第123話:ペリナとの特別授業

 魔法装具は使用者の魔力を底上げするだけではなく、レベルを超えた魔法を使えるようになるものだとばかり思っていた。

 しかし、耐性強化などの一部の機能に特化した魔法装具があることをアルは知らなかったのだ。


「魔法装具と言っても様々あるのよ。ゾラン君が使っていたような主に魔法装具と呼ばれる魔力強化型のものや、この指輪みたいに闇属性に耐性を与えるもの。耐性を与えるものに関しては闇属性だけではなくて他の属性に対するものも存在するわよ」

「それじゃあ、耐性を与える魔法装具があればレベル1以上の魔法にも耐えられるし、闇属性を持っていない人でも耐性を得ることができるということですね」

「そういうこと。耐性を与える魔法装具は魔力強化型よりも安価で手に入るけど、それでも高価なことに変わりはないわね。私程度の給料じゃあ、これを手に入れるのが限界だわ」


 あはは、と笑いながらそう口にしたペリナの態度にまさかと思ったアルは恐る恐る聞いてみた。


「ま、まさか、今日の特別授業のためにわざわざ買ったんですか!?」

「まあ、たまには先生らしいこともしないとね。アル君には助けてもらってばかりだし」

「そんな! ……俺、スプラウスト先生からは貰ってばっかりですよ。ダンジョンではポーションだって頂いていますし、先生がいなかったらガルボ兄上を助けることもできなかったんですよ?」


 どうするべきかと考えたアルは、ちょっとしたことを思いつきペリナに提案してみた。


「……ダンジョンで手に入れた素材の一部をスプラウスト先生にもお渡ししましょうか?」

「ゴクリ。……で、でも、それをやっちゃうと横領みたいになっちゃうから、さすがにマズいかな〜」

「でも、ヴォレスト先生のやっていることもそれに近いものではありますよね? いくらアイテムボックスを譲ってくれたとはいえ、将来的にはそれ以上の収入があると踏んでの行動だと思いますし」

「それは、そうだけど……」


 腕を組み考え始めたペリナを見て、ここはもう一押しだとアルはさらに言葉を重ねていく。


「僕が言わなければ絶対にバレないわけですし、学園の外でスプラウスト先生と会って、そこで素材を渡せば問題ありませんよ」

「…………こ、この指輪と同額までなら、問題ない、かな?」

「それがいいですよ。高価なものなんですよね? 俺の我儘に付き合ってもらって購入したのなら、その分の見返りは絶対に必要ですから」

「………………そうする」


 ペリナも納得したところで、そこからは闇属性魔法の実戦練習となった。

 実際にアルに闇魔法を掛けてどのような状態になるのかを確認してもらう。


「気分が悪くなったり、体調に異変があったらすぐに言ってちょうだい」

「分かりました」

「それじゃあ――ダークアイ」


 視界を奪う魔法であるダークアイがアルに掛けられると、その視界が確かにぼんやりと見え辛くなり黒いモヤが所々を覆い隠している。

 今は魔法を掛けられると知っているからすぐに認識することができるが、不意打ちだった場合には目を擦ったり瞬きをしたりと、魔法を疑うことはなかなかないかもしれない。

 その隙に攻撃されてしまうと考えると、やはり闇属性への対処法は習っておいて損はないとアルは考えていた。


「俺には耐性があると言っていましたが、耐性が無い人は俺の視界以上に見え難くなるってことですよね」

「そうね。ただし、アル君は闇属性へ触れる機会が少なかったはずだからほとんど無いに等しいはずよ。これから理解を深めれば今よりも見えやすくなるか、同レベルであれば効かなくなるはずよ」


 そこからは闇属性の理解を深めるために講義をしながらの実戦となった。

 実戦をする中でペリナを一番驚かせたのは、アルが一度受けたダークアイを即座にやってしまったことである。

 理解を深めれば魔法は使えるようになるが、それでも一朝一夕でできるものではない。数日掛けてようやく足掛かりを掴める程度だ。


「なんだかもう、アル君が何をしても驚かない自信が出てきたわよ」

「そうですか? でもまあ、俺の場合はこの後スプラウスト先生に教えることがすぐに魔法を使えた理由につながるんですけどね」

「なら、それを楽しみに今はしっかりと教えることにしましょうか」


 ペリナはダークアイ以外にもいくつかの闇魔法をアルに教え、そして実際に使って体感してもらう。

 本来なら講義のみでこのような教え方はしないのだが、ダンジョンへ一緒に潜りアルの実力を把握しているからこその教え方だった。


「本当に覚えが早いのね。私がこれだけの魔法を覚えるのに掛かった一週間を返してもらいたいわ」


 ペリナが言う一週間だが、これも一般的な期間と比べると早い方である。

 それだけペリナが優秀な魔法師ということなのだが、本人はアミルダを始めレオンやラミアンという化け物級の人物と学生生活を共にしていたのでその自覚が希薄だった。


「さて、闇属性に関してはこんなもんかな」

「ありがとうございます、スプラウスト先生」

「いいのよ。それじゃあ、今度はアル君の秘密を教えてもらってもいいかしら?」

「秘密って……でも、もちろんですよ」


 苦笑しながら、アルは魔力を感じ取ることについての説明を始めた。

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