第7話

 ~ 第七話 ~


 「……」

状況が分からない、私は何も言う事が出来ずにいた……それを見て


 「どうかなされましたか? "衝立の女神"よ」

と"アソピオス"が問いかけてくる


 「……その……私は目覚める前の記憶を失っています」

と"アソピオス"の問いかけに私は正直に答えた


 「やはり、そうでしたか……それも、伝承の通りです」

と"アソピオス"が納得したかのように私を見て言う

 「私ども王家に代々伝承されてきた事をお話しましょう」

そう言うと"アソピオス"は話を始めた



 発端は今から約千年前に遡ります、その頃この地には超常の力を持つ者達が自らの力と技を磨くために集い学び舎を築き共に暮らし切磋琢磨し合い日夜、勉学に研究に心血を注いでいたそうです


 超常の力と知識をもって多くの民達を助け導き大陸全土を良き世界とし共に平和に暮らしていたそうです

 その者達こそ現在、我らが神と仰ぐ者達です

 貴方は、その中のお一人でした


 ですが、ある日何の前触れもなく異界から侵略者がこの世界に攻め入り地獄のような殺戮が繰り広げられたそうです


 異能の力を持つ侵略者に対して彼らは果敢に戦いを挑みその多くを打倒しましたが彼らもまた一人また一人と戦いの中に消えていったそうです


 最後まで残った二人の者のうち一人は、異界から侵略者がこの世界に攻め入った門を封印し力尽き、もう一人の者は異界から侵略者の異能を押さえるためにその力を使い切り長い眠りについたと伝えられております


 そのおかげで我らは生き残り今までの千年間を無事に暮らしてまいりました


 我らサマラス一族は門を封印し力尽た者を"封印の神"としてこの地に神殿を築き、代々千年にわたり祭って参りました


 千年と言う長い時の中で何時の頃からか、この地に生き残った者達が集まり国となり神殿は聖城となり我らは神聖皇帝と呼ばれる様になりました


 "封印の神"が最後に我らの先祖に言い残した言葉が「これより千年の後に再び異界の門は開かれる、その時に"の女神"は目覚める」と言われたそうです


 その時に、一緒に賜ったものがこの鏡に御座います、ピレウスの温泉の湯に浸かれば胸に紋章が浮き出るという言い伝えもそうです


 これが、我らサマラス一族に代々口伝で伝承された来た話にございます


 我らは、この事を後世に伝えるため貴方様の目覚めを見届けるためだけに千年の間、この地にてひたすらお待ち申し上げてきた所存にございます



 と言うと"アソピオス"はベッドに倒れ込むように伏せる

 「我らサマラスの血脈が途絶えるまでに何とか間に合ったな……」

 「もう……思い残す事は無い……」

 そう言うと涙を流しながら目を閉じた……その場にいた私達は慌てて"アソピオス"に声を掛ける


 「ちょっと! しっかりしてっ!!」

騒ぎを聞きつけた侍従たちが部屋に慌てて入ってくると"アソピオス"に駆け寄り容態を確認する


 「お眠りになっています……大事はありません」

と言うと毛布を掛ける

 「ぐぉ~っぐぉ~っ」

すると、いびきをかき始めるのであった……それを見て私は


 「びっくりさせないでよっ! 完全に成仏したと思ったじゃない」

と息を切らしながら言うと


 「怒らないであげてください……兄は心から安心したのでしょう」

と言うといびきを掻きながら眠っている"アソピオス"の顔を見て言う


 「今まで秘密にしておりましたが……神聖皇帝はもう随分と前から不在なのです」

 「先代神聖皇帝も現神聖皇帝も初めから存在しないのです……国体を保つためのいつわりりにございます」


 「兄には子供がおりません、そして私にもです……つまり、千年続いたサマラスの血統は私共で絶えることとなります」

 「因果な物ですね……」

と言うと"テオドラ"は悲しそうに笑った



 私はその姿を見ながら考えていた


 "異界の門"って何……何処にあるの……全く見当もつかない

 それに、見つけたところでどうやって封印するの……どうしよう……と内心は困り果てていた……


 「あのっ! 私には全く記憶がないのです」

 「ですから、何をどうすればよいのか分らないのです」

私が困ったように"テオドラ"に向かって言うと


 「貴方様の記憶については取り戻す方法が"封印の神"より伝えられております」

そう言うと眠っている"アソピオス"の枕元に置かれていた鏡を手に取ると私に差し出した

 「この手鏡が貴方様の記憶を取り戻す手掛かりになるそうです」


 私は手鏡を手渡されると覗き込むが先ほどとは違い何の変化も無く自分の顔が映っているだけだ

 「あれっ、もう光らないね」

と不思議そうに手鏡に映った自分の顔を見ながら言うと


 「既にこの手鏡の封印は解かれているのです」

 「お持ち帰りください、必ずや貴方様を導いてくれるでしょう」

 「私はもう少し兄の様子を看ております」

侍従に馬車の用意を頼むと"アデレーナ"に私と教会へ戻るように言った


 馬車の用意ができると侍従の後に付いて私と"アデレーナ"の部屋を出て行く姿を見送った後、"テオドラ"は寝ている兄に向かって

 「狸寝入りはもういいですよ……兄上……」

と"テオドラ"が呆れたように言うと少し笑った



 「うっ……気付いておったのか……」

少し照れ臭そうに"アソピオス"が小さな声で言うとベッドから身を起こす

 「これでやっと肩の荷が下りたわっ……わしもお前も子に恵まれんかったからのう……」

 「これで千年続いた"サラマス"の血筋も我らの代で絶えるのかと思うとな御先祖様に申し訳のうて今までこうして狸寝入りも出来んかったわ」

 そう言うと小さな笑いを浮かべた


 「兄さまは小さい頃から面倒くさい事や都合が悪くなるとよく狸寝入りをしましたからね」

 「五十年前の私でしたら股間に一発くれてやるところでしたわ」

"テオドラ"はベッドの兄の股間を見ながら言うと"アソピオス"は慌てて股間を手で隠した


 「儂に子が出来なんだのはなぁ~、お前の所為ではなかろうか」

 「小さい頃から、何かと言うと儂の股間に一発くれよって……」

と"アソピオス"が拗ねたように言うと


 「そうでしたかしら……オホホホホ」

と白々しく笑う"テオドラ"を見て


 「それになぁ……気持ち悪いぞ……お前……上品ぶって」

 「お前は、下品で凶暴だから嫁の貰い手がなかったんじゃからの」

と横目で"テオドラ"を気持ち悪そうに見た


 「ぐほっ!」

 「うぐぐぐ……びっ病人になんということをするのじゃ……」

数十年ぶりに"アソピオス"の股間に"テオドラ"の一発がきまった

ヘッドの上で股間を押さえてもだえる兄の姿を見て"テオドラ"は笑っていたが……その笑いは以前とは少し違っていた



 その頃、私と"アデレーナ"は馬車で教会に戻る途中だった


 「ねえ……"エレーヌ"その手鏡で何か思い出した」

 「その手鏡って……たぶん"サラマスの秘宝の手鏡"よ」

 「私……聞いたことがあるわ」

横に座っている"アデレーナ"が何気なく私が手にしている手鏡を見て言う


 「そんな大切なものを私に……責任重大だね……」

と私は手鏡を見て呟きながら……考え事をしていた


 "この手鏡、私が初めて覗き込んだ時に反応した……"

 "もしあれでテオドラの言ったように封印が説かれたのなら……"

 "私が目を覚ましたあの石棺のあった場所に行けば何か手掛かりがあるかも……"


 そう考えた私は"アデレーナ"の方を見ると

 「アデレーナっ! 後で私に付き合ってくれる」

真剣な眼差し"アデレーナ"を見つめて言う


 「えっ!……その……まだ心の準備が……それに私……初めてだし……」

 「女の子同士ってのも……でも、エレーヌならいいかなって……」

 「そこら辺の男より俄然がぜんかっこいいし……ハッキリ言ってタイプだし……」

 「それに、全てを女神に捧げた者としては……仰せに従うしか……ないし……」

体をモジモジさせながら両手で胸を抱えて頬を赤くしている


 ……こいつ、何か完全に誤解している……その時、馬車の車輪が何かにぶつかって激しく揺れる

 「きゃ!」

と言うと悲鳴をあげて"アデレーナ"は私の方に倒れ込んできた


 「危ないっ!」

私はとっさに"アデレーナ"の両肩を両手で抱き留めた


 「エレーヌ……」

と言って私を潤んだ眼で見つめる……


 次の一瞬、アデレーナの顔が栗色の長い髪の毛をした別の女性に見える

 私が焦って手を放すとそのままの状態で"アデレーナ"は床に転げ落ちる……ローブのすそは大きくめくれ上がりお尻が丸見えになった


 「痛ったぁ~! 酷いじゃないですかっ!!」

 「いきなり手を放すなんて……今、私ノーパンなんだから他に人がいたら大変な事になってましたよっ!!」

慌ててローブの裾を直すとブツブツ文句を言いながら怒っている


 「アデレーナ……そっちの方じゃなくて……私が目覚めた時に入っていた石棺のあった場所に一緒に付き合ってほしいんだよ」

私は"アデレーナ"を窘めるように言う


 「なんだ……私、勘違いしちゃったっ!」

と照れたように言う……が内心では……


 "ケッ! 紛らしい言い方しやがって……

 このまま"衝立の女神様"と既成事実を作っとけば私の将来は安泰だったのにっ……"

 ……アデレーナの内心の独り言は自身の口からダダ洩れだった


 直ぐに馬車は教会に到着した、その頃には日も沈みかけていた


 「お帰りになりましたか」

という声と共に馬車のドアが開かれるとそこには修道女が三人が出迎えてくれている


 私とアデレーナが馬車から降りると、真ん中にいた修道女が前に進み出る

 「"衝立の女神"様っ! さっ先ほどは御無礼なことを申し上げ、誠に申し訳ありませんでした」

 「私はどのような処罰もお受けいたします……他の者はなにとぞご容赦を」

そう言うとローブのフードを外す……アレクシアだった……小刻みに体が震えているのが分かる


 ……私……そんなに怖がられているのかな、少しショックを受けた

 「いいよっ! 気にしていないから、外見がこんなのだから間違われても仕方がないよ……それに、私の方こそ……裸にしちゃってごめんね……」

と私がすまなさそうに言うと


 「あのっ! その事は気にしていませんから……」

 「そのっ……"衝立の女神"様はとってもかっこいいと思いますっ!」

私の顔を見て少し恥ずかしそうに言うと走り去っていった……残された二人は顔を見合わせると私に会釈をして後を追いかけて行った


 「モテモテですねぇ~ "エレーヌ"さんっ」

 「もう日が沈むので森に戻るのは明日にしましょう……今日は、ここに泊めてもらいますね」

 「教会の人に言ってお部屋を用意してもらいますからここで暫く待ってて下さいね」

そう言い残すと私を置いて教会の奥の方に行ってしまった


 私は一人で教会の入り口の広間に置かれていた椅子に座って手にした手鏡を見ながらボ~っと考え事をしていた

 "……とりあえず、今日はここに泊めてもらって、森の小屋に帰ってそれから……"

などと考えていると周りが騒がしいのに気が付く


 辺りを見回すと何十人もの修道女達に取り囲まれていた……私がびっくりして目をキョロキョロさせていると何人かの修道女と目が合う


 「あの方が"衝立の女神"様なのっ……」

 「私っ本物の"神"を見るの初めてっ……」

 「いっ今、目が会っちゃった……」

 「やだっ! ほんとにかっこいいっ……」

 「あの方だったら私……脱がされてもいい……」

などといろいろ好き勝手言っているのが聞こえてくる


 「はいっ! 退いて退いてっ!」

と声がすると"アデレーナ"が私に向かって歩いてくる

 「さあっ! 行きましょう」

そう言うと私の手を握って引っ張っていく……何故か懐かしい感覚が蘇ってくる……馬車の中で一瞬だけ垣間見た栗色の長い髪の女性に手を引かれて野原をは走っているような幻覚が見える


 「……ラミア……」

と私は、覚えのない誰かの名前を呟く


 「何か言いましたか」

と栗色の長い髪の女性が言うとアデレーナの顔が重なり合うのが目に映る


 「いや……何でもないよ……」

私はぼんやりとした意識の中でそう言うとアデレーナに連れられて長い廊下を歩いていく


 「着きましたよ……今日はここに泊めてもらいます」

 「私と同じ部屋ですけどいいですか」

と私の様子をうかがいながら了解を取ってくる


 「あっ……いいよ、アデレーナと同じ部屋で……」

私は小さな声で呟くように言うと


 「大丈夫ですか……何だか元気がないようですけど……」

 「今日一日、いろいろとあって疲れているんだと思います」

 「暫く、部屋のベッドで横になられたらどうですか」

アデレーナはそう言うと私の手を取りベッドまで連れて行ってくれた……


 私は枕元に手鏡を置いてベッドに横になるとアデレーナはかがみ込むような態勢で私の額に手を当てる……

 ローブの首元がダブって胸が丸見えになっているがツッコミを入れる気力もなかった……

 「熱は無いようですね……少し休んでてください」

 「私は、ここの責任者の所へ行ってきますね」

 「お風呂とご飯の用意が出来たらお知らせしますね」

そう言い残すとそっと部屋を出ていった


 誰もいない部屋の中のベッドに横たわっている……時より何処からか声が聞こえてくるが、よく聞き取れない

 "……どうしちゃったんだろう……私、何か変な感じだ……さっき見た幻覚の女性は何だったんだろう……"


「……エレーヌ……エレーヌ……起きて……」

と私を起こす声がする


 「う~ん……わかったよ、起きるよ」

と私は眠い目を擦ってベッドから起き上がる……横を見るとさっきの栗色の髪長いをした女性がいる

 「あれっ……"私と同じぐらいの子……"」

私がびっくりして声を上げると


 「何が"あれっ"よっ! 寝ぼけてないでさっさと起きて」

そう言うと私の毛布を引き剥がす


 「えっ! ちょっと待ってっ! 」

訳の分からない私がびっくりして言うと


 「もうっ! また裸で寝てるっ! ちゃんと服着て寝なさいって言ったでしょう」

と私を見て呆れて表情をする……私が不意にうつむくと本当に素っ裸だった


 「ひゃ!」

思わず私が無い胸を隠すと栗色の長い髪のが気味悪そうな目で私を見ている


 「な・に・が・"ヒャ"よ……気持ち悪い……」

 [エレーヌの胸なんて見飽きてるわよっ」

 「それよりっ! エレーヌ……貴方ね、一応は今年度の首席なのよっ!」

 「さっさと服着てっ! 行くわよっ!」

 彼女の物凄い迫力に押されて、何が何だか分からないがとりあえず手元にあった服を着ると、私の手を引いて走り出す……

 光の中に彼女の姿が消える……そこで再び記憶が途切れる


 「とうとう、私達だけ二人になっちゃったわね」

 「でも、向こうも限界なのは確かよっ」

建物は壊され、炎の暑さと何かが焦げる匂い……

時より聞こえる誰かの悲鳴……


 "何なのこれっ……"

 私は心の中で叫ぶが栗色の長い髪の少女は私に気が付いていないかのようだ……また、記憶が途切れる


 「エレーヌ……貴方はもう限界、後は私が何とかして見せる」

 「だから……生き残ってっ……サヨナラね……」

 「最後に……"好きよ……大好き……本当に大好き……ごめんね……"」

と栗色の長い髪の少女が涙を流して言うと暗闇が訪れた

 「……ラミア……私も大好き……」


 ゆっくりと底なしの漆黒の中に沈み込んでいくような感覚がする……

 そこから抜け出そうと必死になって手を伸ばして何かにつかまろうともがく……



 「……し……しっかりして下さいっ!」

私を呼ぶ声がする……突然、目の前が明るくなると……

 私の顔を心配そうにのぞき込む栗色の長い髪の少女の顔がアデレーナの顔と重なり目に映る

 「大丈夫ですか……凄くうなされて……涙まで流して……」

と心配そうに私に話しかける


 「ごめんね……心配かけて……少しだけど昔の記憶が蘇ってきたみたい……」

そう私が呟くように言うと、アデレーナが顔を赤らめて私に恥ずかしそうに言う


 「あのっ……そろそろ、放して貰えませんか……」

と言うと私から目線を逸らす……

 何気なくアデレーナが目線を逸らせた方を見ると私の手がアデレーナの片方の胸を掴んでいた


 「ごめんなさいっ……私、全く気が付かなかった」

慌てて手を離すと


 「いいんですよ……別に……ワザとじゃないって分かりますから」

 「でも……寝言でも"大好き"って言われていきなりオッパイ掴まれたら焦りますよ」

と言って私の方をチラチラ見る……少し間を置いて

 「一つだけ聞いていいですか」

と深刻そうな面持ちで私に言う


 「えっ……うっうん……いいよっ」

と私はエレーヌの只ならぬ気配に一瞬戸惑いながら言う


 「ラミア……って誰ですか」

そう言うと私の目をジッと見ている……目が怖い……深い恨みをたたえたような目だった


 「なっ何の事かな~」

私は反射的に誤魔化そうとする……額に脂汗がにじんでくるのが分かる


 「部屋に戻ってきたらうなされてて、凄く心配していたら……いきなりオッパイ掴まれて……揉み回されて」


 「しかも"大好き"とか言われて……思いっきり期待したら、いきなり他の女の名前を言い出して……」


 「分かります……私の今のこの気持ち……天国から地獄に叩き落とされるようなこの絶望感……」


「せめて"ラミア"って誰なのかぐらいは説明してもらわないと、私の気が済まないのですっ!」


 そう言うと薄目のアデレーナは私に詰め寄ってくる……怖い……しかし、何だか……この感覚は懐かしい気がする……


 「分かったよ……話すよ……」

私が観念したかのように言うとアデレーナはニコッと笑ったが目は笑っていなかった


 アデレーナの雰囲気に負けて私は、包み隠さず夢で見たことをアデレーナに話した


 「ふ~ん……その、"ラミア"って子は間違いなく"封印の神"でしょうね……」

 「そして、そのラミアさんとエレーヌさんは両想いだったと……」

コクコクと頷くと私の顔をジロっと睨む

 「そのラミアさんとはどこまでいってたんですか……」

薄気味の悪い笑顔を浮かべながら詰め寄ってくる


 「どっ……どこまでって……何の事かな~」

アデレーナから目を逸らせてとぼける


 「まあっいいっか……千年も昔のもういないひとの事なんて……」  

 「……でも、なんだかもの凄っく気になるんですっ!」

アデレーナは力いっぱい握り拳をして言う


 「ごめん……詳しい記憶がまだ戻っていないんだよ……」

私が俯いてすまなさそうに言うと


 「いいです……もう、いいですよ……い・ま・は・ねっ」

 「エレーヌ、寝汗かいてるから先にお風呂に入ってから、食事にしましょう」

そう言うとアデレーナは私の手を握ると部屋を出て廊下を歩いていく



 「ここですよ」

アデレーナは私を連れて風呂場へ入っていくと

 「ここで脱いでこの籠に脱いだ服を入れておいて下さい」

 「私は、脱いだ服を洗濯場に持っていって新しいの着替えもらってきますから」

私が服を脱いでいるとアデレーナの刺さるような視線を感じる


 「あっあの……何……」

流石に恥ずかしくてモジモジしていると、アデレーナが真剣な表情で近寄ってくる

 「ちょっと! 何っ! 何なのっ!」

私は身の危険を感じて胸と股間を手で隠して体を強張らせ壁際に逃げる……

私の手を掴むと強引に壁に押し付けて、胸をジッと見る


 「何もありませんね……」

 「う~ん……やっぱり、"ノーワの刻印"はあの温泉に浸からないと浮き出ないようですね……」

 「それにしても……見事にペッタンコですね」

感心したように私の貧乳をマジマジと見て言うと微かな膨らみを確かめるかのように撫で回しながらグニグニと揉み始める


 「ちょっと! なにすんのよっ! あっ💛! あんっ💛!」

思わず恥ずかしい声が出てしまった……

突然の事に放心状態の私の胸を再確認するように見るとアデレーナは……


 「う~ん……触っても揉んでも、同じですね……」

 「だったらこれはどうかな……」

と言うと乳首を摘まむとコリコリする


 「あっ! いやっ! あっ💛! あっ💛! あんっ💛!」

 「くちゅぐったいっ!」

体を捩じらせて悶絶する私をよそに、もう一度胸を見て


 「う~ん……やっぱりこれでも駄目ですね……」

 「仕方がないっ! 次はこれしかないか」

と言うと私の股間に手を伸ばす……流石に私も我に返る


 「ふぎゃ!」

とっさにアデレーナの頭の天辺に拳骨を一発お見舞していた


 「ア・デ・レー・ナ~」

頭の天辺を抑えて床にうずくまるアデレーナの前に私は仁王立ちしたまま睨みつける

 「ソフト・ライトニング」

軽い電撃系の呪文を唱えると何発も連続で発動させる

アデレ-ナの体中の局所を次々と静電気のような微弱な雷撃が容赦なく襲う

 

 「ふげっ! ひげっ! あぎゃ! うげっ!」

 「そんな所にっ! あひっ♡! そこだめっ! あはっ♡!」

 「ごっ♡!・めへっ♡!・んふぐっ♡!・なぁっ♡!・さいっ♡!」

電撃の連打を受けて変な声を上げながら悶え床を転げまわりながら謝るアデレーナの姿とその一部始終を陰から見ている者がいた


 今週のお風呂場の掃除当番のアレクシアだった……


 「すっ! 凄いもの見ちゃった……」

と妄想に心をときめかせる……


 アレクシアの秘められた才能が開花した瞬間であった……

 その後、教会中の修道女たちの間で私とアデレーナの著しく偏向された関係が話題となった……



  第七話 ~ 終わり ~

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