なにもかも生贄に召喚するドラゴン

ちびまるフォイ

その力、人ならざるもの

「国際規定上、君自身に強大な力を与えることはできないが

 その代わりに強大な力を持つ私が力になってあげよう」


「ありがとう! ひいては魔王を倒すつもりだけど、

 ヒロインとキャッキャうふふするばかりで全然成長してなかったから助かる」


「今の私の力だけでも魔王を倒すことはできますよ」

「そんなに!?」


「お見せしましょう、私の力のすごさを」


ちょうどあつらえたようにこの近辺では強力な魔物が現れた。

並の冒険者ではとても歯が立たない。


「ほ、本当に大丈夫なのか? 手を貸そうか?」


「いいえ、問題ありません。いきますよ!」


男はなにやら呪文を唱えた後に叫んだ。


「メインヒロインを生贄に捧げ!

 ホワイトアイズブルードラゴンを召喚!!!」


メインヒロインが塵あくたとなった代わりに、強力なドラゴンが召喚された。


「ほころびのバーストストリーム!!!」


ドラゴンの熱線により魔物は消し炭になった。

男は勇者にほほええんだ。


「いかがですか?」


「いやいや!! ヒロイン消えちゃったじゃないか!!」


「私の力を使うには生贄が必要なんですよ」


「先に言えって!」


「強大な力を使うにはそれだけ代償が伴うのです」

「使いづれぇ!」


説教に夢中になっていた勇者だったが、

その後ろからまた新しい魔物が強襲を仕掛けてきた。


「あ! 危ない! 勇者さま!

 勇者の両親を生贄に! ホワイトアイズブルードラゴンを召喚!」


ドラゴンの攻撃で魔物は瞬殺されて事なきを得た。


「お前もうその能力使うな!」


「どうしてですか勇者さま!

 この世界を救えるのはあなたしかいない!

 あなたが死んでしまえばこの世界は終わってしまうんです!」


「お前がバンバン能力使って、結果的に世界を救っても

 救いたかったはずの人が誰もいなくなるわ!!」


勇者からの厳重注意もあり男は能力を封印して旅を続けた。

そしてついに迎えた最終決戦でもそれは同じだった。


「グハハハ。その程度か勇者よ。あまりに貧弱。

 我に挑んだことをあの世で悔いるが良い。ダークネス・フィアー!!」


「くっ……ここまでか……!」


死を覚悟した勇者だったが最大のピンチのときに男が禁断の力を解放した。


「私を生贄に! ホワイトアイズブルードラゴンを召喚!」


「なっ……なにを!?」


「ほころびのバーストストリーム!!!」


「グアアアア! バ、バカナァーーー!!」


魔王は消滅し世界に平和が訪れた。

廃墟となった魔王城に残ったのは勇者ただひとりだけだった。


「あいつ……」


もしもあの時ドラゴンが出ていなければ勇者が死んでいた。

そのことがわかっていながらも勇者は大切な仲間を失ったことに嘆いた。


「勝手なことしやがって……俺が救いたい人の中にはお前も含まれてたんだよ……」


多くの代償を経て世界は平和に包まれた。

が、勇者が故郷に戻ると何食わぬ顔で男が待っていた。


「あ、おかえりなさい。魔王倒せました?」


「え!? なんで生きているんだ!? 生贄になったはずだろ!?」


「生贄といっても死ぬわけではありません。墓地に送られるだけです」

「死んでるじゃん!!」


「墓地に転送されたので戻ってきました」


「え……それじゃこれまで生贄に捧げられた人も?」


「はい。もちろん」


「だからそういうことは先に言えって!!」


怒った勇者だったが心は温かい気持ちに包まれていた。


「でも死んでなくてよかった。

 世界を救ってもずっとこのことが心残りだったんだ」


「勇者さま、心配させてすみません。

 でもこれからは大丈夫です。もう生贄にしません」


「どういうこと?」


「実は、あれから自分の力を見つめ直して

 生贄を使わないように改良したんです」


「本当か! そのほうが良いよ!

 まだ世界には魔王の残党が残っている。その力を存分に生かしてくれ!」


「もちろ……あ! 勇者さま! 危ない!!」


油断していた勇者の背後から魔物が襲かかってきた!

男はすかさずドラゴンを召喚するために叫ぶ!



「勇者とドラゴンで融合召喚!

 ホワイトアイズブルードラゴン!!!」



自分の姿に戻ろうとするキメラ勇者により世界は再び混沌の時代を迎えた。

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