第14話 ルサールカ
「♪~♪~~」
「あぁ~イイ!でありますぅ!堪らんでありますぅ!」
キッチンから美しいレッドキャップ君の歌声と、サラマンダー君の汚い声が聞こえてくる。
もうちょっと声のボリュームを落として頂けないだろうか。
「おい、ユート。いい匂いしてきたな!腹減ったぜ」
「おや、コカトリス君、お帰りなさい」
「いやぁ~最近運動さぼってたからいい機会だったべさ~」
「だな。動いてたら寒さも気にならなくなったしな!」
コカトリス君が帰ってきた。
その後ろには二人の妖精の姿が見える。
おや、彼らは…
「ガハハハ、今日は晩御飯をご馳走してくれるて聞いてねぇ。旦那と一緒に来たわよ、ガハハ」
「お邪魔しますケロ」
「あぁ、いらっしゃい。待っていたよ」
カエルの妖精のヴォジャノーイ君と、その奥さんのルサールカさんだ。
ちょっとぽっちゃりした見た目のルサールカさんは、ガハハと笑いながらリビングにやってきた。
彼女の名前はルサールカさん。東欧で水の中に住んでいた妖精でヴォジャノーイの奥さんだ。
伝承では歌や踊りで若い男を魅了し水中に引きずり込んでしまう妖精だけど、豊穣神としての一面も持っているらしい。
こういう所は神話や伝承の面白いところだ。
悪霊としての一面を持っているかと思えば、繁栄を司っていたりする。
逆に良い妖精なのに、残虐な一面を持っていたりすることもある。
このように多くの妖精は二面性のある姿で描かれている。
あくまで個人的な考えだけど、僕は妖精さんというのは自然そのものなんだと思っている。
この僕たちが生きている人間界の自然だって平気で人の命を奪うほどの猛威を振るう事もあれば恵みを与えてくれる。
それに限りなく近い存在が、彼らなのではないだろうか。
「あらやだわぁ、ユーちゃん。そんなにおばちゃんの事を見つめて、照れてしまうやないのぉ。ガハハ!」
あ、違うわ。このルサールカさんは単なるおばちゃんだわ。
ルサールカさんは大口を開けて笑っている。
「うちの妻は美人だからケロ~ユー君が見とれてしまうのも無理ないケロ」
ヴォジャノーイさんも満足そうに頷かないでください。
「ささ~みんな、お待たせ。唐揚げが出来たわよ~。シルキーちゃん、悪いんだけどスプリガンちゃんを起こしてきてくれる~?」
「わかったの~!」
「コカトリスちゃんはメロウちゃんを呼んできて~」
「あいよ!早く飯にしようぜ!」
さすが皆のお母さん役のレッドキャップ君だ。
家でレッドキャップ君に逆らうと美味しいご飯が食べれないので皆従順だ。
「ん~鶏肉かニャ。良いチョイスだニャ。褒めてつかわすニャ」
お、今までお散歩に行っていたケットシー君も帰ってきた。
「ガハハ、こりゃー賑やかな晩御飯になりそうやねぇ。おばちゃん嬉しいわぁ。ガハハ」
「ケロケロ~賑やかなのは楽しいケロね~。今度は他の皆も連れてくるケロ。みんなユー君に会いたがっていたケロ」
「あはは、じゃ~その時はもっと沢山食材を買ってこないとね。楽しみにしてるよ」
バキィ!
「うお、なんなのじゃ!?」
「キャー!スプリガンちゃんごめんなさいなの~!」
…シルキーさん、また何か壊したな?
「アヒィ…気持ちよかったでありますぅ…やっぱり唐揚げはキクでありますぅ…」
……サラマンダー君、キッチンでアヘるのは止めてくれないかな?
「…ユーちゃんも大変やねぇ。こんな濃いメンツに囲まれて。おばちゃんが慰めてあげよか?ガハハ」
「ケロケロケロ~いいかもしれないケロね~ケロケロケロ」
遠慮しておきます。あとお二人も十分に濃いですからね?
「ガハハ、これは一本取られたわ。おばちゃん、まいっちゃうよ。ガハハハ」
豪快で明るいルサールカさんの笑い声がリビングに響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます