「まぁな。あとあいつも同じクラスだった。」


そう言うと空気が凍った。


お兄ちゃんの前に現れたんだ。」


そう言った伽奈の顔は険しかった。


「どうせまた同じことになるんじゃないの?」

「あたしが担任だからそんなことはさせないよ。」

「まぁ透華さんがそう言うなら信じますが頼みますよ。」

「あぁ任せろ。」


透華さんがいるならある程度は大丈夫だろう。ただ...


「透華さん、うちの学校にってありますか?」

「あるがそれがどうしたんだ?」

「いや、確認したかったので。」


ということは十中八九、化学準備室を出た時見たのは新聞部だろう。


入学そうそう面倒臭いことになったとサーモンを食べながら思った。

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