エジプトとペルシャの女神


 クリームヒルトは、緊張でドキドキしながら歩いていました。


 初登校がドキドキの理由では無いのです。

 クリームヒルトは両手を、吉川茜と吉川美子に繋いでもらっているのが、ドキドキの理由です。


 中等部指定のスクールカバンは、リュックにもなる優れもの、エンジ色の本皮で校章が刻印されています。

 そのため、両手がフリーなのですね。


「ミコ様……」と言うと、主である吉川美子は、

「クリームヒルト、私は貴女の姉、様はいりませんよ」

 と云われて……


 幼いながら考えた結果、「美子姉様……」と呼びます、呼ばれた美子が、ニコッと笑って、「何でしょう」と云いました。


「茜姉様……」と呼ぶと、「なあに、クリームヒルト」と返事があります。


 なんともいえない、幸せな気持ちが込み上がってきたクリームヒルト……


 茜が、

「貴女は吉川の一族、私たちの妹なのですよ」

「これからは私たち、そして皆が仲間、何より今から一年は、三人でのんびり暮らすのよ、私たちも貴女も疲れていますからね」


 美子が、

「クリームヒルト、一年ですが楽しみなさいね、子供らしく遊べばいいのですよ」

「なにかあれば、二人の姉がなんとでもしてあげますよ」


 優しい言葉……クリームヒルトは思いました、やはりお二人は女神さまみたいなもの……そうですよね……


 茜様は別名イシス、美子様はそれこそ数々の名を持っていますが、イシス様は美子様をアナーヒターと良く呼ばれている……


 アナーヒターって、ペルシャの女神ですよね……エジプトとペルシャの女神……

 そんなお二人の妹でいいのかしら……


 超人(ユーベルメンシュ)であるクリームヒルトは、そんな事を考えていました。


 人智を超えた二人の姉ですが、自身も十分に人智を超えている存在ではある、クリームヒルトなのですが……


「じゃあ、クリームヒルト、お昼に食堂で、お弁当を一緒に食べましょうね」

 そう、この聖ブリジッタ女子学園山陽校は、学校給食ではありません。


 したがって立派な食堂があると聞いていたので、お料理上手の美子が、三人分のお弁当を作ってくれました。

 なんでもこれから毎日、茜と美子が交代で作ってくれるそうです。


 ……こんなこと、他の寵妃の方々に聞かれたら、殺されそうね……

 ふと笑みがこぼれたクリームヒルト。


「茜姉様、美子姉様、お昼は必ずご一緒に!」

「必ずね」

 こんな会話をしながら、三人は職員室に担当の教師を訪ねます。

 そしてクリームヒルトは、担任に引率されて中等部二年の教室へ……


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