第325話:情報の整理

 王城を後にすると、外ではリリーナたちが待っていてくれた。


「アル様!」

「大丈夫だったかい、アル?」


 真っ先に声を掛けてきたリリーナに笑みを返し、次いでアミルダが確認を取って来た。


「はい、大丈夫ですよ。ただ、ちょっとだけ面倒事を引き受ける事になりましたけど」

「それは大丈夫とは言わないんじゃないかしら?」

「まあ、冒険者としての仕事になるから面倒も仕方ないかと」

「それって、カーザリア周辺の魔獣の事かしら?」

「知っていたんですか、ヴォレスト先生?」


 リルレイから直接話を聞いたアルだったが、魔獣の噂は冒険者だけではなく住民にも広がっている。

 その情報がアミルダの耳に入るのも当然と言えるだろう。


「それで、アルは退治に協力すると?」

「そうなりますね。前にギルマスと話をしたと言っていたでしょう? その時に頼まれていたんですよ」

「はあっ!? こっちは魔法競技会に参加している学生だってのに、そこにお願いとか何を考えているのか知らねえ!!」

「まぁまぁ。俺もちゃんと弁えてましたから」


 両部門に参加する事もあり、魔法競技会が終わってなお解決していなければ力を貸すという条件付きで話をつけていた。

 そして、こちらの条件を満たしてなお解決していない事をランドルフから聞いている。


「と言うわけで、王家でも苦労しているみたいなんですよ」

「だからと言って学生のアルに頼むだなんて……」

「アルにならできるわ」

「アル君だもんね~」

「アルだもんねぇ」

「アル君なら大丈夫!」

「……あなたたちねぇ」


 怒りの声をあげたアミルダだったが、そこへ諦めにも近い声でシエラ、ジャミール、フレイア、ラーミアが順に呟いていく。

 リリーナも口にはしていないがアルなら討伐できると信じているのか笑みを浮かべていた。


「……はぁ。でも、一人では行かせないわよ? 私も――」

「ヴォレスト先生には他の生徒たちを監督する必要があるでしょう?」

「なら私が――」

「スプラウスト先生も同じです」

「「……じゃあどうするのよ!」」

「私が行くわ」

「僕が行くよ~」

「「ダメに決まっているでしょうが!」」


 アルとしては一人でも十分だと思っているのだが、先生である二人の承諾を得るにはどうするべきかと考えてしまう。


「……あのー、冒険者ギルドで仲間を募れば良いのではないですか?」


 おずおずと手を上げたリリーナの提案が一番現実的かと思ったが、それをアルは拒否した。


「ダメだろうな」

「どうしてですか? 王都の冒険者ギルドなら、ランクの高い冒険者もいると思うのですが?」

「そのはずなんだが、それでも魔獣には手を焼いているわけだろう?」

「……やっぱり私たちが同行するべきじゃないかしら?」

「だよね~。僕たちならアル君と連携も取れるもんね~。安心できるんじゃないかな~」


 これ見よがしに安全になると口にするシエラとジャミールにアミルダはどうするべきか悩んでしまう。


「……うー……うー……分かったわ!」

「「それじゃあ――」」

「ペリナ! 後は任せたわよ!」

「……はああああぁぁっ!?」

「アル! シエラ! ジャミール! このまま冒険者ギルドへ行くわよ!」

「「「……はい?」」」

「私がギルマスに話を付けてくるわ!」

「あ、あの、ヴォレスト先生? なんの話を付けるんですか?」


 話の流れが全く掴めずに困惑するアルたちだったが、アミルダの暴走は止まらない。


「もちろん、私の同行についてよ! 私は学園長よ! 学生が危険な場所に赴こうとしているのだから同行するのは当然! だからリリーナたちはペリナに任せる!」

「ちょっとアミルダ先輩! だったら私が同行するので先輩が残って――」

「学園長権限よ!」

「酷い!」

「あ、あのー? ヴォレスト先生がついてくるのも必要ないんですけどー?」

「ダメよ! 何かあったら私の首が飛ぶんだからね!」

「あ、そっちですか」

「――僕たちもついていこうか?」


 そこに突然声が掛けられ振り返ると、そこには見知った面々が立っていた。

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