第314話:パーティ部門・決勝戦③
アルとシンがぶつかり合う少し前、前衛同士の激突の場面。
ジャミールはルグとフォンの二人を前にやや防戦に回っていた。
「前衛の四人、全員が武術の心得を持っているんだね~」
「その剣、ぶち折ってやるぜ!」
「その前に僕が打ち抜きますよ!」
ルグが振るうのは大剣型の魔法装具。
フォンが振り回すのは棍型の魔法装具。
大振りのルグの隙をカバーするようにフォンが鋭い突きを放つ。
初見であるが故に観察しながらの攻防になっているが、ジャミールも全てを受け流せているわけではない。
薄皮一枚を切られ、痣を作り、冷汗が常に噴き出している。
少しでも見誤れば一気に倒されると理解しているからこそ、集中力を途切れさせることなく冷静に動きを観察していた。
「フレイムダンス」
「ヘビーフォール」
「魔法なんてもんは、この間合いだと無意味なんだよ!」
距離を取ろうと同時に攻撃できるフレイムダンスを放ったジャミールだが、即座にフォンのヘビーフォールによって消されてしまい、ルグが間合いを詰めてくる。
「ツリースパイラル」
「なら僕も」
「おいおい、もっと斬り合おうぜ!」
「ちっ! 仕方ない、少しだけ付き合おうかな!」
表情を変えず戦っていたジャミールが、わずかに苛立ちを浮かべる。
そして、グラムでルグと打ち合うものの大剣の重量に押されて一歩、二歩と後退していく。
そこへツリースパイラルを相殺させたフォンが右から回り込み棍による鋭い突きを見舞ってきた。
「これは、マズいかもねぇ」
「はははっ! お前が落ちれば、後は楽だぜ!」
「一気に決めてあげます――っ!?」
「フォン!」
このまま決めるつもりで挟み込んだフォンだったが、突然の石礫に体を打ち据えられる。
棍を巧みに操り致命傷は避けたものの、多少のダメージを受けてしまう。
「助かったよ――ラーミア先輩!」
「お早めに頼むよ! どおおおおりゃああああああああっ!」
ジャミールのピンチに駆け付けたのは、アースアーマーを身に纏い突進してきたラーミアだった。
そのまま乱戦に持ち込もうと打ち込まれる事を気にすることなく間合いを詰めていくラーミアを見て、ジャミールは笑みを浮かべながらリグと向かい合う。
「……ははっ!」
「一対一になったのに、楽しそうだね?」
「そりゃそうだろう! 俺は元々、二対一なんて状況は好きじゃなかったんだ! 強い奴とタイマンで戦う、それを望んでたんだよ!」
「そうか。……なら、さっさと始めよう。僕は、君が気に入らないみたいだ」
「それは、俺も同じだ!」
グラムと大剣がぶつかり合い、会場全体に甲高い音が鳴り響いた。
シエラが対峙するのは赤髪の少女ミラ。
その両手には一本ずつ、双剣型の魔法装具を握っている。
「あなた、魔法装具を二本も持って扱えるのかしら?」
「舐めないでよね! 私に掛かれば、斬り合いながら巧みに魔法を放って仕留める事もできるんだからね!」
「そう。なら、私と斬り合ってみる?」
一方のシエラはナイフ型の魔法装具と普通のナイフを左右に握る。
「なーんだ! あなた、魔法には自信がないのね?」
「試してみたら分かるわよ?」
「ふん! 剣術でも私の方が上! 魔法でも上! なら、結果は分かり切っているわ!」
「無駄に動く口ね。それじゃあ、こっちから行くわね」
「む、無駄とは何よ! ふざけんじゃない――わよ!」
予備動作なしで一気に間合いを詰めたシエラ。
しかし、その動きに反応したミラは双剣をぶつけて初撃を防いで見せる。
同時に左右に顕現させたファイアランスがシエラへと襲い掛かる。
「ウォーターウォール」
「甘いわよ!」
「水が、蒸発?」
「私の心の属性は、火なのよ!」
ウォーターウォールを貫いてファイアランスが迫ってくる。
刀身が短い分小回りが利くシエラの斬撃がミラへと襲い掛かり、一歩分後退する。
そのタイミングで大きく飛び退きファイアランスを躱すが、右肩と左足には火傷の痕が残っていた。
「うふふ。逃げる事しかできないの? やっぱり、私の勝利は決まったようなものね!」
「……面白いわね。でも、あなたに負けるつもりはないわ」
「負け惜しみね!」
「私は、アル以外に負けるわけにはいかないから」
「それじゃあ、私が貴方に敗北を刻みつけた二人目になってあげるわ!」
自らの後方にメガフレイムを顕現させたミラが、魔法と共にシエラへと襲い掛かる。
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