第7話 アトルフ・ヴァンターの最期
「さよならだスイン王国......また会――」その瞬間
「おい、逃げるのか腰抜け。まぁヴァンター家なんてキリズ・バーズに全員殺された雑魚だから当然か」
その言葉が耳に入った瞬間アトルフ・ヴァンターは止まり。その声が聞こえたほうを振り向いた。その男が立っていた。ヴァンター家を自分以外処刑した男キリズ・バーズに似ている男。アクス・バーズは不適に見下すように腕を組んで。
「おい雑魚、逃げろよ。今度は俺がよぼよぼの爺ちゃんになった後でも、死んだ後でも来ればいい、まぁ結局ヴァンター家はバーズに力では勝てずただ逃げ続けておしまい。なんて無様な勝利だヴァンター家の生き残り。天国で家族が泣いてるぞ、いや地獄か。」
これが挑発であることはわかっていた、しかしここまでヴァンター家を侮辱されてただ逃げることはできない。たとえアクス・バーズを殺せなくても一矢報いてから逃げればいい。そうすればただ逃げたのではない戦いからの戦略的な撤退なのだ。
そう思ったアトルフ・ヴァンターは魔道具『
「(馬鹿なやつめ俺を逃がしておけばいいものをこの魔道具は射程も威力も魔道具『
「ふふはははっ!どうしたこの様はさっきまでの威勢はどうした!」
雷の煙が払われてゆくとありえない現実を突きつけられる。
「はっ?」
「俺はさっき『光の魔術<閃光>』を発動していた。俺前に言ったよな?魔術を無効化できる光の力があるって?」
「(まさか本当に光の力を有している家系だとでもいうのか?)」
「だがそれがどうした君のその光の力確かに厄介だがあくまで魔術の無効化のみだ。魔道具は物理攻撃も可能なのが強みなんだよ」
「いや、あんたはもう終わってるよ」
「何?ッ!」
アトルフ・ヴァンターは自身の体をしゃがみ腹を見てみると朽ちかけているのが分かった。腹だけではない両手、両足、そして顔、本能がこのままでは死ぬと叫んでいる。
「何をした!俺は何もしていない!お前が何か攻撃を......」
「俺は一度しか魔術を発動していない。」
「『光の魔術』......なぜ......ッ!」
アトルフ・ヴァンターに心当たりが一つあった。ゼアド・ドダンに生贄を捧げると与えられた。魔力と魔術。しかし、あれはあくまで外部からの与えられただけのはず。それらを無効化されたことでなぜ体が離散しはじめているのか。
「気づいてなかったのかもしれないがアトルフお前は体の内部にまでゼアドの魔力と魔術で支配されてたんだよ。お前が生贄を捧げるたびに与えられる魔力と魔術はお前自身の魔力や肉体はゼアドの魔力や肉体となっていった、お前はゼアドとwin-winの関係だと思ってたんだろうが既にゼアド・ドダンに支配されてたんだよ。」
「そんな......そんな」
突きつけられる絶望。北の大陸ノースェで過ごした幼少の時代より自身はヴァンター家の最後の生き残りであるという記録が刷り込まれていたそれと同時にキリズ・バーズの顔も彼は行ったことも彼は自分を助けたことも、だがそれが許せなかった半端に生かすくらいならヴァンター家と皆と殺して欲しかった。だからキリズ・バーズとそれに連なるものを殺すために魔術の勉強を始めたそれが魔術の勉強した一番最初の動機だった。当初は人間の力のみで魔術の真理を追い求めようともした。しかしヴァンター家最後の生き残りである自分にはなぜか魔術の才がなかったのだ。そんな中スイン王国の宰相がノースェに訪れてきた。そして口を開いた「探したぞ。ヴァンター家の生き残り、我が密約を交わせし血族」と語り。スイン王国の宰相ゼアド・ドダンこそがヴァンター家の密約を交わした魔族であること。キリズ・バーズは死んだが、その息子アクス・バーズは生きていることなど教えてもらった。その後はもうすぐ来るラバル・アルエーズの懐柔の方法などを教わり、スイン王国でゼアドのための生贄に奴隷やスラムの人間を選んだ。本来であればもっと良質なものがよかったが20人分を運ぶのは難しく。ゼアドの許可も下りたため奴隷どもを連れて出港した。
「ヴァンター家はゼアドと密約を交わした時点で末路は決まっていたのかもな......」
アトルフ・ヴァンターはボロボロの体そうつぶやいた
「あぁそうだ、さっきはヴァンター家をボロクソに貶したけどあれはアトルフを止めるための嘘だからな、あそこまで自身の理想に突っ込めるの並の人間じゃできなかったと思う。貶したことはごめんな。でもヴァンター家は無実の人を生贄にしていた悪人だったよ」
「そうか......俺もキリズ・バーズに助けられたから今ここにいるんだ、正直なぜ助けたと思った。ずっと思っていたし、生きていたらこの先も思うんだろうがそれでもこの瞬間だけは思う。生きててよかったと」
アトルフ・ヴァンターの体はもう頭以外は原型とどめていない。
「最後にゼアド・ドダンの魔術に気をつけろ......」
そういうと最後に体が離散していった。死体の原型すらも残らずアトルフ・ヴァンターという存在は歴史にも残らない何も無い。
「(自業自得なんだけどな......)」
そう思いながらもアルエーズ邸に向かうのであった。
アルエーズ邸2階
アトルフ・ヴァンターの名を告げた瞬間に恐ろしい速度で逃走を開始した。それは防衛本能のようなものさえ感じた、
「今の動きは人間というよりも別の生物でした......」
恐怖も感じたが哀れみも感じてしまっていた。
「予想より早かったけどアクス君ならやってくれるかな」
「そうだな、俺たちにできるのはサリア嬢の保護くらいだ」
そういうアルエーズ邸に二人の騎士が入ってきた。アクスが話していた特徴と合致することからこの二人が協力者であることは察しがついた。
「えっあの保護はありがたいのですが、アクスさんを助けに行かなくていいんですか?」
「大丈夫さ、アクス君ねあーみえても騎士の中では強い方なんだよ」
「ま、魔術だよりの連中には特に強いな」
「そうなんですか?」
アクスが弱いと思っていなかったがここまで押される存在だと戦っている姿が見てみたいという願望も生まれるが、状況が状況のために我慢して保護されるのであった。
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