Scene 12
「じゃあもう帰るよ。
キミが居ない時にまた来るから」
ミュペはそう言って入り口のドアから外へ出ようとする。
ミレがまた、私に近寄ってきた。
この前ミュペに戦いを仕掛けてきたこともあって、私はこの子が苦手だ。
「あの子、あなたに何か隠してるわ。
これを持ってなさい」
この前のように私の視界に入り込んで、小さな声で小さな鍵を渡してきた。
それらはあまりに小さな瞬間でのことだったので、呆然としていると、ミュペが私の手を引いてきた。
「さあ、帰ろう。
ミレはお人好しだよ」
「別に、あなたのためじゃないわよ。
私が気分悪いだけだわ」
まだ夕陽が差していた。
空を飛ぶ。
「ミュペ」
「何」
「もしかして、私のせいで帰ることになったとか?」
「気にしなくていい」
夕焼けのように暗い調子だった。
ミュペのしている隠し事とはなんだろう。
私は鍵を手の中で弄ぶ。
もしかしたら私を元の世界に返してくれるのかも、と、淡い期待を抱いている自分がいる半面、悪魔の生贄にされたりとかしたら嫌だな、とも思う。
優しそうだし、今のうちに媚を売っておいた方がいいのかな。
そう思った時、
「美夜」
「何?」
「信じてくれたら嬉しい。
絶対にキミを見捨てたりしないし、酷い目に合わせたりもしないから」
「うん」
その言葉を聞いても、私は身体が強張ったままだった。
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