第4話
第四話
「ねえ、アデレ-ナさん……」
「私が声を掛けただけで"ビクッ"とするの止めてくれない」
と私がお願いするように言う……温泉から出てきてから"アデレ-ナ"の私に対する態度が急変している……まぁ、無理もないけど……
「そんなの無理ですっ! だって神様かもしれないんですよ」
「私達、聖職者にとって"神"は絶対なんですっ!」
「神に仕える者として貴方様が神の可能性がある限り、そのなの無理ですっ!」
と力強く力説する
「じぁ……アデレ-ナさんにとっては"神"の命令は絶対なの」
と私が問いかける
「当たり前ですっ! 私達、聖職者は"神"に身も心も捧げた者達なのですっ!!」
と言うと、"アデレ-ナ"の顔が"しまった! 余計な事を言ってしまった"という表情に変わる……間髪を入れず、私がニヤリと薄ら笑いを浮かべる……
「なっ何か……」
と"アデレ-ナ"は青ざめた顔をすると言いかけて止める
「だったら、"
「私の事を普通の人間として扱いなさい、これは命令である」
と私は"アデレ-ナ"にそれらしく命じる
「えっ……"普通の人間"のようにですか……」
と"アデレ-ナ"は呆気にとられたようにポカンとしている
「そうだよ、初めて会った時のように普通に接して欲しいのよ」
と私が笑って言うと"アデレ-ナ"も少し表情が和らいだようだった
「こいつみたいにね」
と言うと下に寝転がっている欠伸をしている"ポチ"の方を見る
少し間を置いて"アデレ-ナ"は、ハッと大きく息を吐くとテーブルの上に置かれていたグラスの飲み物を一気飲みすると
「よかった……どんな命令をされるのか生きた心地がしなかったです」
「エレ-ヌさんは、何だか得体が知れなくて不気味な……」
途中まで言いかけて止めると私の方を恐る恐る見る……両胸はしっかり両手でガードしている
「ハハハ……そうでしょうね……自分でも自分の事が良く分からないからね」
「他の人から見れば、"何だか得体が知れなくて不気味"だと思うのは当然よね」
と私が自虐的に言う……"まあっ、キャラが薄いとか、タっていないとか、ボヤけてるとかいろいろ好きな事、思われるだろうね……"(記憶喪失たなんだから当然なんだけどね……)
などと決して、作者の都合を適当に代弁しているわけではないが私は話を続ける
「その……この世界の事をもっと詳しく教えてくれる」
と私は"アデレ-ナ"に頼むと、この世界の事を話し出す
この大陸には二つの大国と三つの中小国家存在する、その大国の一つが神聖帝国ノ-ワである
もう一つの大国は、ダルキア帝国で強大な軍事国家であり男女を問わず国民皆兵が特徴である
残りの三つの国家は互いに同盟を結ぶことによって大国に対抗している三ヶ国同盟である、パルキア公国・トリニア帝国・タイノス帝国である
この三国同盟はトリニア帝国・タイノス帝国がほぼ同じ国力で対等であるのに対してパルキア公国はその半分程度の国家である
しかし、トリニア帝国・タイノス帝国の宗教上の聖地とされるためにパルキア公国は、この二国と対等の立場を確立している
神聖帝国ノ-ワは、神の末裔たる神聖皇帝ゲオルギオス・サマラスⅤ世により約千年前に建国され、現在に至るまでゲオルギオス・サマラスⅤ世の末裔が統治している
現在は、ゲオルギオス・サマラスⅤ世から数えて五十二代目にあたる神聖皇帝マカリオス・サマラスと言う名の"神"である
神聖帝国ノ-ワの国民にとって神聖皇帝は人ではなく"神"である
王族とその側近を除き、国民には五姓制度と呼ばれる制度がありこれにより職業と階級が定められるが身分は基本的に平等である
五姓は、兵士・
神聖帝国ノ-ワは、古来より"神々の地"と呼ばれ建国時より隣国との戦乱を幾度となく繰り返すも現在まで存続し続けるこの大陸では最古の国家で国力は大陸屈指である
また、王族とその側近を除き、国民に身分制度がないために非常に住みやすく移住者も多い、農業・工業・商業ともに盛んで他国に比べ治安も良く国民は豊かである
国民の信仰の対象はこの地に残った二人の古の神々であり、それが神の末裔たる"神聖皇帝"と"衝立の女神"である
"神聖皇帝"に仕える聖職者は皆、男性であり宮廷騎士で"神聖皇帝"のみに仕えるのに対し"衝立の女神"に仕える聖職者は女性のみであり国民の為の聖職者である
共に聖職者に結婚は認められず家庭を持つことも許されないがないが、その代償として他の四姓よりも待遇は良い
「そうなんだ……」
と私はなんとなくわかったような返事をする
「この国の人にとって"神"ってどういう者を指すわけ……」
「というか……定義みたいなもの……というか……ん~」
と私が上手く説明できなくて困っている私を見て
「そうですね……人知を超えた力を行使できる者でしょうか」
「例えば……無から何かを作り出すとか……奇跡を起こすとか……」
と幾つか例を挙げて言う
この世界の住人の"神"は"実在する者"なんだという事が分かった
私達の"神"に対する考えとは基本的に違っている……身近に実在する者だという事が分かった
だから、私を"神"だなんて事を言うんだ……という事は、"神聖皇帝"も魔術師なのかな……そんなのは、会ってみないと分からないか……
「さっきの話だとアデレ-ナは一生独身なんだね」
と私がポツリと言うと"アデレ-ナ"はニヤリと笑い私に
「そんな事はありませんよ……改姓すればいいんですよ……」
「よ・う・す・る・に……いい男が捕まえたら改姓するんです」
「皆そうですよっ……聖職者の女性は特に男性に人気がありますから、上手く行けば玉の輿です」
「五姓の中でも聖職者は、職業上の理由から結婚を理由に改姓がし易いんですよ……他の四姓はそう簡単ではありませんけどね」
「簡単に言えば"寿退職"ってやつですよ……」
「何のメリットも無く聖職者なんてやってられませんよっ……若い身空で彼氏も作れず……厳しい戒律に縛られて……」
と涙ぐみつつ臆面もなくテンション・マックスで言い放つ……
そんな"アデレ-ナ"を横目で見つつ"何だか、アデレ-ナさんって見かけの清楚な印象と全然違うなぁ……というより聖職者らしくない"などと思いながら
「そんな事言っていいの……アデレ-ナさんって高位聖職者なんでしょう」
と言う私の方を見て"アデレ-ナ"は気にすることも無く話を続ける
「そうです、私は"衝立の女神"に仕える者です……だから"衝立の女神"であるかもしれない貴方に嘘を吐くことは出来ません」
と急に真剣な表情で言う
「もし、いい人と出会えなかったらどうなるの」
「アデレ-ナさんは、誰がいい人いるの」
と私が何気なく聞くと、"アデレ-ナ"の眉間がピクピクと引き
「そっそれは……一生を神に捧げるだけですよっ」
と急に口調のテンションが露骨に下がった……"これは、完全にアテが無いな"と私は直感したのでこれ以上は言わないで措こうと思ったのだが、何か日頃の
「外から見れば、清楚な"女の園"の住人みたいに見えるかもしれませんがね……中に入れば実際は酷いもんですよっ」
「同僚がいい男を見つけていい感じになったら、周りして妨害しますからね……凄まじい足の引っ張り合いですよ、醜いですよ」
「あまっさえ、自分より年下の者がそうなった日には教会中で妨害しますからね……"寿退職"も年功序列なんですよ」
「実際、お祈りの時間に"神"に"誰かいい人に巡り合わせい下さい"と何回お願いした事か」
と凄まじい口調でボヤく、これ以上はマズイ……"アデレ-ナ"の理性のタガが外れる前に何とか止めないと……と考えいてると
「酷いですよっ……エレ-ヌさんっ」
「あんなに毎日お祈りしているのに望みを叶えて頂けないなんて」
と急に泣き出すと私に向かって
「えっ! 私っ……」
ヤバいぞっ……こっちに矛先が向いてきた何とかしないと……焦って考えいてると"アデレ-ナ"が私の顔を涙目でジッとみている
「あの~、そんなの私に言われても困るんですけど……」
と私は困ったように言うと
「何を言ってるんてすかっ!こんなの "衝立の女神"様にお願いしなくて誰にしろって言うんですか!!」
と言うと今度はシクシクと泣き出す
「そんなの事はね……"恋愛の神様"にでもお願いした方がいいと思うけど……」
と私が慰めるように言うと
「そんな在りもしない神様にお願いしても仕方がないじゃないですかっ」
と"アデレ-ナ"が鼻水をすすりながら言う……"そうか、この世界の宗教観では"神"は実在する者で私の概念とは違っているんだ"……仕方がないな……
「アデレ-ナよ、汝に良き伴侶が現れよう……
「この "衝立の女神"が責任をもって保障しよう」
と私は、それらしくアデレ-ナの頭に手を当て言う
「うっうっ……ありがとうございますっ……」
「
と言うとボロボロと涙を流してそのままテーブルにうつ伏せになると眠ってしまった
私は、アデレ-ナをお姫様抱っこすると奥のベッドにそっと寝かせ毛布を掛けた後に、暖炉に残っている火に薪を少し追加する
手元に数本の薪を並べると"リビルト"の魔法で布を錬成しそれに包まると暖炉の前の床に寝そべった……
寝心地は良くないけど石棺の中や野宿よりはよい、暫く横になっていると"ポチ"が私のすぐ真横にやってくると体を
"アデレ-ナ"はその姿を、薄目でずっと見ていた……"
"凄い……薪が布になった……本物の "衝立の女神"様だわ……"
"これで、私の将来の伴侶の事は保障されたわっ……"
安心した"アデレ-ナ"は、今度こそ本当に眠りについた
第四話 ~ 終わり ~
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