転入生


「皆さん、転入生をご紹介致します、さあ、こちらに」

 クリームヒルトは教壇に立つと、いずれもお嬢様然とした生徒達ばかりが並んでいます。


 総勢三十名程度、聖ブリジッタ女子学園山陽校は小人数英才教育で有名な名門女子、チョット地方の学校ですが、全国的に知られています。


 でも名門お嬢様学校のはずが……お転婆娘だらけのようにもみえます、大和撫子は何処へ行ったの?


「吉川クリームヒルトです、一年だけしか在学しませんが、よろしくお願いします」

 金髪碧眼、典型的なドイツの美少女、ゲルマンの理想の女、本人は気づいていませんが、人間離れした美しさがあります。

 一瞬ざわめきが止まりました。


 でもお転婆さんがたくさんいて、その中の一人が、

「失礼な事をお聞きしますが、日本の方では無いように思えますが、なぜ吉川なのですか?」


「佐田さん!」と、担任がたしなめましたが、クリームヒルトは、

「先生、構いません、いまのご質問ですが、私はパラグアイのドイツ系住民でした、父母を亡くしたところを、遠い親戚である吉川のお父様に、養女にしていただきました」


「……ごめんなさい……」

 クリームヒルトは平然としているのに、この佐田という娘は、涙目をしています。

「謝らなくても……姉に、この事は隠すことはないといわれていますので」


 担任が、

「吉川さんの席ですが……そうですね、私の授業ですから、今日は臨時ホームルームとして、席替えをいたしましょう」


「最初は吉川さんに、籤でもひいてもらいましょうか、そのあとは皆でジャイケンね」

 アバウトな担任のようですね。


 クリームヒルトが籤を引くと、これが窓際の後ろから三番目……最高の場所ですよね。

 促されてクリームヒルトがその席に座ると、この後から席取り合戦がヒートアップ、熱心にジャイケンをしているように見えます。


「皆、貴女の隣の席を狙っているのよ」

 いつの間にか、担任が近くの席に座っています。


「私、これでも実家は神社なのよ、少しは巫女体質なの……貴女たちは、すこし普通と違うわね……」

「そうですか?」


「お姉さまたちは、見たところ神様の領域におられそうね……貴女だって尋常でないわ」

「私にはわかりませんが?」

「そうですね、触らぬ神にたたりなしですか……」


 この女は注意しなくては……

 女教師は稲田真白(いなだましろ)というそうです。


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