Scene 17
思わぬ間に、言葉が出てしまった。
人形はしばらく私の方を向いたまま表情を変えずにいたがどこかの一体が動く音がすると次々と私の方へ向かってきた。
「そんな訳ないわ」
ヌゼッテの声がした。
「そんな訳ない」
私は後退りしながら、人形たちに壁際に追い詰められていった。
「あなた嫌いよ」
ヌゼッテの声は周りの人形達の声に反響して、時間差でまた同じ言葉が繰り返されたようになった。
「あなた嫌い」
「あなた嫌い」
「あなた嫌い」
私の首を人形の冷たい手が絞めた。
か細い力が、どんどん強くなっていく。
私が悪いのかな。
外の人間なのに、他人の関係に口を出すなんて。
けど、でも、自分で言ったことだけれど、どうしてこの子達はミュペのことを信じてあげられないの?
私は腕を振り解いた。
走って、元来た道を戻る。
人形の群れをなんとかかき分ける。
暗闇の中。
私は闇の中をかける。
ひたすら元の道を探した。
何かあった時を見越して、通った場所は全て頭に叩き込んだつもりだ。
出たところをまっすぐ、部屋から出て左、廊下を突き進んで、何度も転びそうになりながら階下へ降りる。
ホールに。
けれど扉が、ひらかない。
不安定な足音は思ったより早く、二階から聞こえてきていた。
両脇に廊下があった。
私は取り敢えず左に進む。
突き当たりにぶつかった。
ドアの向こうには、客間だろうか、本棚と、椅子のある少し広い部屋。
椅子を動かして申し訳程度のバリケードのようなものを作る。
隠れようとは思わない。
開かない硝子窓があった。
一か八か、私は窓にパンチする。
窓はびくともしない。
そうこうしているうちにドアノブが動く。
何か使えるものはないか――。
椅子を持ち上げて戦おうかと考えた時、この部屋に妙な違和感を覚えた。
二つの本棚は、片方の本棚に無造作に積まれている本は薄明かりの中に見ても黒ずんで、古いもののように見える。
もう片方にきれいに隙間なく並んでいるものは、本に記された金の文字が(読めないけれども)掠れることなく、一度も手に持ったこともないかのように、綺麗だった。
――どんな変化も見逃さないように。
私はその本棚を動かす。
横に引こうとすると、何やら動く気配がある。
後ろに引いてみた。
きれいな本が並べられた本棚は扉が開くように、容易に内側に開いた。
私は中へ進むと、隠し扉の後ろについていたドアノブを内側に引いて、通路の入り口を閉めた。
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