第3話 その過去は
教室を出て化学準備室に向かいノックをする。
「入っていいぞー。」
返事が帰ってきたので中に入る。
「入学おめでとう、夕。」
「ありがとうございます、透華さん。」
我が担任、早見 透華。26歳で母の友達の娘で親交がありそしてこの学校に入学をすすめた人である。
「とりあえずそこに座ってくれ。紅茶でいいか?」
「お願いします。ところでこの後って何かあるんですか?」
そうでもなければこちらを見ないだろう。
「まぁ入学祝いに寿司でも食おうって。伽奈ちゃんもこっちに来てるんだろ?」
「えぇ、妹は俺についてきてくれましたから。」
「ならお前ん家に行くよ。それともあたしの家にくるか?」
ニマニマしながら聞いてくるあたりからかっているのだろう。
「俺の家でいいですよ。それよりも...」
「分かってるよ。紗倉だろ?」
「分かってるなら頼みますよ。正直中学時代と同じにはなりたくないですし。」
「ならもう少し社交的になったらどうだ?見てくれは悪くないのだし。」
「無理ですよ。友達なんてのは簡単に無くなるもんですしそれなら周りと関わらないのが無難でしょう。」
そう言って紅茶を口に含む。そんな俺を透華さんは苦い顔をしながら見るのは俺の中学時代のことを知っているからだろう。
「まぁゆっくりでもいいから友達でも作ってくれ。それとくれぐれも何かあった時は連絡はしてくれ。」
「考えときますよ。それじゃこれ家の合鍵です。」
そう言って合鍵を渡し化学準備室を出た。その時にチラッと生徒の姿が見えたが気にせず帰宅するのだった。
「やはりまだ無理か。」
そう呟きあたしは紅茶を飲んだ。折崎 夕の過去、中学時代は凄惨であった。
友達からは裏切られ、周りからは除け者にされる。
助けを求めることは出来ず教師は認知などしない、むしろ加担までしていた。
それを夕は独りでやり返し最後には廃校寸前にまでした。
そして大量の慰謝料や口止め料などもらい妹と2人で暮らし始めた。
まぁ2人の親は仕事が忙しいから親なりの気遣いなのだろう。
(夕のことお願いね、透華ちゃん。)
(分かっていますよ、千代女さん。何かあっても私が味方になります。)
(本当にお願いね?近くにいなかったせいで夕にも伽奈にも嫌な思いさせたから高校で同じこと起きたら今度こそ廃校にするからね?)
(ははは...分かっていますよ...)
思い出しただけでも寒気がする。2人の母親である
ただ中学時代の事件の原因となった彼女がいる。そして不運にも隣の席な為また同じことが起きるかもしれない。
「紗倉さんも悪いわけじゃないんだけどなぁ...」
今後の夕の学校生活の平穏を祈りあたしは寿司の配達を頼み夕の家に向かうのであった。
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