夕食のお買い物


 昼休みが終わり、五限目が終わり、その時の話がクラス中に知れ渡っています。

 お昼のやり取りを皆見ていたようです。


 ミチちゃんがやって来て、

「クリちゃん大変よ、学校中、貴女のお姉さんの話で持ちきりよ」

 クリームヒルトの愛称は、クリちゃんとなっていました。


「姉様の?」

「そうよ、貴女のお姉さまにお近づきになりたい!女神さまと一緒にお食事したい!なんてのが一杯いるわよ、明日の食堂、大変かも知れないわよ」

「どうもならないと思うわ」


「どうして?」

「姉様に、軽々しく近寄れる方がいると思う?今日のお昼も、姉様のテーブルには誰も来なかったわ?」

「云われればそうね、私たちも誘われたからご一緒出来たけれど、たしかに近寄りがたいわ……」


 シズちゃんが、

「お綺麗すぎるのも大変ね、私たちのように、そこそこ綺麗なぐらいがいいのよ」

「そこそこ?私はとても綺麗なつもりよ!」

 と、マチちゃんがいいます。

 クリームヒルトが、「私たちは綺麗なのよ」と、笑いながら言いました。


 クリームヒルトは、姉たちの授業が終わるのを校門で待っていました。

 一緒に帰りたかった。

 朝、二人に手を繋いでもらったのがとてもうれしくて、そして友達のこと、授業の事など、一杯喋りたかった。


 まず茜がやってきました。

「美子はまだ?」

「まだです」というと、「もっと甘えなさい」といってくれます。


 クリームヒルトにとって、茜は母に近い存在、美子とは少し違うのです。


 美子が来るまで、喋りに喋ったクリームヒルトではありました。

「楽しかったのね、良かったわね」

 と言ってくれました。


 茜が手を繋いでくれます。

 クリームヒルトは手をつないでもらうと、心安らぐのです。


 美子がやってきて、

「待っていてくれたの?」

「夕食の買い物の手伝いがいるでしょう?」

「私が作るの?」

「オフ・コース」


「まったく……下手な英語で返事をしないでよ!」

「ねぇ、美子姉様、今日は何?」

「急だから……考えてなかったわ……クリームヒルト、何がいい?」


「カレーにしなさい!」

「姉さんに聞いてないわよ」

「私はカレーが食べたい!」

 と、茜がだだをこねて云いました。


「しょうがないわね……たしかにめんどくさくなくていいわね……カレーにしますか……クリームヒルト、構わない?」

「オフ・コース」


「もう、茜姉さんの真似などしないの、下品になるわよ」

「どこに下品がいるのよ!」

「さぁ何処でしょうね」


 三人は、そんな事を喋りながら帰っていきます。

 勿論、美子もクリームヒルトの手を握ってくれています。

 スーパーに寄って、夕食の材料を大量に買い込んだ美子さんでした。


「どうしてこんなに?」

「多分、お客さんが来ているはずですから……そう思わない、茜姉さん」

「多分ね……一応蓬莱はバアル・ゼブルの管轄、しかも貴女の事はハウスキーパーの管轄、誰が来るかはわからないし、何人来ることやら……」


 そんなことをいいながら三人は歩いていますが、その先には高層アパートメントが……

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