第279話:三人での魔獣討伐
冒険者ギルドに到着した三人は、目ぼしい依頼がないか確認するために掲示板を眺めていた。
「――あら、アルさんじゃないですか」
声のした方へ視線を向けると、そこにはギルドマスターのリルレイが立っていた。
「昨日ぶりですね、レレリーナさん」
「魔法競技会は圧勝でしたね、おめでとうございます」
魔法競技会は観客を会場に招き入れて行われている。
リルレイも毎年のように会場へと足を運び、目ぼしい学生には声を掛けていたりする。
「そちらのお二人は、ユージュラッド魔法学園の代表者ですか?」
「はい。シエラ・クロケットと、ジャミール・ナトラン先輩です」
「初めまして。私はカーザリア冒険者ギルドのギルドマスターで、リルレイ・レレリーナです」
「「……ギ、ギルドマスター!?」」
いきなりの大物に、二人は驚きの声をあげながらアルへ振り返る。
「俺も昨日知り合ったんだよ」
「いや、ギルマスと知り合いになれるって、普通はあり得ないことなのよ?」
「全く。アル君には驚かされてばかりだよ」
「お二人は見かけなかったけれど、パーティ部門に出場するのかしら?」
「はい。というか、俺の知り合いは全員がパーティ部門です」
「そうでしたか……まあ、他の個人部門の代表は、酷かったからねぇ」
貴族派の二人の試合も見ていたリルレイは、苦笑しながらそんなことを口にする。
「それでは、パーティ部門のユージュラッド魔法学園には注目しておきますね」
冒険者ギルドの人間だからか、リルレイはアルの戦い方に何かしらを言及することもなくその場を去っていった。
「……アル、あなたってすごいことするわね」
「あっちから声を掛けてきたんだよ。なんでも、ジラージさんと知り合いらしいぞ」
「ギルマス同士、昔は冒険者稼業をしていたんだろうね~」
そんなことを話しながら、三人は昨日とは別の魔獣討伐の依頼を受けると、そのままカーザリアの外に出た。
※※※※
――結果から伝えると、依頼は予想以上にスムーズに達成されることになった。
クルルと一緒に行動していた時は、どうしても非戦闘員として考えて行動していた。
しかし、シエラとジャミールに関してはその実力を認めているだけではなく、パーティ訓練を通して連携も鍛えている。
実戦では異なる部分も多くあるだろうと思っていたアルだが、それでも臨機応変に対応することもできたことで、昨日に比べて半分の時間で目的の魔獣を討伐することができた。
「さて、次はどうしましょうか」
「とは言っても、魔獣を狩る以外にやることってないよね~」
二人とも剣を握りながら呟き、周囲の気配を探っている。
依頼を達成したらすぐに戻るのもありだが、今回はまだ冒険者ではなくシエラとジャミールもいる。
アルの用事はすでに完了しているのだから、二人のやりたいようにやらせてもいいかと考えていた。
「そういえば、レレリーナさんが、強力な魔獣が近辺をうろついているとか言っていたっけ」
「……でも、そんな気配はどこにもなさそうよ?」
「……うん。僕も感じられないな」
「俺も昨日、カーザリアに戻ってきてから聞いた内容だから、はっきりとは分からないんだけどな」
念のためにアルも常に気配察知を行っていたのだが、それらしき気配はどこにも見つけられていない。
もしここで遭遇してしまえば、どうするべきかは考えておかなければならなかった。
「っていうか、それを今言うの?」
「一応、僕たちは学園の代表なんだよ?」
「……それをついてきた二人が言うのか?」
自分も伝えるのが遅かったと反省していたが、二人の言い分に少しだけムッとしてしまう。
だが、二人を危険に晒すわけにはいかないと、このまま戻ることを選択した。
「え、戻るの?」
「どうせなら、その魔獣を探してもいいんじゃないかな~?」
「ダメだろ! だったら、魔法競技会が終わってからでもいいんじゃないか? ……俺は、そうするつもりだし」
「「……はい?」」
二人の鋭い視線がアルを見据え、わずかにたじろいでしまう。
「そういう大事な事は」
「先に言っておいた方がいいよ~?」
「大事なのか?」
「私たちも行くからね?」
「置いていこうだなんて、思わないでね~?」
冒険者ではない二人を危険に晒していいのかと困ってしまうアルだったが、当の本人たちが言うのだから仕方ないかと諦めることにした。
「解決されていることを祈るばかりだな」
溜息をつきながら呟き、今回はそのままカーザリアへと戻っていった。
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