Scene 14

透明な水の中をさらさらと漂う。


私は揺るがない。


水流が、自然と私の体を動かしていく。


私は岸に流れ着いた。


目を開ければ、横になった視界に砂浜が広がる。


前とは違う場所……砂が、水でできていた。


プラネタリウムのような星空が広がる。


夜の空気と匂い、月のない月光に光る蛾が、目の前を横切っていた。


振り向けば林が広がる。


遥か向こうの海を見渡しても、湯船は見えない。


「どこ、ここ……?」


私は一人になった。








数時間待っても助けが来なかったので、林に分け入って何か探すことにする。


身体にバスローブのようなものを身につけていたが、濡れたままで、薄ら寒い。


ヤブカに刺されやしないかと思いもしたけれど、何かして体を温めたかった。


水の砂を固めて靴を作ったので、石や折れた木で足を怪我する心配はなかった。


蚊はいない。


カエルが鳴いていた。


魔女が風呂場に浮かべるのだろうか、などと思う。


触ると月の影とともに消えてしまう。


抵抗はない。


小さい頃はよく触ってたし、何よりそのカエルは生きているというよりは、映された影のようなものだと思ったから。


けれど私はそこで目を逸らした。


私は何かを追い求めていた。


途中で喉が渇いたから、その辺の砂をすくって飲もうとしたけれど、ばい菌がいたら怖いなと思って、まずは火を起こそうとする。


木は――ああ、お風呂に浮かべるやつかな。


柑橘類らしい実がなっている。


あと金属が二種類あれば電池でも作れて火が起こせるだろうか。


そう金属は酸性に溶けたり酸化したりするので電子が移動するから電気が起こって、それをショートさせれば火が起こせる算段だ。


ところで電池で火を起こすってどうやるんだろう。


ああ、考えが逸れて、止まる。


考えが止まる理由はわかっていた。


こんな事をしてる場合じゃないのに。


私はミュペが怖くて、逃げたくて、気を紛らわそうとしている。


鍵で道が開けた今、後戻りできない今、私はミュペの真意を知りたい。


カエルがまた横でケーロケーロと鳴いている。


色々な現象から目を逸らさないでいよう。


カエルにまた、触る。


霧になって、微風に流れていった。


微風を追えば、月のない月明かり、影が、星空に浮かんで、館が、その輪郭だけをほの青く光らせていた。

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