Scene 25

朝、部屋に日はまださしてこない。


横向きになった視界から見える部屋に何か違和感を感じた。

ミュペが昨日私にかけてくれたまどろみのまじないがまだ、目蓋についている。


ただ寝ぼけていたせいかもしれないと思った私は、そのまま二度寝しようとした矢先、ミュペに布団を取られた。


「寒い」


「ごめん」


(今日は……そっか、魔物退治の日か)


私は寝ぼけた状態でミュペに服を脱がされ着せられていき、そのまま担がれそうになったところでようやく目が覚めた。


「顔を洗いたいんだけど」


「できるだけ早くね……今は視界を立てる時さ」


ミュペの冷たい手が纏わりついたほてりを払う。


顔を洗い終わる頃には、冴えていた。







箒に乗る間、ミュペに渡されたパンを食べていた。


肉を挟んで、バターのようなものをたっぷりとつけたパン。


独特の香辛料が使われていて、甘辛い。


カレーのよう、というよりは、ファーストフード店のチキンの味付けのような、無国籍な味がした。







「手順は覚えてる?


キミの役割は……」


食べ終えると、ミュペが聞いてきた。


「川上からミュペと一緒に敵をかき乱すんだよね。


敵をおびき寄せるから、私の職業は『手品師』だよね」


「まあ大体はね。


金勢悪性――本当は『詐欺師』だけど」


「役割は分かったけど……職業って結局何?


属性はゲームとかで知ってるけど、善悪とかって」


「キミの生年月日、天の帝が書き連ねし星座、そして手相、地脈、活力の色……。


キミの未来も運命もわからない。


判断するということは過去を見ることで、知る事は今を感じることだから。


けれどキミの在り方を占う事はできる。


善でも悪でも、キミはこの世界の一員として存在しなきゃいけない。


そろそろ着くよ」

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