第二章 休日は楽しいはず

スピンクス騒動 其の一


「お帰りなさい」

 出迎えてくれたのは一匹の猫?と美少女

「意外です!」と、美子が少々驚いています。

「本当に!」と、茜も予定外だったようです。


 その美少女を、クリームヒルトは何処かで見た姿と思いました。

 記憶を総動員して、やっと思い出したクリームヒルト。


 そうだったわ……ルノワールのルグラン嬢の肖像……

 たしか、マリー・アデルフィーヌ・ルグランさんの八歳の姿ですよね……

 フィラデルフィア美術館に有るはずですね……


 そういえば、この蓬莱はテラと瓜二つ……たしか姉様たちが、テラのパラレルワールドと云っていらしたわ……

 ならフィラデルフィア美術館にいけば、見られるかも……


 白いブラウスに黒いエプロンドレス、青いリボンとネッカチーフ、可愛い天然パーマの金髪に真っ白い肌、そして赤い唇と大きな瞳……


 しかもそれとなく色気を漂わせていますよ……八歳ですよね……ペンダントと指輪とイヤリングは金……

 私……この方に負けるのかしら……いけない……努力しなければ……美子姉様は振り向いてくれない!


「ヴァランティーヌ、その姿、誰から教えてもらったの?」

 と、茜さんが聞きます。


「マレーネさんが、私そっくりの絵があるが、アフロディーテ様はその絵がお好きと云われ、その姿になりご寵愛を頂きなさいと云われています、サリー様も了承されています」

 アフロディーテというのは、ヴァランティーヌが所属する王国の君主の名前、数ある美子姉様の名前の一つです。


「なるほど……確かに私たちの主はロリータに弱いですからね」

「私は九歳になりました、目出度く女の印もありました、お約束通り、抱いていただくようにと、いわれています」

 そう言って、服を脱ぎ始めたヴァランティーヌ……


「わかりました、確かに約束はしています!とにかく今日は待って下さい、必ず約束は守りますから!」

 すこし慌てている美子姉様でした。


「ところでスピンクス!貴方は何の用なの!」

「サリー様のご命令でやって来ました」

「サリーさんのスパイですか?」


「そんな事はありません、ただ詳細な報告を求められてはいますが」

「やれやれ、さすがはハウスキーパー……言葉も無いわ」


「まぁ、スピンクスがいれば警備には問題はありませんが、プライバシーは皆無になりますね」

「別にお部屋でエッチなことをされる分には構いません、要はミコ様があちこちで女を拾ってこないように見張れ、そういうことです」


「そんな事は私たちが見張っているわよ」

 と、茜が抗議しますが、

「一番危ないのがイシス様、これは愛人の方々では周知の事実、ご自身でも反論出来ないのではありませんか?」


「ましてクリームヒルトさんでは、ミコ様にやりこめられるのは火を見るより明らか」

 と、スピンクスに言われています。


「で、ずっといるの?」

 と、美子が聞きますと、

「オフ・コース」と、いってのけたスピンクスでした。


 スピンクスとはハウスキーパー、サリーの愛猫で、猫とはいっていますが、元々はギリシャ神話に出てくる同名の物を参考に、人工知能のマレーネが作った魔猫。


 ライオンの身体、美しい女性の顔と乳房のある胸、そして翼を持っています。

 魔犬を統括する化物猫でもあります。


 その戦闘力は計り知れないものがあり、対象全てを空間転移させる能力を持っています。

 その気になれば、惑星を近傍のブラックホールへ投げ込むことも可能なのです。

 常は黒猫に変身しており、非常に優美な姿をしています。


「私、ミコ様をお守りするために、マレーネ様より少々機能を追加してもらっています、良からぬものがやってきても問題なしです!」


「その時はよろしく、多分、力を借りることが有るでしょう、でも力は加減して下さいね」

「おまかせを、この惑星をぶっ飛ばさぬ程度に致しますから!」


「姉さん、頭痛が……」

「私も……」

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