第319話:パーティ部門・決勝戦⑧

 後衛同士の戦いでは圧倒的にユージュラッド魔法学園側が優勢に立っていた。

 イフリートの炎が舞台上を支配している状況を抑えることができず、フォンに続いてミラが倒された。さらにルグも闇魔法でほぼ封じ込められている状況であり、万事休すと言っていいだろう。

 現状は自分たちを守るので精一杯問う状況だが、冷静に戦況を見ていたルカだけはまだチャンスがあると確信していた。


「もう少しだけ耐えてください、アスカさん!」

「耐えてるわよ! でも……そろそろ、限界じゃないかしら!」

「それでも耐えるんです! 限界なのは――あちらも一緒ですから!」


 ルカは目を見開いてずっとフレイアの様子を観察していた。

 ラグナリオン魔法学園の生徒たちは魔力操作に非常に長けている。とりわけシンは全ての面で他の生徒を凌駕している。

 しかし、次に長けている者はと彼らに聞けば、全員がルカと答えるだろう。


「……くっ!」


 そして、ルカの見立て通りに苦悶の表情を浮かべて苦しそうな声を漏らしたフレイア。

 レッドバイトは火属性の威力を大きく引き上げてくれる半面、制御の難しさに加えて大量の魔力が必要になってしまう。

 ジャミールが倒れた今、ここで自分が倒れるわけにはいかないと唇を噛みながら耐えていたこともあり噛み切っている。

 しかし、気合いだけでは耐えられないものも当然出てきてしまう。


「……かはっ!?」

「フレイアさん!」


 限界まで魔力をレッドバイトに注ぎ込んだ反動がフレイアの体に襲い掛かる。

 体から力が抜け、喉奥から真っ赤な血を吐き出して舞台が染まる。


「今です! アスカさん!」

「よっしゃああああああああっ!!」


 土魔法のレベル4魔法であるアースクエイク。

 広域魔法であるアースクエイクを放った事で舞台の大半を破壊しながら捲れ上がる瓦礫や土砂がリリーナとフレイアへと迫る。


(どうしたらいいの? ツリースパイラルで壁を作る? それとも他の魔法で……ダメ、防ぎ切れない! このままじゃ――)

「後は任せたわよ、リリーナ!」

「え――きゃあっ!?」


 よろよろと立ち上がったフレイアの言葉が聞こえたのとほぼ同時に、リリーナの体が爆発によって吹き飛ばされる。体にダメージはあるものの致命傷になるほどではない。

 そして、リリーナはアースクエイクの範囲外で立ち上がった。


「フレイアさん!」


 ――ドゴゴゴゴオオォォッ!


 大量の瓦礫や土砂が降り注ぎ、フレイアは埋められてしまう。

 その様子を間近で見ていたリリーナの思考は一瞬だが途切れてしまったが、自然と右手に握る魔法装具をギュッと握る。


「ちっ! 一人逃がしたわ!」

「ですが、レベル4の相手を倒す事はできました。もう一人の方を倒すのは簡単に――きゃあっ!」

「ルカ!」


 思考は止まってしまったが、リリーナの体はダンジョンで得た経験から自然と魔法を放っていた。

 レベル1のウッドロープだったが、魔法装具によって移動速度は飛躍的に向上しており、魔力操作も相まってレベル3にも劣らない万能性を誇っている。

 舞台が砕けて地面がむき出しになった事もあり、リリーナは相手が気づけない程に深くまでウッドロープを伸ばし、そしてルカを捕らえた。


「くそっ! やられる前にやってやる!」

「ツリープリズン」

「させる――くわあっ!?」

「ア……アスカ、さん!」


 魔法を発動させようとしたアスカを捕らえたのは木の檻であり、レベル4のツリープリズン。

 捕らえた者の魔力操作を阻害し、魔法を使い辛くさせる。

 魔力操作に長けていればそれでも魔法を使えるのだが、それでも威力は格段に低くなってしまう。


「な、なんでレベル4の魔法が、使えるのよ!」

「……すみま、せん……私の……見立て……が…………」

「ルカ! くそったれがああああぁぁっ!!」


 もう一度アースクエイクを放とうとしたアスカだったが、魔力操作を阻害されてしまい発動にすら至らない。レベルの高い魔法程、発動が難しくなっていた。


「……くっ! あんた……さっきから何をしているのよ――ルグウウウウゥゥッ!!」


 アスカの叫び声がルグに届いたのかどうかは分からない。

 何故なら、アスカも無理に魔法を使おうとして魔力を枯渇させてしまい意識を失ってしまったから。

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