第8話「面接戦線異状アリ」

「は~あ……」


 ゆっくりと移りゆく田園風景を眺めつつ、俺はため息を吐いた。

 正面に目を向ければ、なんだかよく分からないオオサンショウウオみたいな生物がこちらに背を向け、俺のいる幌車を牽引している。


 竜車、というらしい。こちらの世界では馬の代わりに、マンダと呼ばれる水竜に車をひかせているのである。

 エメラルド色のぬめぬめしたその体は一見気持ち悪いが、「キュキュキュ!」という甲高い声で鳴く様は結構可愛らしく、そのつぶらな瞳も相まって王都周辺ではマスコット的な存在となっているようである。


 普段の俺ならこんな異世界感のある絵面にはテンションをぶち上げて楽しんでいただろうが、今は全くそんな気になれないのが痛いところだ。


 何せ俺氏、ベアードの試験で気を失ってしまったせいで、時間もないのにギルドの医務室で一夜を明かしてしまったのである。体は何とか動くようになったが、このまま仕事が見つからなければこれからただ毎日を無為に過ごして死んでいくのみ。浮かれている場合では全くない。


 ちなみに不合格の理由は「普通に死ぬから」だそうだ。まあ魔法一発撃ったら動けなくなる可能性があるんだもんな。ですよね~と言う他ない。


「……はあ」


 そしてベアードは本当に俺をひいきする気がないらしく、不合格理由だけを伝言で残し、起きた時にはもうどこかへと行ってしまっていた。相変わらずハードモードは継続中である。


 しかしそんな中、俺は打開策になりそうなものを一応見つけていた。

 ギルドでは窓口で受けれるもの以外にも、仕事があったのである。ギルドの端の端に小さな掲示板のようなものがあり、そこにいろいろな依頼が貼り付けてあったのだ。


 ただその依頼書は女王様の手紙と違い、ほとんど読むことができなかった。受付のお姉さんによると、文字は魔鋼紙にマナ文字(あの女王様の手紙の光る文字)というもので書かれていないと、他種族には読めないものらしい。


 依頼書はほとんど全てがただの紙──それも便所の紙かってくらいに薄汚れて黄ばんだような紙──ばかりだったが、俺はその中に一つ、綺麗な魔鋼紙に依頼が書かれているものを見つけた。


『娘の導師募集。勤務日数など応相談。住み込みも可。ご興味のある方は我が家にお越しください。即日で面接いたします。

                         レオナルド・マグナース』


 お姉さんによると、導師というのは貴族が子供にあてがう家庭教師のようなもの、とのことだった。

 さすがにこの世界に来たばかりの俺が勉強を教えるなんてことはできないが、倫理観的なものを教えるくらいなら俺でもできる。そう思い、俺は今そのマグナース邸に向かっているという訳だ。


 まあしかしそんなうまい具合の話が転がっているわけがないので、ほとんどダメ元だ。何かやらなきゃ30日後には死ぬんだから、止まっている訳にはいかないのである。


「ふえぇ……」


 と、そうしてまたしても勝手に漏れるキモいため息をしてしまうと、ついにそれを咎めるような声が近くで上がってしまった。


「ん、も~。さっきからなんなのさため息ばっかり~。せっかく気持ちよく寝てたのにさ~」


 そんなことを言いつつ自分も盛大なため息を吐いたのは、一人の女の子だった。


 滑らかそうな肌と、頬から顎にかけて少し丸みのある輪郭からすると、妹や女王様と同じで16、7歳程だろうか。ちゃんとクシを通せば女の子らしいキレイな髪になりそうだが、その鮮やかな水色のショートカットはところどころ端がハネていて、少し奔放な印象を受ける。


(あら~? この子も何となくさやちゃん……て言うか女王様に似てるなあ。この世界の女の子って皆こんなふうに可愛いんかな。胸はちょっとばかし控えめだけど……)


 たぶん王都から一緒だったはずだが、ずっと考え事をしていたせいでノーチェックだった。まさか女の子だったとは……。

 彼女は頭をさすりながら寝ぼけ眼をごしごし擦りつつ、周りを見渡した。

 ついまじまじと見てしまっていたせいで、そこで俺は彼女とカチリと目が合ってしまった。


「あ、君か~さっきのため息は~」


 スレンダーな体を猫のようにしならせつつ、彼女は俺ににじり寄って来た。

 スカウト風軽装服の半袖から伸びる手足は結構筋肉質だ。しかしあくまでも女の子らしさは失わない程度であり、思わずキモいデュフりが漏れてしまいそうになるくらいには好ましい塩梅である。


 見たところほとんど人間と変わらないように見えたが、耳の毛がふさふさしているので、おそらく彼女も亜人だ。

 少し垂れたその三角の耳と、大きなくりっとした瞳からして、やはり全体的にちょっと猫っぽい。


「ねえちょっと、聞いてる?」


 彼女はそのままずりずりと這いずるようにしてこちらに近づいてくると、いきなりずいと俺に顔を寄せた。


「ひえ!? な、何ですか?」


「何ですか? じゃないでしょ~。そんなに何度もため息しないでって言ってるの。こっちの気まで滅入っちゃうよ~。せっかく気持ちよく風に当たってたのにさ~」


 彼女はそう言いつつ、またも猫のような仕草でううんと伸びをする。


「て言うか、ここどこ? 何で君こんな何もないところに来たの? 何するつもり?」


「へっ?」


 突然おかしなことを聞かれ、思わず俺は気の抜けた返事をしてしまった。


「……あっ」


 彼女も自分が言った言葉のおかしさにすぐに気づいたのか、明らかにやっちまったみたいな顔をする。しかしすぐに「ま、いいか」と居直り、あぐらをかきつつ尻歩きで俺に身を寄せて来た。


「いっや~ごめんね~! いきなり意味わかんないよね~。実はあたし、ちょっと君に興味があって君を尾けてきたんだよね」


「え? 俺に興味? てか、何。尾けてきた? 俺を? わざわざ?」


 この無職童貞ドルオタデブに、こんな可愛い子がストーキングをかましたと? ホワイ? 普通逆じゃない?

 そうけげんな顔を返してみせると、彼女は苦笑交じりに笑って言った。


「いやさ、あのギルドでの君と拳聖との決闘をさ、あたしも見てたんだよ。それで今日たまたま君を見かけたから、どこ行くのかな~って思って、ついて来ちゃったって訳。まさかこんなに遠い場所にくるとは思ってなかったけどね~。ホント君、どこに行くつもりなの?」


 なるほど。あれを見てたのか。そこそこ派手な魔法をかましてしまったし、それが目に留まったということだろうか。


(やっぱりアレは目立ち過ぎたよなあ……)


 こういう人が今後も現れかねないし、これからはちょっと気をつけて行動した方がいいのかもしれん。


(……いや、それは少し早計ってもんか)


 『何者かになる』というミッションを達成するには、なるべく目立った方がいいのかもしれない。拳聖だの天災殺しだのは無理でも、目立つことによって何かしらの二つ名を得る可能性は大いにある。


 しかしこれについては、そもそもその判定はどうすればいいのかという問題が残る。

 仮に俺が何者かになれたとしても、俺はそれを確認する手段がないのである。俺ができるのはせいぜい、『30日を過ぎても生きているから、何者かになれたのだろう』という推定ぐらいのものだ。


 だがこれだと、次の俺の寿命が何日なのかが全くわからない。これじゃあこのミッションをクリアしたとしても、全く気が休まらない。最悪何者かになったとしても、一日しか寿命が伸びない可能性だって全然あるわけで。


 女王様に会いに行けばその辺りの問題は解決できそうだが、わざわざ俺と顔を合わせないように手紙で済ませている時点で、それも望み薄だ。そもそも女王様なんだし、簡単には会えないだろう。


 何で俺があんな強大な魔法を使えたのかも謎だし、はっきり言って問題は山積みだ。俺のない頭で考えるのには限界がある。正直頭が痛い。

 なぜただのドルオタ無職デブの俺がこんなことに……。せめてもっと主人公感のあるやつ召喚すればいいのに……。


「……おーい」


「はあ~……」


「おーい!」


「ぷご!?」 

 

 突如鼻を摘まれ、俺は思い切り豚声を上げてしまった。


「ふごご!? な、何を!?」


「何を、じゃないでしょ~。美少女が話しかけてるんだから無視しないでよ」


 と、やたらと俺に身を寄せたと思ったら、肩まで組んでくる始末。やたらとパーソナルスペースの狭い子である。

 いくらスレンダーな体型だと言っても、これだけ密着されたら当たるところは当たっている。THE・童貞には刺激が強いので離れていただきたぁい……。


「ご、ごめん! 全然聞いてなかった! 何?」


「んも~。こんな何もないところ来て何するの、って聞いたの~」


「あ、ああ! なるほどね! いや何するって程でもないんだけどね……」


 悪い子じゃなさそうだし、別にこれくらいは話してもいいか。

 俺はリュックをごそごそとやり、先刻一応コピっておいた紙を取り出した。


「はいこれ」


「? 何これ」


「ギルドにあった依頼を複写したやつだよ。今から俺、そこに面接に行くんだ」


 いささかけげんな顔をしつつ、彼女はそれをしげしげと眺める。


「……もしかしてこれ、掲示板にあった依頼?」


「そうだけど?」


「ふーん……」


 眉をひそめ、少し難しそうな顔をしつつ顎を撫でる。

 何か問題でもあるのだろうかと思ったが、彼女は意味深に口元をにやけさせながら俺の肩を引き寄せる。


「君、やっぱり面白いね」


 そこで彼女は俺からぱっと離れ、今度ははっきりニヒッと笑いながら言った。


「そう言えばまだ名乗ってなかったね。あたしはエクレア。君の名前は?」


「あ、うん。俺はタツキ。タツキ・オリベ」


「タツキ、ね。面白い響きの名前だね」


 彼女はそう言うと、なぜか少し眩しそうに目を細めて俺を見た。

 どちらかと言うと奔放そうな外見の彼女だが、こういう表情をすると途端に女の子らしさが増してドキリとさせられる。


 これはいい子と知り合えたかもなあ……とキモ笑顔を返す俺だったが、しかしここで急に、彼女が妙なことを言い出した。 


「せっかくだし、あたしもこの面接受けよーっと。ってことでしばらくよろしくね~!」


「えっ……」


 え、なぜに? 倍率上がるからやめて欲しいんだが……?







 程なくして、目的地に到着した。

 田園風景から森になり、その森を小一時間程行ったところにそれはあった。 

 マグナース邸。ファンタジー世界の貴族の家だからでかいのだろうと身構えてはいたのだが、それはそんな俺の予想をはるかに超えるものだった。


 狭い日本じゃ考えられない程の広大な土地の上に、巨大な邸宅が建っていた。門から百メートル以上はゆうに離れたところにやっと家があるという、なかなかにバカげた代物である。

 正直俺みたいなただのデブがいきなり来て入れてもらえるような場所じゃない。一応即日で面接するとは書いてあったけど、本当に大丈夫なのかこれ……?


 と、その大きな門の前でお上りさんのようにきょろきょろしていたところに、


「いらっしゃいませ」


「うわあっ!?」


「当家に何の御用でしょうか」


 突如として目の前に現れたのは、品のいい髭を生やした初老の男性だった。

 黒系のタキシードっぽい服をかっちりと着こなし、真っ直ぐと伸ばされた背すじが油断のなさを感じさせる、すこぶるカッコいいイケおじだ。


 白髪が混じってはいるが、少し硬そうなその灰色の髪のオールバックと意志の強そうな太眉により、年齢をほとんど感じさせない。180を越すだろうその身長も相まって、非常にエネルギッシュな印象を俺にびしびしと与えてくる。


 彼はそのすらりとした長身を折ると、ビビってその場に転んでしまった俺を覗き込んだ。

 

「マグナース家執事のバーンズと申します。驚かせてしまいましたかな?」


「あ、いえ。全然大丈夫です」


 と、尻をはたきながら立ち上がろうとすると、少し離れたところからまた声が掛かった。


「むぐむぐ……どしたの君? そんなところで尻もちなんかついちゃって」


 そう言いながら現れたのは、屋敷に到着してからなぜか姿が見えなくなっていたエクレアだった。

 手には何かの木の実が握られていて、彼女はしゃくしゃくと小気味のいい音をさせてそれにかぶりついていた。


 しかし俺の前に人がいるのを見つけると、「あ、やば」みたいな顔をしてさっとそれを後ろに隠した。

 え? まさかそれこの家の木になってたやつなの? これから面接だっていうのに、不用意過ぎひん?


「や、やーすみません。私達ここに仕事の面接に来た者なんですけど、今日って面接は……」


 きまずそうに下から伺うようにエクレアがそう問うと、バーンズさんは俺達にニコリとヒゲを上げて笑いかける。


「面接はいつでも開催されております。ご安心ください」


 それから特にエクレアを咎めることもせず、バーンズさんは俺達を中へ促した。 


「ではどうぞこちらへ」


「あ、はい。どうも」 


 エクレアは何もお咎めがないことに少し警戒してはいるようだったが、結局俺と連れ立って歩き出した。

 敷地内は道部分が綺麗な石で舗装され、適度にガーデニングなどもなされているという、いかにもな貴族らしい庭が広がっている。


 と、その整えられた庭をほえほえ感心しながら歩いていると、ふいにエクレアが俺に寄って来て、ぼそりと言った。


(ね、ねえ。バレてないのかな? あたしこのまま中入って大丈夫だと思う?)


(いやあ、さすがにバレてると思うけど……)


 逆にバレてなかったらザル過ぎるでしょ……。この人見た感じそんな無能執事には見えんし。


(え~どうしよう。せっかく君に恩を売るチャンスなのに~)


(いや~俺に恩を売ってもしょうがないと思うんだけどねえ……)


 聞けば、彼女による先刻の面接受ける宣言は、単に俺と何かしらの関係を結びたいがためにしたものだったらしい。

 つまりエクレアは別に本気で面接を受けたい訳じゃない。今回彼女は俺より先に面接を受け、この面接の情報を俺に渡して恩を売りたい、ということらしいのだ。


 そんなことができるなら俺も願ったり叶ったりだが、俺はちょっと強い魔法が撃てるだけの(しかも1発だけ)デブでしかないので、騙しているようで少し気が引けてしまう。俺はわざわざこんなとこにまで来て恩を売るに値するような人間じゃあない。


 彼女にやっぱりやめるように言おうか迷っていると、前を行く彼が背中越しに言った。


「お嬢様の導師就任への道、大変険しいかと思われますが、ご武運をお祈りしております」 


 ご武運とはまたずいぶんとおおげさな言葉だなあとは思ったが、「は、はあ。ありがとうございます」と、とりあえずお礼は言っておく。

 面接は受付から始まってるって言うからな。粗相がないように気をつけないと。 


「こちらです。どうぞお入りください」


 促され、大きく開け放たれた扉を入ると、だだっぴろい玄関ホールが目の前に現れた。

 質の良さそうな石床に、上等そうな絨毯が敷かれている。正面には高級ホテルのような大きな階段があり、2階へと続いている。奥はよく見えない。ただ、だだっ広いということだけはわかった。


 そして一際目を引くのが、その中央階段の上に備え付けられている巨大な剣だ。全長は見た感じ2、3メートル程。幅は……わからないが、20センチから30センチはあるように見える。

 武家のような家なのだろうか。さすがにあんなものを振り回せるのはクラ○ドかガッ○ぐらいのもんだし、おそらく飾りというか、この家の象徴みたいなものなんだろう。


(結構硬派な感じだな……やっぱり帰った方がいいんじゃないかこれ……)


 とは言え今回はもう中に入ってしまったし、案内されちゃってるし、ここから逃げるのもそれなりに勇気がいる。

 さてどうしようかと冷や汗を垂らしていると、執事のバーンズ氏があるドアの前で振り返り、小さな鐘のようなものをチリンチリンと鳴らした。


「ではこれより、面接の方を始めさせていただきたいと思います。順番等はこちらでは特に決めませんので、始めたい方からこちらの部屋にお入りください」


 え、もう? と思ってつい目を見開いてしまったら、バーンズさんがそれをすかさず察知し、説明してくれた。


「屋敷に来る方のほとんどは面接が目的ですので、竜車が到着した時点で旦那様には話を通してあります。ですのでこちらの準備は十全に整っております。ご心配なく」


 と、ホールに低いながらもよく通る声を発し、彼は軽く腰を折った。

 何ともまあ優秀な執事である。だてにイケおじじゃないな。仕事にぬかりがない。


 となれば、もう覚悟を決めて飛び込むしかないだろう。……でもその前に、エクレアを送り込んでちょっと様子見することにしよう! 面接は傾向と対策も大事だ。まずは彼女に情報を持ち帰ってもらうべきだ。


 俺が目配せすると、彼女はうんと頷き、勢いよく手を挙げた。


「はいはーい! じゃああたしからね~!」


 エクレアは元気にそう宣言すると、てってこてってこ両足を大げさに上げつつバーンズ氏の元へと歩いて行った。

 突如能天気に立候補した彼女にやや目を細めたように見えたが、ふむ、とかすかにヒゲを揺らすと、バーンズさんはエクレアを実に紳士的な所作で案内した。


「ではどうぞ。こちらです」


「よろしくお願いしま~す」


 二人がそうしてドアの向こうへと消えていくと、ホールにまた元の静けさが戻った。

 よし。とりあえずスパイを送ることには成功した。後は面接が終わった後、彼女が俺と接触できるかどうかだ。


(さて、しばらく待ちか。暇だな。どうするか。面接ってどれぐらいかかるんだろな。普通の企業とかだったらまあ20分くらいだと思うんだけど、はてさて)


 だだっ広いホールはいささか寒々しく、一人でぽつんといると少し寂しい気持ちになってくる。こんな広い屋敷なのに、人の気配のようなものも感じられない。使用人が少ない屋敷なのだろうか。

 誰もいないし、いっそのこと探検でもしてやろうかしら……。


 と、そんなことを思いながらうろうろとし始めた頃だった。

 突然ドーン! という重々しい音が、地響きと共に広いホールの中に響き渡った。


「な、何だぁ?」


 大砲でも撃ち込まれたのか? と周りを伺ってみたが、別段周囲に異状はない。

 もしかして外か? いや、この音の響き方からすると、中のようにも聞こえる。どっちだ? 外に逃げた方がいいのか? それともここにいた方が安全なのか?


 いろいろな可能性を頭の中でぐるぐる回していると、そこでふと、どこかからくぐもった声のようなものが聞こえて来た。


「……ぁぁぁぁああ」


 そしてその声が次第にはっきりしてきたかと思ったら、近くの壁に突如穴が空き、そこから勢いよく何かが飛び出して来た。


「んにゃあああああああああ!!」


「ひええっ!?」


 大きな影がごろごろと転がり出て、そのままホールの中央にある階段の縁にどかんとぶち当たる。


「……え!?」


 何ぞ猛獣でも飼ってたんかと恐る恐る首を伸ばしてみる。すると何と、それはホコリだらけのボロボロ大の字状態になり、すっかり目を回してノビている、エクレアだった。


 え? どしたんこれ。面接は……?


 

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