ある日のお誘い


 今日も聖ブリジッタ女子学園山陽校の食堂の片隅、いつものテーブルで、吉川姉妹がお弁当を広げています。


 今日は金曜日、結局お弁当は毎週四回、金曜日は基本的には学食なのですが、この日は美子姉様が、昨日の夕食としてベーグルを大量に焼いたので、それを使ってベーグルサンドのお弁当……

 クリームチーズなどを塗りたくったものが、一押しだそうです。


 結構ギャラリーがいますが、二人の姉は気にするふうでもなく、また中等部の四人も慣れたのか、誇らしげに一緒にお弁当を食べています。

 とても幸せな思いの、クリームヒルトなのです。


 吉川ヴァランティーヌは小学三年生、小学部は給食ですのでここには来ません。

 ちなみに聖ブリジッタ女子学園山陽校は、大学も同じ敷地に併設されており、食堂なども中等部、高等部と共有しています。


 またヴァランティーヌは帰りの時間が違うので、帰るときはお友達と帰っていきます。

 ただ登校はいつも一緒、いまではクリームヒルトが、ヴァランティーヌの手を引いて登校しています。


 明日は第二土曜日……聖ブリジッタ女子学園山陽校もお休みです。

「あの……美子姉様……明日クリちゃんと一緒に、同好会の活動でお宮に行くのですが、構いませんか?」

 同好会とは超常現象研究会、クリームヒルトも入っています。


「別に構いませんし、クリームヒルトが自分で決めたこと、その意思は尊重しますよ、ねぇ茜姉さん」

「そりゃあそうですよ、私はもっとクリームヒルトが、お転婆でもいいとおもっていますよ」

「虫捕り網でも持って、クワガタでも取ってくればと思ったりしますよ」


「茜姉さん!クリームヒルトは女性ですよ!」

「それは腕白坊主のすることでしょう!」

「ただでさえ、ヴァランティーヌで頭がいたいのに!」


 そう、ヴァランティーヌは姿に似合わず、筋金入りのお転婆さんだったのです。

 お淑やかなところは欠片もありません。


「それで顧問の稲田先生が、一緒に参拝しませんかと……」

「私たちも?でもご迷惑ではないの?」

「……お嫌ですか……」

 クリームヒルトを含めた四人の顔が、一緒にいかがといっています。


 すこし難しい顔をした美子でしたが、茜に向かって、

「どうしましょうかね……」

 と、聞きました。


 茜が、

「いいじゃないの、せっかくのお誘いを断ったら悪いでしょう」

「でもヴァランティーヌにお留守番はね……末の妹も一緒なら……」


「ヴァランティーヌも一緒に誘ってくれますか?」

「稲田先生は、妹さんもご一緒にと云われていました」


「ではお言葉に甘えさせて頂きます、明日、よろしくおねがいしますね」

「ヤッた!」

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