第8話 身内の黒歴史ほど悶絶したくなるものはありません(駄運世襲)

 う、うううっ・・・酷い目に遭った。。。

 あの幼女、僕を殺す気かよまったく。レディだ何だかんだ言ってたけど、まずは目上への礼儀だとか、人ってかドラゴンに対しての態度とかちゃんと学ぶべきじゃなかろうか?まぁでもまだまだお子様だし、ここは僕がちゃんと教育してあげないといけないな!

 これでもお子様の対応は心得ているのです。実は僕には年の近い妹が居るのですが、そいつがまた手のかかる子で良く説教とかをしてやったものです。・・・ふむぅ。何だか今ゾクっとしましたが気のせいでしょう。。。と、取り合えず!今後は僕に対しての態度を改めさせるようにちゃんと物申さなきゃね!!

 と今後どうやって改善要求を突きつけるか、勤務時間は何時まででちゃんと労働基準を順法しているのか、衣食住は保障されるのか、あの調教スキルの発動回数制限を設けるべきでは無いか、いやむしろ道徳的に禁止にすべきでは無いのか。

 と明らかに雇用される側の立場で考えて居る自分に目を逸らしつつ、今後この世界で生活するためには、文字通り死活問題となりうるので、必死に考えを巡らせていると。。。


「くふっ。くぷふっ。くぷぅにゃは、にゃあはははははははははははははははッ!!」


 んんん?なになに??何処からとも無く笑い声が・・・って、今気づいたけどここドコ?!!

 あの幼女さんをどうだまk・・説得しようかと考えるばかりで、周りの状況を確認してなかったみたい。てへぺろぉ♪

 んーとよく周囲を確認してみると、いつの間にか石畳の上に居るみたい。道理でちと硬いとこに寝転んでるなぁと思ったよ。また何処かのまな板の上にでも居るのかと思ってた。あははっ・・・・ってハッ!魂に刻まれた刻印はどうした!!ぐぬぅ、まだ彫りが甘かったみたいだ。ちゃんと彫ってないとまたあの読心術使いにお仕置きされちゃうよ。。。


 うんしょうんしょ・・・


『ヒンヌゥー教に触るべからず』


 宗教って怖いよね??


「ぐぱっ!ぐにゃあははははははッ!!ヤメテにゃ!これ以上笑い殺さにゃいで!!!ぐにゃあはははははははっ!!」


 ん、誰か知らないけど、笑いの沸点が低いんじゃありません?本場のお笑いを体験したら本当に死んじゃうよ?もう少し耐性を付けた方が良いと優しいお兄さんが忠告したいと思います。


「ヒィ、ひぃ、ふぅ・・・にゃははっ。君ホント面白いにゃね?この状況でちゃんと周りを確認せず、ここまでふざけた事考えてる子、君が初めてにゃよ?」


 何だか失礼なことを言われてる気がするけど、取り合えず言われた通りもう一度、周りをよく確認してみると、そこにはやっぱり石畳が敷き詰められていて・・・ってあれ?よく見たら少し離れたとこに、この石畳の場所には似合わない、文明の利器に代表される炬燵こたつさんが・・・ぇっ?炬燵?!なんでこの世界に炬燵こたつがッ!?

 ハッ!もしかしてここはあの世?って事は僕死んだんです??・・・ってかあの幼女ついにやりやがったか!いつかこんな日が来るんじゃ無いかと思ってたけど、まさか出会って初日で殺人・・殺竜をやらかすとはな!!

 ん、まぁでも許してやんよぉ。幼いお子様がやらかした事だし、自分も少しは悪かった気もしなくも無くも・・・って殺されるほど酷い事したかな?確かに次言ったらコロスとか言われたけどさ。ふむぅ。即有言実行とは・・・あの幼女様末恐ろしいな。。。


「にゃあはははははははははっ!!どんだけだにゃ?!全然話が進まないにゃよ!!やっぱりあの子達の子供だけあるにゃ!?にゃあはははははは・・・」


 ん?あの子達の子供??どういう事??・・・ってよく見たら、炬燵の方に人影が・・・ひとか・・げ?

 あれれ?眼がおかしくなったのかな?炬燵の天板を叩き割る勢いでこぶし?いや前足??を打ち付けている・・・


 ・・・お猫様がそこに居ました。


 な、なんで猫ッ?!ってかさっきからめっさ喋ってるんだけど・・・ってまぁベビードラゴンな僕が人の事言えないんですが。。。

 いやいやいやでも普通猫喋んないでしょ!だってこの世界が幾ら異世界なファンタジーだとは云え、リーファと町中歩いてた時、普通に野良猫ぽぃのが居たけど「ニャー」って鳴いてたもの。ぇっ?もしかして猫みたいな魔物とか??そう言えばよく見たら、普通の猫よりはひと回り大きくて、某ゲームの魔物狩って美味しく焼けましたぁ♪に出てくるマスコットみたいな体型かも。

 ぁ、でも僕的には、こっちの方が可愛いかな?実際生で見てるからなのかもだけど、サラッとした艶めかしい毛並みでついついさわさわしたくなる感じだし、あと多分だけど三毛猫だよね?茶と白と黒のぶちが可愛らしいアクセントになってて、とてもキュートかと思います!はい、先生は猫派です!!


「ニャ!魔物と一緒にして欲しくないにゃ!!ん、でも毛並みの事を褒めてくれてありがとにゃ!とっても嬉しいにゃよ・・・にゃへへへっ♪」


 ・・・・照れてる感じもすんごくかわかわ・・・アカンこの子欲しい!!


「ニャ!!きゅ、急に求愛されても困るにゃ・・・だってウチわにゃ・・・ってそうじゃないにゃ!!そろそろ本題に入るにゃよ!!」


 ぁ、はい。スミマセン。。。にゃんこに怒られてしまいました(´・ω・`)


「べ、別に怒ってるわけじゃないにゃ・・・あとにゃんこじゃないにゃ!ま、まぁ確かに君が居た世界の猫みたいな見た目だけど・・・ってそうじゃなくてにゃ!ウチには、ポチって言うちゃんとした名前があるのにゃ!!」


 おっとド定番の名前が出てしまいました。それにしても何故ににゃんこなのにポチなの?そこは普通にタマじゃないの?


「ニャ!ポチはポチなのにゃ!!あとこの名前は君の母親が付けたものにゃよ!!」


 ぇっ?そうなの??でもなんでポチなんだろう?ってまぁ母さんだし、仕方がないn.....ってぇええええええなんで母さんが!?


「そうにゃよ。ウチには本当の名前があるのにゃけど、長ったらしいからってポチって短くされたのにゃ。ちなみに本名は、ポルス・チレネ・ヒュペリー・ケリドゥ・ウルスラ・ノルン・ヘーr・・・・・」


 うわっ、ホント長ッ!?ってそうじゃないよ!なんでそこで母さんが出てくるの!?


「んにゃ?にゃんでもにゃにも・・・知り合いにゃんだから当たり前にゃ?」


 何言ってるの?みたいな顔されても・・・って、し、知り合い?なんでさ!ここ異世界でしょ!!それでなんで母さんと知り合うんだよ!?


「ん?んにゃ?聞かされてないのかにゃ?んにゃぁー酷いにゃキョオコ・・・でもまぁキョオコだし仕方にゃいのかもにゃ。。。」


 にゃんこにも仕方の無い呼ばわりされる僕の母こと、竜ヶ峰 景織子|(りゅうがみね きょおこ)、ピー歳・・・あれ?ピー歳・・・ぉ、おー何故か年齢が言えない仕様に。なんですコレ?


「んにゃ?・・・んーこれはキョオコが妨害してるみたいにゃね。そっちの世界ではどうにゃのか分からにゃいけど、こっちの世界はある程度は自由に干渉出来るからにゃ。それでNGワードでも指定してたんじゃにゃいかにゃ?」


 な、なるほど・・・ワカラン。何故に僕の母さんがこの世界に干渉する力を有しているのかがまずワカラン。ぇっ、なに僕の母、もしかしてこの世界の神様とか言うんです??


「んにゃにゃ。そう云う事じゃないにゃ。昔、この世界で勇者してたのにゃ。んにゃー懐かしいのにゃぁー。キョオコは元気にゃ?」


 ぁ、はい。それはもう元気過ぎて何度も警察にお世話になるぐらいには・・・って、今、なんて言いました?


「んにゃ?にゃから勇者をしてたのにゃ。あの頃のキョオコは凄かったにゃよ?そりゃもう神々にも畏れられたぐらいにゃ!」


 ぇええええええ?!勇者って何!?一体何してるんだよ母さん!!ってか昔っていつの話!?もう急展開過ぎて訳が分からないよ!!(ネタどころじゃない!!)


「にゃははは。本当に凄くてカッコ良かったにゃよ・・・んにゃぁーまた一緒に旅がしてみたいにゃぁー」


 とどこか寂しそうに追憶に耽る姿は、何とも言えないもので、ついついこの状況も忘れて抱きしめたくなる衝動に駆られました。


「んにゃにゃ!またそう言う事言うにゃ!?ほ、本気にしちゃうにゃよ?・・・ってかにゃ、そろそろちゃんとお喋りするにゃよ!」


 ん?お喋りってさっきからちゃんとしてるじゃないか・・・ってぁああ!!


「ちょ!お前も読心術者かぁああああああああああああああああああ?!!」


「ニャニャ!!急に怒鳴らないで欲しいにゃ!!!そ、それと仕方にゃいにゃよ!この場所に招かれた魂は、ウチに隠し事が出来ない様に心の声が聞こえるようになってるのにゃ!!」


「ぇーでもそう言うのは事前に言って欲しいと言うか、勝手に人の心を読むのは本当にいけない事なんですよ?どれだけそれで苦労したことか!?」


「ぁ、ごめんなさいにゃ。。。確かにそれは不躾だったにゃ。この場所に来る魂は、基本次の転生のための選別が主な事だからにゃ、ついついそれで通してしまったのにゃ。。。ごめんにゃ。今からは読まない様にするにゃ!」


 そうそう分かれば良いのですよ・・・ふふっこれでこのにゃんこの恥ずかしい姿とか思い浮かべる事が出来る!?


「ニャ!それはどうい事にゃ!?は、恥ずかしい姿ってなんなのにゃ!!ひ、酷いにゃ!それはあんまりにゃ!!?」


「まだ読心してるやないかぁああああああい!!」


「ニャニャ!!してやられたのにゃ!?この子策士にゃ!流石はキョオコの子供だけあるのにゃ!!」


 と戦慄な表情をするもどこか嬉しそうな顔をしているにゃんこを見ると、何だかむず痒い感覚を覚えた。

 ん、これはあれだな。親戚の寄り合いの時に「あらぁ?やっぱり景織子きょおこちゃんの子供ね!景織子きょおこちゃんが高校生の頃もそれやってたわよ?うふふっ懐かしいわ」と親戚のお姉さんに言われた時の感じだ。。。あとちなみにだが、その時僕がしていたのは、当時テレビ番組で放送してた戦隊ものシリーズのヒーローが使ってたおもちゃの剣を振り回して、チャンバラごっこをしていたのだ。。。僕が小学校入学前の話だけど。。。

 ん、そうか。多分ってか絶対そうだけど。高校へ入学する前にこっちに来たんだな。それで戦闘の癖が抜け切らなくって、ついつい素振りとかしてたんだよ。やっと長年の謎と言うか忘れたい記憶の答えが分かった。ぅんぅん、絶対にそうに違いない。。。そうだと言って!母さん!!


 なんだかサムズアップしている母さんの幻影が見えた気がした。。。マジ頼むよ!!


「にゃははっ。一本取られたにゃ。んにゃ今からは本当に心を読まないから安心してにゃ?ぁ、あと出来れば恥ずかしい事とか考えないでくれると嬉しいにゃよ・・・で、でも少しぐらいなら良いけどにゃ?」


「大丈夫安心してよ、冗談だからさ!でも本当に勝手に心を読むのはダメだからね?今度から一言下さい」


「ぁ、そ、そうにゃね、分かってたにゃ!・・・そ、そうにゃ冗談なのにゃ・・・冗談だったのかにゃ。。。」


 またどこか寂しそうな感じを漂わせたにゃんこ。最近・・と言うか随分の事、母さんには逢えてないのかも。やっぱり異世界だとそうそう簡単には行き来出来ないのかも知れないな。


「そ、そうだ!そう言えば此処はどこなの?あと転生の時の選別とか魂とか言ってたけど、やっぱり僕、死んじゃったの?」


 暗い雰囲気を払拭しようと、気になった事とも併せて明るく聞いてみた・・・って死んだかどうかの話って明るい話と言えるのかははなはだ疑問ですが。


 対人スキルが欲しい!!カモン!コミュニケーション!!君に決めた!?


「んにゃ。そうじゃないにゃ。君はまだ生きてるにゃよ?」


「ぇっ?そうなの??じゃなんで僕此処に居るのかな??」


「んーとにゃ。君に用と言うか、事後報告と言うか忠告と言うか、挨拶をしたかったのにゃ」


「ぁ、そうなんですか。それはご丁寧にどうも・・・・」


「にゃはは!キョオコの子供にしては、礼儀を知ってるにゃね!!」


 ・・・これでも結構礼儀知らずって言われる方なんですが。。。母さんホントここで何してたの?!!


「まぁ取り合えずここまで来るにゃ!ほらほら炬燵に入るにゃよ!!色々と話したい事もあるから、ごめんにゃけど長話に付き合って貰うにゃ!!」


 と誘われるままに近づいて、炬燵に入る僕・・・ぁあぬくい。先程までも別段寒かったわけじゃないけど、この炬燵に入った瞬間、まるで縁側で日向ぼっこをしているような、体の芯と心の奥底までじんわりと温めてくれる様な、そんなとても暖かくて温かいこれぞ炬燵の魔の魅力・・・人をダメにするものにゃのにゃぁー。とついついテーブルに顔を突っ伏してしまいました。


「にゃははは。気に入って貰えて良かったにゃ!このキョオコ式・人生棄てたくなきゃ入るべからず。ダメ絶対!!@推奨位階値S以上【改】は、ウチの宝具の中でも最上級のアーティファクトなのにゃ!自慢の一品にゃよ!?にゃははは!!」


 また母さんか!ホント何なんだよ!!もう僕じゃなくて母さんがここに来るべきじゃないの!?もう嫌(つд⊂)

 と身内の不祥事を目の当たりにして悶絶したくなる気持ちで吐きそうになって来ました。。。ハッ!そうなると父さんはどうなるの・・・まさか!?

 す、すんごく聞くのが怖いですが、確認しなければ夜も寝られそうにも無いというか、身構える準備が出来た今ならまだ身内の恥というダイナマイトでも受け入れる事が出来るはず!


「あ、あのぉーもしかして、いやもしかしなくても父もこちらに?」


 来てないって言って!お願いだからまだあちらの世界で普通に母さんと出会って結婚したって言って!!

 と虚しくも懇願する想いで問うてみたら。。。


「・・・・糞野郎なんて知らないし、知りたくも無いし、死ねば良いと思う・・・・」


 ・・・と予想の斜め上の辛辣なお言葉を頂きました。。。母さんと違った意味で何をしたの父さん!?

 あの可愛らしい語尾が無くなって、先程までの快活そうな笑顔も鳴りを潜め、無表情に酷薄な事を言うにゃんこの姿は、その愛くるしい見た目に反して凄まじい負のオーラを放っていた。。。これが霊圧か!!?って冗談言って無いで、何をしたのか聞き出さなきゃ!場合によっては身内として不肖父さんの息子として弁明も辞さない!一応あれでも父親なので。家族を大事にしない子はダメなんだからね?


「あ、あのぉーにゃんこさん?父が何か仕出かしたのでしょうか?もし仕出かしていたのでしたら大変申し訳ありません!!」


 と土下座をする勢いで捲くし立てると。


「・・・・大丈夫にゃ。君が謝る事じゃないにゃ。ん、ホント気にしないでにゃ・・・正直記憶の一片ですら思い出したくも無いにゃ」


 ・・・・根深過ぎて僕じゃ狩れない!?

 ごめん父さん。もしいつの日か、父さんとこのにゃんこが対峙する時があったら、僕は率先してこのにゃんこの味方をしたいと思います!!

 だって!こんなめっちゃ可愛らしいにゃんこをこんな沈痛な顔をさせる様な事を仕出かした奴の味方なぞ出来ぬ!!・・・惜しい人を亡くした。


 曇天に静かに笑う父の姿を思い浮かべて・・・・~fin~


「それよりもにゃ!ウチの事は『ポチ』って呼んで欲しいにゃ!にゃんこじゃ嫌にゃ!!」


「ぁ、ごめんなさい。ぇっと・・・ポチさん?」


 一応両親と知り合いみたいだし、それと明らかに年長者の様な雰囲気がうかがえたので、今更だけど改めて少し畏まってみる。


「にゃにゃ、それじゃダメにゃ!そのままポチって呼んでにゃ!!ウチに畏まらなくて良いにゃよ!そんな寂しい事して欲しくないにゃ.....」


 猫耳を垂れた姿に思わずキュンとしちゃいましたが、こう言われちゃ仕方が無いってものです。


「ん。じゃ今からポチって呼ぶね?」


「んにゃ!それでお願いするにゃ!!」


 と満面の笑顔で嬉しそうな姿はとっても可愛らしくて、どんな時でも味方になってあげたくなる・・・


 守りたい!この笑顔!?

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