第6話
~ 第六話 ~
「どうぞ、こちらに」
という大司教"テオドラ"の案内で私が部屋を出て行こうとする
「ちょっと待ったぁ! 私をこのまま放置していく気ですかっ!」
丸裸の"アデレ-ナ"が焦ったような声で私達を呼び止める
「あらっ、御免なさい……すっかり忘れておりましたわ」
と大司教"テオドラ"がケラケラ笑いながら言う
「酷いですっ! 二人して私に対する扱いが少し酷くないですかっ!!」
と両手で胸と大事な所を隠しながら涙目で抗議する
「誰か~っ、アデレ-ナにロ-ブを……それと、馬車の用意も」
と"テオドラ"が少し大きめの声で言うと、修道女が新しいロ-ブを持ってくる
「アデレ-ナ様……どうして裸なのですか」
とロ-ブを持って来た修道女が不思議そうに言う
「……あそこの変態鬼畜女神に素っ裸にひん剥かれたのよっ!」
私を指さして"アデレ-ナ"が言うと修道女が私を変な目で見る
「先ほど、アレクシア様達を裸にしたのもあの方なのですか」
小声で私を見ながら言っている
「そうよっ! 」
"アデレ-ナ"が言うと修道女の顔色が変わる
「しっ失礼しますっ」
と言うと慌てて逃げるように走り去っていく……その後姿を見つつ……
"あ~あっ、これで変な噂が広まるな……"と思いながら、昔もこんな事があったような気がする……と言うか……記憶がある?……記憶の断片を探ろうとしていると
「"アデレ-ナ"……仮にも"衝立の女神"に対して、その物言いは酷すぎますよ」
"テオドラ"が注意するように言うと"アデレ-ナ"はふくれっ面になる
「いいんです、私か"普通の人間と同じように接してほしい"と頼んだのですから」
私が言うと"テオドラ"は少し驚いたような表情を見せた
少ししてから、修道女が馬車の
「馬車で聖城に参ります……アデレ-ナも同行しなさい」
"テオドラ"に連れられて教会の門前まで行くと馬車が待機していた
私と"テオドラ"が馬車に乗ろうとすると"アデレ-ナ"が
「ちょっと! 待ってくださいっ!!」
「よく考えたら、私、今、"ノ-パン・ノ-ブラ"じゃないですかっ!!」
「流石に聖城に行くのにコレはマズいんじゃないでしょうか……」
恥ずかしそうにローブの胸と股間を押さえながら言う
「大丈夫ですよ……元々、修道女は下着など付けないものなのです」
「私も下着などアノ日以外は付けておりません」
"テオドラ"が何気なく言う
「えっ!」
私と"アデレ-ナ"は顔を見合わせると
「いっ今もでしょうか」
と"アデレ-ナ"が恐る恐る尋ねると……"テオドラ"はにっこりと笑った
「凄いですね……そのお歳で未だにアレがお有りなるなんて……」
何気なく"アデレ-ナ"が言う……"テオドラ"の顔に一瞬雷が走ったことに全く気が付いていない
「へっ?」
"アデレ-ナ"の、突拍子も無い発言に私も凍り付く
その時に私は悟った……"アデレ-ナ"が何故、一人ぼっちで森の中に飛ばされたのか
……こいつは、馬鹿が付くほどの正直者でオマケに致命的に鈍いのだ、しかも全く悪気がないから余計に
「大変ですね……」
と私が"テオドラ"小声で言うと
「いえ……いつもの事ですから……」
と諦めたように言うと、馬車の前で
「ぎゃ! 痛いじゃないですかっ"テオドラ"様っ……何も
お尻を擦りながら文句を言う"アデレ-ナ"を強引に馬車に押し込もうとする
「ちょっと待ってっ!……この態勢でそんなことしたら大事な所が丸見えになりますっ!」
焦りながらロ-ブの裾を手で押さえながら馬車に乗り込む
その後に私も乗り込むと馬車は走り出す……少しして"アデネ-ラ"が胸を押さえて顔を赤らめているのに気が付いた私が
「どうしたの……調子悪いの……」
と心配して聞くと
「ゆっ揺れるんです……そのっ……胸が……」
「ノーブラなのでロ-ブと擦れて……その……先っちょが……」
と目を
「あっ、そうっ」
私は全く揺れを感じない自分の胸にこの世の不公平と無常を感じ、心の中で涙を流すのであった
十分程で聖城に到着する、城門の門番も"テオドラ"の顔を覚えているので止められることも無い、馬車が聖城の入り口に止まると馬車の物音に気が付いた何人かの侍従が慌てて出て来る
「どうなされましたか、……"テオドラ"様」
と出迎えの侍従の一人がやや戸惑うように言う
「至急の要件です、兄の先々代様にお目通しいただければ幸いです」
"テオドラ"が
「分かりました、こちらにどうぞ」
と言って侍従が私達を案内してくれる、かなり歩いてある部屋の前に着くと
部屋の扉の前で大きな声を上げる……
「"テオドラ"様が至急、お目通りしたいとの事です」
扉が開き、中から別の侍従が顔を出す
「わかった、部屋に入れよ」
暫くして、ドアの中からと声がした
私と"テオドラ"そして"アデレ-ナ"が部屋に入ると、豪華な装飾を施された家具がいくつも置かれている……その一番奥のベッドに先々帝は横たわっていた……どうやら、体調はあまり良くないようだ
「兄上、急に押しかけて申し訳ございません」
「どうしても、兄上に会って頂きたい者がおりまして、ご迷惑とは思いますがこうして参った所存にございます」
"テオドラ"そして深々と頭を下げると、私と"アデレ-ナ"も同じようにした
「かまわぬ……」
と言うとベッドから上半身を起こして
「この者か……ワシに合わせたい者というのは」
こちらの様子を
「ここにお連れ致したる者は、王家に伝わる伝承の者にごさいます」
「ご確認お願い致したく参上仕りました」
"テオドラ"が静かにハッキリとした口調で私を見ながら言う……
それを聞くと、警戒するように私を
「はいっ! かしこまりました、至急ご用意いたします」
と慌てた様子で侍従は部屋を出て行った
三人だけの部屋の中に気まずい沈黙の時間が流れる……"テオトラ"も口を噤んだままだった
その沈黙を破るかのようにドアを叩く音がする
「お持ち致しました」
侍従の声がすると、ガチャっとドアが開き侍従が小箱を大事そうに持って部屋に入ってくる
「仰せの品をお持ちいたしました」
と言うと先帝に手渡し深々と頭を下げると部屋の外に出て行った、先帝は小箱を開けると何か鏡のような物を取り出す
「申し遅れましたが、儂は"アソピオス・サマラス"……先々代神聖皇帝であります」
「この鏡を見て頂けるかな」
と私に向かって言うと、手にした鏡のような物を私に向ける……私か鏡を覗き込むと銀色の鏡の表面が金色に輝きだす……その様子を見ていた私以外の三人が
「……どうやら……本物のようだな……」
「"衝立の女神"よ、先ほどのご無礼をお許しください……貴方にお話したいことがあります」
"アソピオス"が呟くように言うと……真剣な眼差しを私に向けると今度は"アデレ-ナ"の方に目を向けると
「そこの者は……」
と"テオドラ"に問いかける
「お気遣い無用です、怪しい者ではありません」
"テオドラ"の言葉を聞くと"アソピオス"は小さく
「"衝立の女神"よ……貴方様方のお力により千年前に封印されし異界の門が再び開きかけております」
「なにとぞ……そのお力をもって再び異界の門の封印をお願いしたく存じます」
と言うと"アソピオス"が深々と頭を下げた……その横で"テオドラ"も深々と頭を下げている
「……えっ?」
何の事……"異界の門"って何……私は、状況が全く分からない……
~ 第六話 ~ 終わり
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