第10話 刺客との対決と作戦会議

西の森





「なんだ、あいつ!」


アクスは走りながら、近づいてくる何かを退けていた。


「くそっアルエーズ邸を遠くで見てたら、後ろから不意打ちかよ」


そうするとその何かは地面から腕を出して


「『爆発の魔術〈放出破〉』」


赤い光を溜め指先から赤い光線をアクスに目掛けて放ち......





バーンッ!と回りを吹き飛ばす爆風と熱風がアクスを襲う。


「ギャァ!」


アクスは幸い軽傷ではあったもの吹き飛ばされた衝撃で意識がもうろうとしてきて


何かは指先からまた同じような光を溜めはじめ


「(まずい)」


そう思った瞬間


「あきらめるなっ!」


突如ダンガズの声が聞こえ、そのあとにクロウ魔術を行使し始める。


「結構ギリギリだったじゃないか『壁の魔術〈魔壁〉』と」


アクスの前に水色の壁が発現し、さきほどの光線を防いで見せた。


口では余裕そうではあるものの、心底心配しての台詞であった。


「アクスさん!」


サリアはアクスを抱きしめて泣いていた。


「ははは、そんな泣くほどのことでは」


「泣きますよ!」


「はいはい、いちゃいちゃはあとだぞ」


『爆発の魔術』を防がれた、腕だけの魔物はやはり標的をアクスに魔術の行使を始めた。


「へへへ久しぶりの俺の『力の魔術』見してやるか!」


そういうとダンガズは自身の体から湯気が出始め、赤い髪はさらに燃え上がるように真っ赤になっていった。


「『力の魔術<肉体強化>」


「......」


その魔術を観察し危険と判断した腕の魔物は先ほどとは違う魔術を行使する


「『爆発の魔術<地爆>』」


腕の魔族の周囲を中心に爆発をさせることで攻撃の体制を崩そうと判断したのだ。


だが、


「遅いな」


ダンガズは一瞬で腕の魔物切り刻む、もはや腕の魔物は魔術の行使は不可能となった。


「これにて終了!」


さらに切り刻む、腕の魔物はもはや原型をとどめていなかった。


「いやぁダンガズ君は強いなぁ」


クロウも久しぶりに見た魔術行使のダンガズに困惑を隠せない。


「まぁ、俺の場合魔術がつえぇからな」


サリアは茫然とその光景を見ていた、そしてダンガズはアクスの現在の状況を聞いた。


「『光の魔術』はあと何回使える?」


「2回、と言いたいが1回がギリかも」


「『光の魔術』?」


サリアはそういうとクロウが『光の魔術』について説明をした。


「アクス君は『光の魔術』という相手の魔術や魔道具を無効化する魔術が使えるんだ」


「それはすごいです!」


サリアはアクスの魔術がそんな強力な魔術だということに感激していた。


「ただ弱点もあってね、アクス君の『光の魔術』は相手の魔術や魔道具を無効化するのはいいんだが自分の魔道具も無効化することになる」


「え?とういうことは」


「まぁアクスは魔道具が使えない騎士ということだな」


「悪かったな、使えなくて」


「それに回数の制限もある、一回使うと魔力と体力を消耗するからねぇ、アクス君の『光の魔術』は確かに強力だけど使い勝手悪そうなんだ」


「実際使い勝手は悪いしな、アトルフの時は弱点だったからよかったんだ、普段は無効化してからが本番だからな」


「そうなんですか」


「なぁサリアはどんな魔術なんだ?」


「おや気になるところ突くね、でも僕気になってた」


「私の魔術は皆さまのような強力な魔術ではないのです。『倍魔の魔術』魔術を倍にして返します」


サリアが自身の魔術について語るとダンガズは不思議そうに


「それ普通に強くないか?」


「いえ『倍魔の魔術』は長い時間が必要ですし、誰かに守られ続けるよけ続けるかしないといけないのです。」


「なるほど」


4人はお互いが持つ魔術について話した後、スイン王国宰相であり、一連の事件の黒幕ゼアド・ドダンをどう倒すかの作戦会議を行うのであった。





アルエーズ邸 夜





「ッ!」


ゼアド・ドダンの肉体にダメージが入る、


「おのれ、我が力を欲しておきながらこの様か、所詮『契約の魔術』による契約でも肉体の一部しか顕現させることのできなかった魔の亡霊か」


ゼアドは腕の魔物が勝てるとは思っていなかったが、腕の魔物の早い退場がゼアドを焦らせていた。


ゼアドは契約を結ぶことで相手を支配してきた、一見利害の一致によって契約が果たされたように思えても結果的にゼアド・ドダンが優位に立てる契約を行うことで今までの絶対的な立場に君臨し続けてきた。


しかし、いかに優位の立場であって契約した者にもそれなりのもの上げなければいけないアトルフ・ヴァンターには魔力と魔術、腕の魔物にも完全な肉体による顕現に必要な魔力、いかに強力なゼアド・ドダンが強力な魔物と言えど魔力は有限、だからこヴァンター家との密約により捧げられた生贄をその分魔力としてため込む事で補填してきた。


「『契約の魔術』は魔力を消費する。だからこそ魔道具『魔双爆雷剣まそうばくらいけん』を完成させたかったのだが......あの騒ぎでは中央の聖騎士どもにも遅かれ早かれバレる」


ゼアド・ドダンにとっては早く魔界に帰還するべきだであった。


「アクス・バーズ......おのれ」


ゼアド・ドダンはいままで築き上げたものすべて投げ出す決断ができずにいた。


西の森


西の森にて作戦会議を行っていた4人組


「......あの、アクスさん?それは作戦なのですか?」


サリアは困惑した表情を浮かべていた。


「あーアクス君、確かにそれが一番手っ取り早いけどね、ごり押しすぎないかい?運も必要だよ?」


「クロウの言う通りだぜ、言われてみればああ確かにそうだとなるがその後のプランがない」


発案者アクス以外はこの作戦に否定的であった。


「皆の気持ちはわかるんだ、この作戦はリスクが高すぎるだけど、うまくいけばゼアド・ドダンの化けの皮を剥がせる。そしてサリアを何が何でも守って見せる。」


アクスはこれしかないという気持ちであった。


「私......アクスさんの案に乗ります」


最初に賛同したのはサリアであった。


「最初に私が相談したとき、アクスさん信じてくれましたよね?私は笑って冗談だとか嘘と思われると思っていました。だけどアクスさんあなた違いました。だから今度は私がアスクさんを信じます」


「サリア!」


続いて賛同したのはクロウだった。


「まぁ乗りかかった船という言葉もあるからね、ここで見捨てるというのは僕の騎士道に反するかな」


渋々ではあるもののダンガズも了承した。


「はぁ、アクスお前たまにとんでもないこと言いだすな、俺はこの中では年長者だ。いいよいってやるよ」


こうしてお互い決心を固めスイン王国救い生きて帰ることを誓うのであった。

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