Scene 22

巨大な人形のみぞおちが割れて、王冠と台はバラバラになる。


ヒビは体中に広がる。


まるで陶器のようにそれは割れる。


白い光が、本のページのように裂けた。


屋敷はパラパラ、パラパラと崩れていく。


バタン。


全てが閉じた。


閉じ際に、ミュペは言う。


「キミの記憶も消える」


ミュペは私の顔を撫でて髪についた塵を払った。


そのとき・・・・が来たら、キミは思い出すだろう。


私は今、魔女として大切な力を失っているから、それがいつになるのかは分からない。


キミは私を嫌いになるかもしれない。


私への執着がなくなって、この物語が歩み始めるなら、それもいい。


いずれにせよ、今の私には分からない」


言葉の五割も理解できただろうか。


ミュペはそんなようなことを言う。


私の方はミュペの傷がどうなったのかが心配で、それどころではなかった。


しかしその事を考えようとすると、視界が暗くなるように、音が聞こえなくなるように、私と思考の間を阻むものがある。


触れてはいけない、秘密の領域。


私は阻害されていて。


でもそれが何故か、たまらなくドキドキして。


「ミュペ、私、なんだか眠い」


「キミは疲れているんだ。


ほら。


今にも眠くなってきた」


意識が遠のいていく。


私はまだ……。






いつかどこかで、声を聞いた。




また一人ぼっちにするの?


また私を引き離すの?


私を一人にしないで。


私を――忘れないで。

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