友達は作らないの?


「ねぇクリームヒルト、このあたりに貴女のクラスメートはいないの?」

 突然、美子姉様が言いました。


 ?


「いやね、大事な妹のお友達がいれば、一緒にご飯でもと思ったの?」


 佐田さんの姿がよぎった、クリームヒルトではありましたが……


「吉川さん、こんなところでお食事?」

 後ろから声がしました。

「クリームヒルト、お友達ではないの?」

 と、美子姉様が促(うなが)しますので、振り返ると三名ほどのクラスメートが立っていました。


「佐田さん、大宮さんと田中さんも……お食事?」

「そうよ、吉川さんは凄いスピードで走っていったけど、お弁当を持ってきていない娘(こ)は、ここで調達するわけよ」


 購買で買ったのでしょうか、サンドイッチなどの調理パンと牛乳などを持っている三人……


 茜が、

「こちらに座りませんか?ご一緒にどう?」

 と声をかけますので、三人は初めて二人のよそ者がいることを認識……固まってしまったようです。


 美子が、

「そんなに緊張しなくても、初めまして、クリームヒルトの姉の美子です、こちらは長女の茜姉さん、ご一緒してくれませんか?」


 三人は互いに視線を交わしていますが、クリームヒルトが、

「美子姉様も茜姉様も勧めてくれているわ、私からもお願い、一緒に食べませんか?」

 といいましたので三人はテーブルにつきましたが、例の五重のお弁当箱に目が釘付けです。


「これ?実はね、妹がお友達でも連れてこないかなと思って……クリームヒルト、ぶっきら棒だから……心配してたの、で、ご飯でお友達を釣ろうかなと思って……」

「でも杞憂でした、三人もお友達を作ったなんて……皆さん、ありがとう、妹と仲良くしてくださいね」

 ニコッと笑いながら、美子姉様がそう言います。


「いえ……私たちは……吉川さんこそ迷惑なのかと……」

 と、大宮といった娘が口ごもると、

「お友達になって!」と、クリームヒルトがはっきりといいます。

「私、いままでお友達なんていなかったの、だから……」


「はいはい、クリームヒルト、お友達は大事にしてね、一度、皆さん、家に遊びに来て下さいね、歓迎しますから、クッキーぐらい焼いておきますよ」

 と、茜姉様が言いますが、

「茜姉さんのクッキーね……苦いけどね」

 と、美子姉様がチャチャを入れます。


「失礼ね、すこし焦げたのぐらいご愛嬌でしょう!」

 姉様たちが笑っているのを、クリームヒルトは幸せそうに眺めていました。


「そうそう、せっかく作ったのだから、食べて頂けない?」

「でもパンが……」


「マチちゃん、頂きましょうよ!とても美味しそうよ!」

 大宮さんが言いました。


 佐田さんの名前は町子さん、ちなみに大宮さんは静子さん、田中さんは美千子さんと言います。

 どうやらマチ、シズ、ミチと呼び合っているようです。


「おいしい!」

「かわいい!」

「きれい!」


「いつも此の様なご馳走なのですか?」

「今日だけなの、いつもは質素よ、おにぎりに梅干しだけとかね」

「あなたたちはいつもパンなの?」


「……」

「ごめんなさいね、つまらぬことを聞いたようで」

「いいわ、それなら私が時々で良ければ、妹にお弁当を作るときに、一緒に作ってあげるわ」

「でもご馳走は無しよ、たまには本当に日の丸弁当よ」

 キラキラと、目を輝かせている三人でした。

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