第2話 プロローグ!
突然知らない世界に飛ばされた私達。知らない人達、分からない言語。途方に暮れる私達。
「ねぇ、先輩。あの人達は何を言っているんですか?」
すると、隣で工藤先輩が何かブツブツ呟き始めました。
「あ~何かね『召喚に成功した』って感極まっているところみたいだよ」
「ええ!?先輩…彼らの言葉…分かるんですか?」
驚いた私の顔を見ながら、さも得意げに工藤先輩は言う。
「スキルを取得すればいいじゃん」
「え?スキル?」
工藤先輩は頷く。
「ここは異世界よ?って事は小説とかゲームみたいにできるんじゃないかな~って」
その言葉で私も少し理解した。私達は会社の同僚でもあり、コスプレ仲間でもあるが、その経緯は同じネットゲームをプレイしていた事に起因している。そこで私もゲーム感覚を思い出し、できる限りの事をしてみる事にした。
「スキル!」
すると、私の目の前にゲームのコンソール的な画面が出現する。
「本当だ…。えっとスキルポイントは初期10ポイント?勇者の割に少ないのね…。」
「そいう事、試しに『言語理解』を取って見たら?あ、ちなみにLv10まで上げるとMAXみたいだから、完璧に理解できると思うよ。」
それを聞いて私は少し悩んだ。先輩は目先の事を優先しがちなところがある。率先して行動力があるから、会社でも信頼される上司として私も尊敬しているのです。しかしここは異世界。そしてスキルポイントが10ポイントしかない現状で、私も同じスキルを取得したら、次のスキルポイントをどう取得すればよいのか。私は考えた結果、スキル振りを保留する事にした。
「先輩、彼らが何を言っているのか。通訳をお願いしたいのです。」
「え?イサミンは言葉分からなくてもいいの?」
「はい。もし、文字とか分かるなら私に教えてください。言語なんて1週間もあれば覚えられますから…」
「さ…さすがイサミン…恐ろしい子…」
その後、ここにいる人物と工藤先輩の通訳を介して、現状が明らかになって行きました。
ここはイグサム王国と言う辺境の小さな国で、周囲にいるのは王宮魔導士6人と国王、そして国王の娘と分かった。この世界は多くの国が貴族、または王国制度を採用していて、それでも国同士の大きな争いは、200年前の世界戦争以来無かったそうです。
ところが数か月前。北の大国オシレウヌ王国が、突如現れた武装軍団によって一夜で陥落。そのまま隣接する二つの王国への宣戦布告を行ったのです。彼らは異形の魔物を使役し、その力は強大だったそうです。
各国はその強大な力を持つ魔物を『魔族』と呼称し、対抗策として過去に世界大戦を終息させた偉大な勇者を誕生させた『異世界召喚の儀式』を行う事になったのだ。
しかし、大戦から200年が過ぎ、既に儀式を知る物はこの世におらず、伝承でしか語られていなかったため、どの国も儀式を成功させることができなかった。そんな中、このイグサム王国の古い書物に唯一残っていた古書に、儀式の一部が記載されており、試行錯誤の結果が今なのだ。
「xxx,xx,xx,x,xxx,,x,xxx,x,x,x,x,xxx」
「王様はなんて?」
「この世界を守って欲しい。そう言っています」
またベタな台詞を言う王様だ。と思いましたが、仕方ありません。私達は、国王より旅に必要な予算をと交渉しました。
「本来であればいろいろ支援してあげたいところなのですが(通訳:先輩)」
―――。
「はぁ!?銅貨5枚!?」
「この国は一番貧乏なのに、今年に限って名産の農業が大飢饉でピンチなんだってさ。」
「いや…だって銅貨5枚って、日本円で換算すれば50円って事?しかも宿代は素泊まりで銅貨1枚、食事付きで2枚よ?一泊で消えちゃうじゃない」
これは途方に暮れた。武器、防具に至っては手持ちのお金で全く手が届かない金額。こんなのでどうやって旅に出ろと言うのか。城は外見凄く立派に見える。それもそのはず、城下から見える位置に張りぼての城門があり、裏側は薄っぺらな木の板だった。
「ギャグなの!?真面目なの!?」
「まぁ…ツッコミどころ満載ねイサミン」
先輩も少し呆れ顔でした。
「ところで、イサミンはステータスを確認した?」
「ステータス?まだだけど…」
そういえば、スキルは確認したが総合能力までは確認していなかったなぁ。私はゲーム感覚で再びコンソールを呼び出してみる。
「ステータス!」
出てきたのは…。
「全然読めない!!!」
スキルの時は、出しただけであまり目を通さなかったが、ステータスの表示もスキルの表示も異世界言語で書かれているようで、私には全く読む事ができなかった。
「えーー!?私はちゃんと見えてるよ?」
「うそ!?って先輩は自動翻訳かかってるじゃない」
私のツッコミに工藤先輩は、思い出したかのように舌をペロっと出した。
「でも…先輩はよくわけのわからないスキル一覧の中から、『言語理解』なんて選択できたよね」
「ん?適当にLv1上げたら読めるようになったので、全振りしたんだよ~」
運じゃん!!先輩はたまたま一番上にあったスキルを取ったら、それが『言語理解』で、Lv1で文字を理解する事ができたのだ。しかし、言葉を聞いたり話したりする事はできなかったので、スキルに全振りしたのだと私は理解した。
「ん?この文字…よく見ると、私がやってた『スターファンタジーゲイツオンライン』で使われてる文字に似てる…。ねぇ先輩、これがSTRでこっちがVIT。合ってる?」
「せ…正解よ…。え?何?読めちゃったの?」
「そうみたい…複雑なものは時間かかりそうだけど、これなら文字でなんとかお話できるかも~」
「さ…さすが元廃人」
「廃人言わないでください!先輩!」
※廃人=一般のプレイヤーよりもはるかに長い時間プレイしている人
そう、私は学生時代にゲームへのめり込み、いつしかチャットの会話がゲーム内言語で話せるようになっていた、まさに廃人だったのです。でも、昔取った
「先輩!私に考えがあります!」
このピンチ、絶対に乗り越えて見せます!
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