第15話 回想 コゴウル王国

回想  コゴウル城





アクスはコゴウル王国に来てからの日課である。魔物退治の成果を畜産省に報告していた。


「今日の成果は雪狼3頭と氷結熊1頭です」 


「いつもありがたい、ここは食べ物が貴重だし魔物も強い。いつまでもいてほしいのだがなぁ」


「すみません、故郷に大切な人と友人がいるんです、いつか故郷に戻った後みんなつれてこちらに来ますよ」


「大切な人というのは恋人ですか?」


「告白したままで、結果はわからないのですが」


「良い結果だといいですね」


「えぇ」


いつもの魔物退治の報告が終わったら、魔法省でゼアド・ドダンが最後に発動した魔術とアクスの光の魔術やスイン王国について話すのが日課であった。


「だが少し早く終わったなぁ」


一応魔法省の中に入ることはでき、待機を命じられていたものの我慢が出来なくなり、少し動いていた


そして部屋を通り過ぎようとしたときにある一文が言葉が耳に入ってしまった。


「『門よ開け、光よ去れ、門は喰らう、血肉を喰らう、闇を呼び込め、門を閉めよ』」


「(あの詠唱はそういう意味だったのか?)」


そう思うと扉の隙間からのぞき込むように見ていると小太りの白髪のおじさん魔法省の大臣ワウル・スルゥが高身長で白髪交じりのおじさん宰相アグーサ・スカンを先生と慕いながら何やら話し合っていた。


「ゼアド何某は結果的に成功しそうだったのですな」


「ええ、そしてこれはおそらく古代魔術対戦末期に使われた詠唱でしょうね」


「どうしてわかるのです?」


「古代の魔術詠唱は総じて『門よ開け~門を閉めよ』で統一されています。そして


古代の魔術対戦末期ではそれは恐ろしい魔術を使われていた。主に生贄を前提とした魔術ですね、『門は喰らう、血肉は喰らう』というのは生贄を求めていることを意味するのです」


「そうなのですか」


そんな場面にうっかり聞き入ってしまったアクス。


「(なんて恐ろしい魔術なんだ)」


「ちなみに光は既存の神の比喩、闇とは新たなる神という意味と解釈する人もいるんですよ。」


「へぇ」


「それに私は思うのです。ゼアド・ドダンは門を開けたままにしようとしたのではないかと」


「ほう...」


「知っておりますか?ゼアド・ドダンが魔界に帰ること躊躇したのか?」


「いえ、あまり魔界には帰りませんので」


「(はっ?)」


今までの一連の会話からも怪しさはあったが今ので決定的になった、魔法省大臣ワウル・スルゥと宰相アグーサ・スカンは魔物であることが。


「彼は魔界で禁忌の魔術を行使したことを魔王に咎められ、80年ほど前に魔界から姿をくらませています。」


「その禁忌の魔術とは?」


「『紋様刻印<強制顕現>』です。本来は不可視や存在しないものを形を無理やり与えることで顕現させることができます。」


「例えば?」


「たとえば、先ほども話したように詠唱に出てくる『門』の中に何がいるのか、これは本来比喩的な意味合いが強いですが、これに形を与えようとすればできるのですよ」


「はっそれがアクスが魔法陣内で感じたという何かですか!」


「憶測ですがね、ゼアドが強制顕現で何をしたのかは知りません。魔界でもそのたぐいの話はご法度」


「そうなのですか...」


はどう思いますか?」


「ッ!」


その名前が呼ばれ睨みつけられた瞬間、まるで本能が逃げろとでいうような恐怖に体が見舞われた。魔法省の建物から速攻で逃げ、挨拶せず全速力で走り抜けた。コゴウル王国を抜けてからもアグーサ・スカンの目が忘れられず、できるだけ自分の身分も出さないようにしながらスイン王国を目指し、2年半旅をし体を鍛え続けた。

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