第3話 スターダムへ一直線

 普通、それなりの期待馬ともなった場合、デビュー戦を経てからレースをたくさん使うようなことはまずない。その先にある翌年のクラシック戦線を見据えた場合、翌年まで影響を与えるような疲労の蓄積は避けたいからである。多少躓いたとしても、とりあえずワンクッション置いてその馬の得意そうな条件のレースを使って勝ち上がらせ、大レースに備えるというのが基本であり、重賞レースで掲示板に載る健闘を見せながらもしばらく休まずに連戦を強いられたロゴタイプの評価と言うのは、まだまだ信頼するには足りないものであったのかも知れなかった。


 しかし、ここで休みを取りリフレッシュした効果は絶大だった。休み明け、自己条件のレースに挑んだロゴタイプはスタートから先手を主張、道中3〜4番手から流れに乗るとそのままレースを支配して押し切ったのだ。おまけに走破タイムは2歳コースレコードという破格の勝ち方であり、晴れてオープンクラスに昇格したロゴタイプは二歳における年末の大目標、朝日杯フューチュリティステークスに挑むこととなった。


 朝日杯フューチュリティステークスはそれまで各地で行われてきた重賞レースの勝馬や芝のマイルに高い適性があると見込まれる2歳の若駒が集うレースとして競馬ファンにはお馴染みのレースであり、その年の一番人気に推されていたのはロゴタイプも出走(4着)した札幌2歳ステークスの覇者でもあり、その後東京スポーツ杯2歳ステークスをも制して波に乗る良血馬コディーノだった。

 ロゴタイプは、というとそこから離された7番人気で、これはやはりここまでに既に5戦も使っているという、2歳馬としては「豊富すぎる」キャリアがファン心理に微妙な影響を与えたと見るべきであろう。

 レースは複数の馬による激しい先行争いとなり、かなりのハイペースで進行した。ロゴタイプはその激流のなか果敢に先行策を取り、ともに先行争いをしていた馬がバタバタと失速して沈んていく中驚くほどの粘り腰を発揮して先頭に踏みとどまり、道中は流れを読み切り脚を温存していたコディーノが強襲してきても堪えきり、コディーノをクビ差だけ抑えて見事勝利したのだった。勝ち時計もレースレコードタイ記録という極めて優秀なものであった。

 初めての重賞勝利をG1初勝利で飾り、かつ夏には苦杯を舐めさせられたコディーノにもリベンジを果たすことになったロゴタイプは、押しも押されぬ2歳チャンピオンとして三歳春のクラシック戦線へと駒を進めることになった。

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