第4話 約束と宴会

スイン王国  現在 夜








「どうすればいいんだ?」


アクスは混乱したヴァンターだけならどうにかできても宰相を相手にするのはまずかった。宰相ゼアド・ドダンはまだ騎士であった40年前に起きた西のアラクァ国との戦争で快勝を納め30年前に宰相に就任それ以来ずっと宰相職にある人物。国王とは前国王の時代からの知り合い、スイン王国の騎士が愛されているのもアラクァ戦争による功績が大きい。


「ゼアドに対してどうやって対処すればいいかわからないなぁ」


「申し訳ございません」


「サリアさんが謝ることじゃない全部ゼアドとアルトフが悪いんだから」


「あぁでも宴会の時間だ、まぁしょうがない」


「あ......あの約束してくれますか?」


「約束?」


「はい、私のために死なないという約束」


「じゃ俺からも約束してほしいな」


「できることでしたら」


「死なないこと」


「あの、もちろん死ぬ気はございませんが」


「サリアさんが死なないって約束してくれるなら俺はサリアさんのために死なない」


「あの......はいわかりましたではゆびきりげんまんしましょう」


「え?ゆびきりげんまん?恥ずかしんだけど」


「してくれないのですか......」


サリアが少し悲しい表情したためにアクスは無碍にすることが出来なかった。


「わかったサリアさんゆびきりげんまん」


「はい、あと次からはサリアさんではなくサリアと呼んでください」


「わかったよサリアさ......サリア、ただ人前ではさん付けするよ?」


「はい!」


こうしてアクスとサリアはスイン王国の危機を共有し、宴会の席向かっていくのであった。








スイン王国大広間 夜





貴族席ではスイン国王が一番前の長いテーブルの真ん中に座り、貴族たちは立ちながらそれぞれおしゃべりを楽しんでいる。しかしアクスには話す相手がいない、サリアとは話すことが出来るが婚約者がいる女と長々と話すわけにもいかずしょんぼりと食事をしていた。


「(貴族席を用意したとサリアはいっていたが)」


「......」


「(アルトフが隣にいるとか気まず!)」


サリアはアクスとは少し遠い場所でアクスに心の中で「(ごめんなさい)」と思いながら食事をしていた。アクスは今回は目立たず空気のような存在いるよう心掛けて行動していたが、やはり元は平民であるため浮いてしまっていた。そしてアルトフが話しかけてくるという事態に発展してしまった。


「君は平民だったね」


「えぇそうですよ。」


「君サリアさんに気があるよね」


「はははまさか、サリアさんはアルトフ・ゴルズさんと結婚するんじゃないですか騎士たちの間でも話題になってましたよ」


「へぇそうなんだ、アクスだっけ君嘘下手だねぇ、サリアさんをちらちら見てるの僕が気が付かないと思ったの?」


「それこそアルトフさんの勘違いでは?」


「勘違いしてるのは君だよね、平民が貴族と一緒に宴会とかねぇ」


「スイン王国では貴族も平民も極端な隔たりはないんですよ、外部の貴族さんにはわからないのかもしれませんが」


「......アクス君のフルネームなんだっけ」


「......アクス・バーズ」


「あぁそうだバーズ、バーズ姓は平民だけど有名だよね光の騎士だなんて称えられてるとか、でもいまじゃ見る影もないよね君も所詮ただの騎士だし」


「騎士のありかたに家柄は関係ないな、じゃああんたは家柄で全部決めてるのか」


「それはねぇ。僕のゴルズは魔道具の開発が得意でね、代々魔力の加工がしやすい家系なんだ、でのバーズにはそのような特殊な魔力を有する家系じゃないだろ?そんな平凡ではねぇ」


「残念ながらな。だがこう見えても魔術を無効化できる光の力を有してるんだぜ」


「それは強がりかな?光の力が魔術を無効化できるのは有名な話だがね。バーズを馬鹿にされたのがそれほど悔しかったかい?」


「ガキみたいだな」


アクスは少々苛立ちながら話したためにため口でアルトフに話しかけていた。


「おやバーズ姓をいじられるのは嫌かい、だったらもっといじり倒してやろうか」


「なんでそんなにバーズ姓をいじる?もしかしてバーズ姓に嫌な思い出でもあるのか」


「ふふふバーズ姓に嫌な思い出などないさ、僕の力には及ばない」


「あんたの力が及ぶかはどうでもいいんだが」


「口だけは達者だねぇ......」


「(こいつヴァンター家には執着してるくせに、だが我慢しろここで動けばサリアがどうなるか)」


そうは思いつつもアクスは妙に挑発的なアルトフの言動に反応してしまい逆に挑発していた。


しかし同時に疑問も感じていたなぜアルトフがバーズ姓に執着するのか、バーズ姓に関して恨みでもあるのだろうか。


「閣下!」「ゼアド閣下!」


周りざわつきはじめるとゼアドがこちらにというよりアルトフに近づいてくるのがわかった


「アルトフ、急用ができた」


「わかりました閣下、ラバルさんにはゼアド閣下と話してくると伝えておきます」


アルトフはラバルに話をかけた後にゼアドについて行った


「(あぶない、挑発に乗るところだった)」


アクスはホッとしながらあとは特に問題もなく料理をご馳走になるのだった。








 スイン王国 北の森


「早急にと言われましても無理です!」


「だろうな」


「ゼアド閣下が所望する魔道具『魔双爆雷剣まそうばくらいけん』は試作品すらまともに機能していない状態です。あれでは使い物になりません」


「ふむ......」


「なぜそのようなことを?」


「西側からよからぬ気配を感じる」


「西側?アラクァ国が攻めてくるのですか?」


「アラクァなどはどうでもいい、もしかしたら中央に感づかれているのかもしれん」


「中央ですか......目立たずに動いてきたつもりですがね」


「とにかくいそげ」


「はい、わかりました」


「(おのれ小賢しい、20年前と同じだと思うなよ)」


ゼアドは内心怒りながら、スイン王国の王宮へと向かうのであった。








スイン王国 大広間 夜


宴会は終了し掃除が行われている間にアクスはサリアと会話をすることができた。


「サリアさん、食事おいしかったですね」


「ええおいしかったです。あとふふアクスさんの敬語もいいですね」


「そんな恥ずかしいこと言わないでください、ここは皆がいますからね」


「そうですね、アルトフになにやら絡まれていましたが大丈夫でしたか?」


「それは大丈夫」


「あの明日からも機材運びお願いします。そしたら会えますからね」


「そうですね、あとこのこと信頼のおける仲間に話していいかな?」


「いいですよ」


アクスとサリアはお互い約束して、今日の日は終わるのであった





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る