第8話
第八話
昨日、ここ(教会)に泊めてもらったのだが……
どうも、教会の修道女たちの私を見る目が変だ……
すれ違うたびに、頬を赤らめて目線を逸らす……
これから、森の小屋に一度戻ってから私が眠っていた場所に行ってみるつもりだ
アデレーナは、風呂場の一件以来大人しくしている、普通にしていれば清楚で綺麗なお姉さんなのだが……
部屋で帰り支度をしているアデレーナに疑問に思っている事を問いかける
「アデレーナ、あのさぁ……私を見る修道女たちの様子が変なんだけど」
「何か心当たりある」
と私が困ったように言うとリュックに荷物を詰めているアデレーナの手がピタリと止まる
「さぁ~、何の事でしょうか……」
と知らないフリをしているが露骨に動揺しているのが分かる
「アデレーナさん~、私に何か隠してるね……」
「もう一度、全身電気マッサージしてあげようか~」
私が薄ら笑いをしながら言うと
「ひっ!……アレはダメですっ……ほんとにダメですっ!」
「かるく昇天しちゃいますっ!、何度もされるとその内に変な癖になっちゃいますから」
そう言うとアデレーナは体を抱きかかえる様にすると私の方をみて呼吸を整える
「どうも、私とエレーヌさんがお風呂場で変なプレイしていたという噂が流れていて……そういう関係じゃないかと勘違いされているようなんです」
と恥ずかしそうに私をチラチラ見ながら俯いて小さな声で言う
「へっ!変なプレイって! なっ!何の事よっ! そういう関係って……何よっ!」
私は動揺して言うとアデレーナは顔を上げると
「昨日の、お風呂場のアノ現場を誰かに見られていたようなんですよ」
「アレを見たら私だって勘違いしますよ」
そう言うと少し考え込み両腕を組むと、再び話し出した
「これは
「けっこう、ここにはそういうのあるんですよ……女同士のそういう関係」
「なにせ、俗世間から隔離された女だらけで完全な男日照りのこの環境に繁殖適齢期の若い女やそうでないのも、うじゃうじゃ居るんですよ……」
「自然の摂理からすればNGかもしれませんが、女しか居ない環境だからある程度は仕方の無い事なんですよっ!だからそういうのもOKなんですっ!!」
「女同士のそういう関係は、ここではずっと昔から暗に認められてきたことなんです」
「ここだけの話、大司教の"テオドラ"様もかなりのヤリ手だったと聞いております」
「どうです……分かってもらえました」
と言うとアデレーナは呆然としている私の様子を
「あ~そうなんだっ……」
「要するに、そういう目で見られてたんだ……私……」
私が力なく言うと
「多分っ! いえっ! 間違いなくそうでしょうね……イケメン女子のエレーヌさんは、ここの若い修道女にとっては直球ど真ん中だと思いますよっ!」
「私もっ! エレーヌさんならイケますっ! いつでもOKですっ!!」
と私を見ながら鼻息を荒くしてガッツポーズで力説する
「ちょっと! 私はそんな気ないからねっ! ほんとにっ!ほんとに無いからねっ!!」
と全力で否定するが何故な内心は悪い気は余りしなかった
"ヤバっ! 私ってその気あるのかっ……!"
少し、自分を疑っていると
「用意が出来ましたよ、ブラも着けたしパンツも履いたし、行きましょうか」
「何か窮屈です……一日、してなかっただけでこうも違うものなんですねぇ」
胸の辺りを窮屈そうに触ると荷物を背負い私の手を掴むと足早に部屋を出る
「帰る前にちょっと大司教様に挨拶をしていきましょうねっ」
大司教の執務室の前に来るとアデレーナはドアをノックする
中から"テオドラ"声が聞こえてくるとアデレーナはドアを開け入り口に立ったままで挨拶をする
「テオドラ様、お世話になりました、これから出発いたします」
と言うとアデレーナは深々と頭を下げる、私も一緒に頭を下げた
「そうですか、"衝立の女神"様の事、よろしく頼みますよ……聖女・アデレーナよ」
テオドラがそう言うとアデレーナは両手を胸に手を当てて
「お任せください……私はこのために十七年間を生きてきました」
「役目は必ず果たしてお見せします」
そう言うともう一度深々と頭を下げるとドアを閉めた
「さあっ! 行きましょうっ!!」
私とアデレーナが教会を出る時には多くの修道女たちが見送ってくれた
街の通り城門を抜けて再び森の中へと入っていく、私の前を黙々と無言で歩くアデレーナに話しかける
「あのさぁ……アデレーナの事、"聖女"とか言ってなかった」
と私は疑問に思っていたことを口にする
「……私は、三歳の時に母に連れられてきた教会で偶然に目にした"神の啓示の石板"により"聖女"として選ばれました」
「普通の人には見えないはずの石板に刻まれた"ノーワの刻印"が見えたのです」
「それからすぐに、親元を離れ教会に引き取られ"聖女"として暮らしてきました」
「十六歳になった時に神託を受けてあの森の温泉の守となったのです……そして、その使命を果たす時が来たという訳です」
そう言うと、アデレーナは何も言わなくなってしまった
いつものアデレーナとは口調が違っているのも気になったがそれ以上は聞かなかったし、言おうと思っていた"本当に聖女なの、うっそ~"と聞くこともしなかった
森を歩き続けて小屋に到着すると"ポチ"が気配を感じてドアを開けて出てくるとアデレーナにすりよってくる
「ポチ、ただいまっ、帰ったよ」
とアデレーナはポチの頭を撫でると"クォーン"と嬉しそうな鳴き声を上げた
次に私の方に近付いてくるので私もポチの頭を撫でようと手を出したが……ポチは私の差し出した手に見向きもせずにいきなり乗りかかると物凄い勢いで体中を舐め回す
「えっ! ……なんで……」
「あっ! ちょっと! ポチっ!」
「そこダメっ! あっあんっ! あひいっ! んっんっ! 」
私は体中を隅から隅まで舐め回されて悶絶している、その姿をアデレーナは微笑みながら見ていた……
ポチは私が動かなくなりピクピクするまで舐め続けると気が済んだのか小屋の中へ戻っていった
「もうっ! 酷いよっ! どうして助けてくれないのっ!」
「また、体中舐められてベタベタになっちゃったよ……」
私がブツブツ言いながら文句を言うと
「温泉にでも入りましょうか」
笑ってそう言うとアデレーナは小屋の中に入っていった
どうも、アデレーナの様子がおかしい……
私は、アデレーナの異変に気付いていた、情緒不安定になっているような気がする
それに、何か大切な事を隠しているような気がする……
二人して温泉に入るが何も言わずに湯に浸かっているアデレーナに問いかけてみる
「アデレーナ……なにか隠し事してるでしょう」
「えっ! 何の事ですか~」
あからさまに態度がよそよそしくなる
「私にも言えない事なの……」
そう私が小さな声で聞く
「……」
アデレーナは黙ったまま俯いている
「言えないのなら……無理に言わなくていいよ」
そう言うと私は立ち上がり温泉を出て行こうとする……慌ててアデレーナが私の手を掴む
「あのっ! エレーヌさんっ……じつは……」
「じつは、私……聖女には"異界の門"を閉じる鍵の役割があるです……」
「……要するに、この命と引き換えに"異界の門"封印するのです……」
「ですから……ですから……」
と言うとポロポロと涙を流す
「私、まだ……死にたくないっ……もっと、生きていたいっ……」
涙を流し鼻水を啜りながら私の胸に顔を当てて泣いている
確かに、アデレーナには魔力がある事には既に感ずいていたが"異界の門"を封ずる鍵となるだなんて……
「そんな……」
「そんな事っ……絶対にさせないっ! アデレーナは絶対に死なせないっ!!」
「私が何とかして見せるっ!」
泣いているアデレーナをギユッっと強く抱きしめる
「本当ですか……そんな事出来るのですか」
「私……信じちゃいますよっ、本気にしちゃいますよっ」
私の目を涙に潤んだ眼で見つめて言う
"ハッキリ言って自身なんかない……でも、このままアデレーナを生贄にするなんて言うことは私には出来ない……"
私が心に強く誓いを立てていると、アデレーナが苦しそうにしている
「ごめん、強く抱きしめちゃって……痛かった……」
私は、アデレーナを抱きしめていた手を放すと
「エレーヌさん……凄く力強く私を抱きしめてくれて、何だか落ち着きました」
「何とかなりそうな気がしてきました」
「私だってこのまま、処女で死ぬなんてまっぴらごめんですよっ!」
「……ちょっと、口には出せないですが、あんな事や、そんな事をいっぱいしたいですっ!!!……もちろん、エレ-ヌさんとだけですけど……」
話をするアデレーナの口調から少しだけいつもの調子が戻ってきたような気がする
そんなアデレーナを見ながら、こいつって"欲望の聖女"だなとつくづく思った
「でも、エレーヌさんってホントにオッパイ無いですよね……」
「さっきギュッてされた時、あばら骨が顔にゴリゴリ擦れてマジ痛かったですよっ……でも、そこがいいんでよっ💛」
とアデレーナはモジモジしながら私の胸をペシペシっと叩く……
「ふぎゃーっ!!」
アデレーナの悲鳴が森に響き渡った、気が付くと無意識に私はアデレーナのオッパイを掴んでいた
「やっばり、お前なんか死んじまえっ!」
いつもの調子に戻ったアデレーナに安心しつつも不愉快な思いをする私だった
「ヒィ~! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
「褒めてるつもりなんですっ! ホントなんですっ!!」
必死になって謝るアデレーナを見ながら私は考え事をしていた
私には"異界の門"の記憶が戻ってきつつあった……そして、そこから現れた異形の者たちの事も……
第八話 ~終わり~
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