三度目の出会い

「また会いましたね」

 とマリに言われたのは、その次の日だった。

「きっと、マリさんは昨日、絶対、今日には会うんだろうと思ってたよね」

「それはどうでしょうか」

 会ったのは、駅の屋根がなくなっていたところ、あの銅像の前だった。僕が帰るときに絶対通る道。それも僕が仕事を今日も早めに切り上げてまっすぐ帰ろうとしているところだった。

「待ってたのかい」

「いや、今さっき仕事が終わったところ」

「じゃあ、もうすぐ帰るところだったかい」

「そうね」

「じゃあ、運が良かった。自分はいつも帰る時間は不規則だからさ」

「でも、私がいるかもって、期待してこの時間にしてくれたんでしょ」

「そうかもしれないね」

 と、会話する。会って三日目だというのに、この会話の雰囲気が、ああ、いつもの感じだと、そう思えた。

「昨日は、私が食べたいものを食べたから、今日はあなたの好きなところで」

 と言われたので、蕎麦がいいと答える。

「和食派?」

「そうだね、どちらかというと」

「そうなんだ」

 マリは、ふうん、と口に出して言った。

「夕食なのに、蕎麦なんか食べたら寝る頃におなか減らないの」

「蕎麦だけなら、そうだね、減るけど」

「ま、そうよね」

「だから蕎麦屋な居酒屋に行こうと思うんだ、どうかな」

 なるほどね、と彼女は口に出して言って、

「いいよ、行ってみましょ」

 と同意する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る